表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/150

18話.わたし、童心にかえる

 何とかあの後、2人ともケーキを食べた。何とか空気を霧散させようとして、「とりあえず、ケーキ、食べよっか?」と言ったら何とかあの何ともいえない空気感はどうにかなった。どうなるかと思った……。私、ああいう展開、免疫ないのよ。


 そして、その後、勧められたテラスに行くことにした。テラスは、カフェのひとつ上の階にあり、建物から少し出っ張ったような造りになっている。


 テラスに着くと、そこには殆ど人はおらず、私と結希さんの貸切状態だ。ショッピングモールに来る時は大抵買い物が多いから、さっきのカフェもだけれど、このテラスが来るのも初めてだ。


 こんな風なんだ……と辺りを見回す。全体が木のデッキのようになっていて、木が多く植えられている。店員さんが言ったようにアーケードのような屋根もあり、太陽光はそこまで入ってこないため、涼しい。そして、結構広い。縦に長い感じなので、出入口からだと端は見えない。


「こんな所あったんだー」


 この辺に住んでいるのに、私は本当に何も知らないなぁ。


「ショッピングモールとは思えないほど、立派なテラスだね」


 結希さんの言葉にうんうんと頷く。2人でそのまま真っ直ぐ進み、外が見える所までやってきた。テラスと言うくらいだから、柵があり、外の景色が見えるようになっているのだ。


「すごい!空が近く見える!!」


 ありきたりな感想かもしれないが、思ったことはそれだった。まあ、高いところに登っているんだから、実際近づいているんだけれども。そして、今日は晴れているから空の青色がよく見える。雲と空のコントラストがとても綺麗だ。


「あ、あの雲、リンゴみたい」


 結希さんが空をさして言う。そこには、確かに、丸い形に少し棒のようなものが出ている、りんごに見える雲が浮かんでいた。


「ほんとだー!あ!あっちは、羽根みたい!」


 りんごの隣を指して言う。もくもくとした雲がメルヘンチックな、というよりポップな印象の羽根のような形を象って浮かんでいた。


 こんなに可愛い模様ができるんだから、本当に自然って凄いと思う。自然の芸術とやらのひとつだね。


「ほんとだね」


 2人で笑い合う。


 小さい頃、よく、こうやって空を見上げて何に見えるか!とかやったなぁと少し懐かしい気持ちになった。


「わ!見て見て!陽葵さん!噴水!!」


 結希さんの言葉にそちらを向くと、壁に併設された感じの噴水があった。入口からは死角で見えなかったけれど、こうやって端に来たことによって見えるようになったらしい。


 結希さんは、噴水の方へと駆け寄っていく。私もそれを追いかけた。


 そこには白色を基調とした長方形の噴水があった。そこまで大きくはないが、しゅーっと空に向かって、何本か水が吹き上がっている。


 その噴水はよくあるような模様や像などはなく、無地……と言っていいのかわからないが……何も模様のない、少しゴツゴツしたような壁でできている。例えて言うならば、紙を一度クシャッて小さく丸めてから広げたような感じの。


 どこから水引いてんの、これ?というのは、私の些細な疑問であった。多分同じ水をくるくると周回させているんだろうけれど。


「これ、手を入れたら怒られるかなー?」


 結希さんが真剣な顔をして尋ねるから思わずクスリと笑ってしまう。子供みたいだ。


 そう思っていると、


「あ、今、子供みたいって思ったでしょー?」


 そう言ってから、むぅーっと頬を膨らませる結希さん。


 あ、バレた?


「ふふふ、うん」


 私が頷くと、結希さんは唇をへの字に曲げる。でも、その目はおどけたようになっているから、本気で怒っている訳では無いことがすぐにわかる。


「えー、素直にうなずいちゃうのー?そこは誤魔化すところじゃ……?」


「えー?そうかなー?」


 そんな掛け合いをしつつ、テラスから戻ったあとも、買い物を続ける。


「ねぇねぇ!あれ見てー」


 買い物中、そうやって色々指さして教えてくれる。今回は雑貨屋さんの方を指さしている。そして数歩歩き始める。


 楽しそうだなぁと思って見ていると、結希さんは、まだ立ち止まったままだった私の方を振り返り、「ほら!行くよ!」と手を伸ばした。


 え!?


 いきなり伸ばされた手に、私が戸惑っていると、結希さんは不思議そうな顔をしてから私の手を掴む。


「行こっ!」


 繋いだ手はとても温かった。手だけじゃない。あなた自身もとても温かい。とても素敵な人だ。


「あ、そこ、段差あるよ!気をつけて?」


 驚くほどイケメンで優しくて


「えへへ、このサングラス見てー?仮面舞踏会に着けていく仮面みたいー」


 たまに子どもっぽくて。


 あたたかい気持ちが胸に広がる。


 あなたの隣が心地いい、そう感じた。


 でも___


 あなたが隣にいてくれる日々の終わりは唐突にやって来た。


 一緒に住み始めてから3週間程経ったある朝。2人で過ごすことにだいぶ慣れた頃のこと。


「あのね、新しい家、決まりそうなんだ!」


 風がふわりとカーテンを揺らし、太陽の光が朝だというのに主役級の仕事をしている。


 唐突に、流れるように言われた言葉。


「そ、そうなんだ。よかったね」


 そう返答するのが精一杯だった。

小さい頃よく、妹と寝転んで雲を見上げて、何の形に見える!とか言いあってましたー。懐かしい。……そのわりに、雲に関しての知識が皆無に近い私……。調べました、ネットで苦笑

そして、一応転機です!!展開早いかな?なんて心配しながらも次に進みますー。おふたりはどうなる事やら……。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ