108話.雨猫、考え込む
何度やってもゲームは負け続きだ。陽葵は本当に強いらしい。陽葵は1度のめり込むと極限までしたいタイプらしい。凝り性なのだろう。
「どうやったらそんなに強くなるの」
異次元の強さだなと感心していると、陽葵の声が電話口から聞こえる。
「教えようか?」
「え?」
「私が教えようか?って」
思ってもいない提案に嬉しくなる。上手な人に教えてもらう機会なんてあまりないから嬉しい。それに、相手が陽葵ならもっと嬉しい。
「いいの?」
「もちろんよ!私に任せなさい!」
「ありがとう!!」
陽葵の提案に内心とびはねながら確認すると、頼もしげに自分の胸を叩く陽葵。トントンと胸を叩きながら、得意げな顔をしている彼女がとても可愛らしくも見える。それから直ぐに僕のスケジュールを確認してくれる。
「今日は何時までなら大丈夫?」
陽葵に聞かれて、うーんと最近のスケジュールを思い出す。明日は休みだからある程度遅くても大丈夫だ。それを伝えると、やる気がメラメラと燃え上がっているらしい陽葵が頑張るぞー!と声を上げる。楽しそうな陽葵にこちらまで嬉しくなった。
そういうわけで、陽葵による僕のためだけのゲーム攻略講座が開講した。陽葵による講座はとても楽しかった。
「今、追い詰めたから、敵がそっちに行ったでしょ?さっき置いておいた武器が使える!伏線回収みたいな!」
「なるほど……」
陽葵は普段、ゲームの戦闘中何を考えて動いているのかを事細かに教えてくれる。僕はそれに対して感動し通しだ。大胆に行動したかと思えば、細かく色々なトラップをしかけていることもある。
そして、思う通りに敵が動くので、見ていて気持ちいい。どうやら、陽葵は敵の動きをみるのが得意らしい。
陽葵の対人センサーはもしかするとゲームから来ていたりするかも。いや、対人センサーがゲームに生かされてるのかもしれないけれど。
「敵の目線がそれている今のうちに回復をしておくといいかも!」
だが、教えて貰っている最中も、陽葵が先程言っていた金髪の男のことも気になる。ゴテゴテとネックレスなどのアクセサリーをつけて、金髪だなんて目立ちすぎる。
人に隠れて何かをするのにも、もっと目立たないようにするだろう。何を考えているのだろう。人のそんなわけないという気持ちを逆手にとっているのか。
そもそも陽葵に何の用だろうか?陽葵は一般人だから、芸能人と思われる人に付きまとわれることは普通ない。僕のせいか?それなら……。
「ゆうくん?」
「ごめん……!」
陽葵の声が聞こえて、ハッとする。どうやら考えているうちに手が止まってしまっていたらしい。弾みで手からコントローラーがポトリと落ちる。パッとテレビの画面を見るとゲームオーバーの文字。ハッとした顔が陽葵にも見えたらしく、慌てたようにワタワタと話す。
「いや、全然!ってか、ごめん。話しすぎだよね。そろそろ眠い?」
「こちらこそごめん!!せっかく教えてくれているのに!」
それに、こちらもブンブンと首を振る。こちらが考え事をしていた方が悪い。真剣に教えてくれている陽葵に大変申し訳ない。
「眠い?」
「いや、大丈夫!もう1戦したい!」
「本当に?大丈夫?」
「うん、大丈夫!」
取り落としたコントローラーを取り、構える。陽葵はニコッと笑う。
今度、メンバーに、金髪の男のこと、それとなく聞いてみようかな。




