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106話.わたし、新たな約束

今日は残業せず帰る。久しぶりに大好きな人と電話をするからだ。ついでに、一緒にゲームをすることになっている。


ワクワクしながら仕事を終わらせて、そのまま家へと帰った。どうやらワクワクの感情が行動に現れていたのか、みゆには帰り際に苦笑された。


『今帰ったよ』と、家に着いてすぐ連絡をすると、ゆうくんからも返事が返ってくる。


『おかえり〜』


文字だけなのに何故か明るい気持ちになる。


『何時くらいからなら、電話できる?まだ仕事?』


『ううん、今日はもう仕事終わってる!』


私の問いにゆうくんが答える。どうやら、今日は遅くまでの仕事じゃないようだ。最近はライブ関係の仕事とかも入っているだろうから遅くなる日も結構あるので、珍しい。長く電話できそうで、気分が更に浮上する。


『そうなんだね。じゃ、ご飯食べてからにする?』


『ねぇ、少しでも長く陽葵といたいからずっと電話を繋ぎっぱなしにしちゃだめかな?』


文字だけなのにいつもの少し甘えた声が聞こえる気がした。きっと私だけに見せているだろうその姿。


心があたたかくなる。ゆうくんへと暖かい気持ちがほわほわっと胸にあらわれて、それが身体を巡っていく。ちょっと恥ずかしいけど嬉しい。


『もちろん!』


というわけで、お風呂にちゃっと入ってから、電話を繋げることになった。お風呂から出ると、サッと服を着る。肌のスキンケアには時間が少しかかったが、早く着替えられたため、比較的早く電話ができる状態になったのではないだろうか。


電話、大丈夫だよと連絡すると、ゆうくんからかかってくる。


「もしもし、陽葵?」


「あ、ゆうくん!こんばんは!」


ゆうくんの優しげな声が聞こえてきて嬉しくなる。電話越しではあるけれど、声を聞くのも久しぶりだから、嬉しい。でも、少し緊張もする。顔が見えないからなのか、久しぶりのゆうくんだからなのか。多分どっちもだ。


「こんばんは。元気してる?」


「うん、元気だよ。ゆうくんは?」


「元気だよ〜!特に今日は陽葵と話せるから元気100倍だよ」


ワントーン明るい声が聞こえてくる。私もゆうくんのおかげで元気です。まるで子犬みたいだ。みゆは彼のことをイケメン猫というが、イケメン犬の方があっているのではないだろうか。


そんなことを思いながら夕食準備に取り掛かる。昨日の残り物のポトフと冷凍保存していたポテトサラダ。こう見ると、じゃがいもばっかりだな。買っておいたトマトとレタスも切って出そう。メインは、豚肉が余っているから生姜焼き。


キッチンにスマホを置いて、スピーカーにしながら料理に取り掛かる。


「今日の夜ご飯、なにー?」


「今日のメインは生姜焼き!あと、昨日の残りと冷凍しておいたやつだよ」


「え、みたい。あわよくば陽葵が料理しているところがみたい」


「え、私の料理しているところなんて見て何になるの?面白くないよ?」


何の変哲もない料理すがたです。上手な訳でもないし。なんなら、半分以上残り物とか冷凍だから温めているだけだし。


そう思ったが、「えー見たいー」と駄々をこねる25歳児がいるので、仕方なくカメラモードをオンにする。すると、向こうもカメラモードをオンにしてくれた。


ちょうどカメラをオンにした瞬間だったのだろう、顔面国宝が画面いっぱいに広がっている。今日もかっこいいな、こやつ。


「あ、うつった?」


なんて首を傾けるから、なおイケメンだな。きっと、傾ける角度なんかも無自覚にイケメンにうつるようにしているんだな。


「うん、うつってるよ!」


そう返事をすると、ゆうくんは笑顔をこちらに見せてくれた。それから、カメラを覗き込む。どうやら、宣言通り夕食を作っているところを見ているらしい。


「こんな感じです」


少し恥ずかしいが、ゆうくんが映る画面の前に出来上がった夕食たちを並べていく。


「おお!美味しそう!生姜焼き?」


「そう。豚肉が余っていたから」


「そうなんだー。美味しそう!4Dにしてくれないかなぁ〜」


「映画みたいな?」


「そうそう!匂いとかも分かったら楽しそう!!」


まぁ、確かに。匂いとかも共有できたらもう実質一緒にいるみたいになるかも。一緒にいられない時間が長いからそう思うのかな。会いたいなぁ。


そう思っていると、ポツリとゆうくんが言葉を落とす。


「陽葵の近くに行きたくなるなぁ〜……」


切なげな声音に、少しまゆの下がった表情。どうやら似たようなことを思っているらしい。


「ゆうくん、また会おうね」


「うん、仕事が落ち着いたら会おう!」


そんな約束をした。

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