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11話.わたし、感動する

 どんどん近づいてくる結希さんに、後ずさる私。


「ゆ、結希さん!結希さん!!」


 慌てて声をかけると、結希さんはハッとしたような顔をした。それから、ゆっくりと首を傾け、


「あれ?ショートケーキは?」


 と言ったのだった。


「ショートケーキ……?」


 思わず結希さんの言葉をオウム返ししてしまう。ショートケーキってなんだ……?私の言葉に、ばっと目を見開く結希さん。そのまま、私を見つけ、顔を慌てて離した。


「……は!ご、ごめん!!」


「大丈夫?」


 そう尋ねると結希さんは、こくんと頷く。


「うん、大丈夫……」


「何があったの?ショートケーキって……」


「え、あ!うーんと……実はこれくらいの大きなショートケーキが出てきて、食べようとしたんだけど……夢だったみたい」


 少し狼狽えたような結希さんは、手を大きく広げて説明した後、恥ずかしそうに頬を赤らめた。目が伏せられて、瞳か左右に動いている。そんな結希さんがなんか可愛く見えて、それ以上に子どもっぽくも見えて、クスッと笑ってしまう。


 私がクスクスと笑うと、結希さんはむーっとむくれた。頬をプクリと膨らませている。


「笑わないでよー。本当に美味しそうだったんだよ?」


 この大人っぽい見た目で頬を子供みたいに膨らませているのをみると、本当に年上か!?と思ってしまう。一応2歳年上のはずなんだけど。


「あ、それより、帰ってきたんだね!おかえり!」


「ただいま」


 そう言うと、結希さんは、ニコッと笑ったあと、立ち上がる。


「待ってて。今ご飯、温めるからー」


 その言葉に驚く。


「え!?作ってくれてたの!?しかも、待っててくれたの?」


 どうやら彼は私がいつ帰ってきてもいいように、自分がご飯を食べた後、ここで待っていてくれたらしい。キッチンの方にはフライパンや包丁、まな板、そして彼が食べたであろう食器が綺麗に洗われて並んでいた。


「うん。本当は寝ずに待っているつもりだったんだけど……。……あ、今更だけど、食べてきちゃったりしてない?」


「うん、まだだけど。でも、今日、遅くなるからって……」


「うん、そのメッセージは見たよ?でも、仕事疲れて帰って来ているのに、ご飯もないんじゃ元気でないと思うんだー」


 結希さんは、さも当たり前のようにそう言い、呆然としている私の横を通り過ぎて、それから、結希さんが座っていた場所の丁度向かい側に置いてあったお皿を持ち上げる。お皿の隣には、トマトとレタスのサラダも置いてある。


 ラップがかかったその皿の中には何やらパスタのようなものがのせられていた。


「こんな夜遅くにパスタでごめんねー?お腹、空いてる?」


「うん、空いてる……」


「よかった!」


 はっきり言うと、ペコペコだ。だって、お昼食べ終えてから、全力で仕事をしていたんだもん。


 そんな会話をしていると、丁度ピーピーと電子レンジが声を上げ、それと同時にふんわりとトマトソースの匂いが部屋に広がる。どうやらミートスパゲティらしい。


「あ、ありがとう……」


「ううん、ぜーんぜん?ほら、座った座った!あたたかいうちに食べてー?」


 結希さんは、スパゲティの皿をテーブルに置いて、それから、私を席につかせる。それから、冷蔵庫からお茶をだし、グラスに汲んでくれた。まさに至れり尽くせりである。


 申し訳ない気持ちになりながら、手を合わせる。


「いただきます」


「どうぞー」


 結希さんはそう言いながら、私の向かいの席に座る。私はフォークを持って食べようとするが、その一挙一動をじっと見つめる視線により、中断せざるをえなくなる。もちろんその視線の主は結希さんだ。


「そ、そんなに見つめられると……」


「あ、ごめん。美味しいか心配になっちゃって」


 そう言って照れたように言う結希さん。琥珀の瞳が少し下を向く。少し首を傾けたことにより、亜麻色の美しい髪がさらりと揺れる。


「なんでこんなに顔がいいの……?」


「……へ?」


「何でもない、です!!」


 いけない、思わず場違いなこと言った!!結希さんはポカンとした顔をしている。私はブンブンと首を横に振り、それから、スパゲティを口に含む。


「ん!美味しい!!」


 とても美味しかった。うん、そりゃもう、レストラン出せるんじゃないかな?ってくらい。


 味に感動するよ。そして、それを作ってくれた彼の優しさにも。


「そりゃよかった!……で、なんかあった?」


 自然に聞いてくれる。その言葉に顔を上げると、心配そうな顔をしている。


「どうして……?」

次回の投稿は【9月17日8時】です!

よろしくお願いしますー(*´ω`*)

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