114話.雨猫、魔王と相対する
みんなの方を見れなくなって、俯く。視線が怖い。僕のせいで、みんなが苦しむ。
「それは違う!」
アヤが大きな声でそう言った。弾かれたように僕は顔を上げる。すると、強い意志を持った瞳が目の前でこちらをじっと見ていた。
「だって、悪いのはあっちだよ?どんな理由でもあることないことをかいて誹謗中傷する方が悪いに決まってる!」
アヤが力強く言い、それにコウが同意するように頷く。それから、ニコッといつもの優しげな笑顔を浮かべる。
「俺もそう思うな。芸能人にだってプライベートはある」
「私も……その……人を苦しめて商売をするのは違うと思いますし、情報を売るのも個人情報を売っているのと同じですし……いいことだとは思えません……」
ユカリは表情はいつもの自信なさげな顔のままだが、言葉ははっきりと自分の意見を伝える。
「……でも、僕は迷惑をかけてる……ごめんなさい……」
「迷惑だなんて思ってないよ。仲間のことは大事だし、一緒に考えたい」
コウが隣からこちらに手を伸ばして、ポンポンと僕の頭を撫でてくれた。
「それにこれは僕の復讐でもあるんだ。僕は、彼にこれ以上好き勝手させたくない」
アヤは強い意志を滲ませてそう言った。それに美月さんが同意する。
「私も。あの頃は力なんて全然なくて解明出来なかった。悔しかった。だけど、今なら調べられるし真実にだってたどり着ける。今が踏ん張りどきかなって思うわ」
「アオくん、僕の復讐に付き合ってよねぇ〜?」
いつものいたずらっ子小悪魔めいた声音でアヤがそう言った。ピースとウインクつきである。アイドルモードのアヤに張り詰めていた空気が少し緩む。
僕が落ち込んでいるのを分かってわざとそうしてくれたのだと思う。復讐って言ってくれるのもきっと僕の心を軽くするためで、じわりと心があたたかくなった。
「言い方は可愛いのに、言っていることが全く可愛くないです……!」
ユカリがふふふと小さく笑いながら言った。そんなユカリに、アヤは軽く肩を竦めてから、ニコッと笑った。それから、話を続ける。
「それでね、ちょっとある作戦を実行したいんだけど、いいかなぁ?」
「どんな作戦か気になるね」
コウがクスッと笑いながら言った。おもちゃを見つけた小さな子のような笑顔を浮かべている。この方、優しげにみえて意外とそういういたずらみたいな悪いことが好きだったりする。
「まだしっかりと確定の証拠がある訳じゃないから、物的証拠が欲しい。金髪の男が月見里 悠悟だって言う証拠をみつける作戦だよ?」
アヤはそう言って、どこかの悪代官みたいにニヤリと笑って見せた。その言葉に、ユカリが悩むように指を顎の下に置いてうーんと唸った。
「やっぱり、現場をおさえるのが1番だと思います……」
「ご名答!僕もそう思う」
指をピンっと立ててアヤが言う。それからその立てた指を左右に振ってみせる。ニンマリと笑ったその笑顔は、小悪魔と言うより魔王である。
「だから、呼び出すんだよ」




