表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
121/150

105話.わたし、誘われる

話数間違えました。申し訳ありません。

104話→105話 訂正しました。

「ねぇ、ひまー!!」


会社で仕事をこれでもかというほど捌いたので疲れたため、コーヒーをいれて小休止をしようと給湯室にいると、声をかけられた。声の主は同僚のみゆきである。給湯室の外からぴょっこりと中に顔を出している。


みゆの登場に、私はコーヒーメーカーから手を離し、みゆの方を見る。この会社の人はコーヒーが好きな人らしく、今使っているドリップ式以外にもミル付きのものもあったり、後は手でひく用の機械があったりなんかもする。本格的である。


扉からぴょっこり顔を出すみゆの顔は嬉しそうだ。顔から抑えきれないワクワクが滲み出ている。これは何かいいことがあったな。


「あ、みゆ。どーしたの」


「聞いて欲しいことがある!!」


そういうみゆの顔はらんらんと輝いている。いつもにも増してテンションが高い。5割増しくらいだ。幸せそうで何よりです。


「なに〜?」


私が問いかけると、みゆはバババッと勢いよく給湯室に入ってきて、私の肩に手を置いた。そのまま、勢いよく揺さぶる。それによりこちらは頭がガクガクと揺らされているが、みゆは気にした様子はなく、そのまま話し始める。


「Colorsのライブ、当てた!!最近人気になってきているから当たる確率が下がるって言われていたんだけど、当たった!!当選!!」


いつもクールで姉さんみたいなみゆだが、オタクモードになるとテンションが高くなる。早口で捲し立てるように話すのもデフォルトである。


「そ、そうなんだ……よかったねぇ〜」


ガクガクと揺らされながら、何とか答える。目が回る。首が取れそうだ。声がが若干揺れている。舌を噛まずにすんだのが幸いか。


今度は、そのまま夢の中にいるようなみゆにいきなり肩から手を退けられる。急に衝撃がなくなって、目が回ったままヨロヨロとテーブルに手をついた。


一瞬三途の川が見えたようなみえなかったような。


「あ、ごめん、興奮しすぎた」


「あー、うん、大丈夫。それで、ライブ当たったんだって?」


「そう!そうなの!今年もColorsに会えるの!!生で!!幸せ!!!」


私がテーブルからこれまたよろよろと立ち上がりつつ、話を戻すと、申し訳なさそうにしていたみゆの瞳にキラキラが戻る。そして、興奮した様子で再度近づいてくる。また、両手が動いている。


……これは、また揺らされる流れ……!


「みゆ、ステイ!」


命の危機に瀕しそうな私の心からの叫びが響き渡った。手を伸ばし、待ての形を作る。すると、みゆはハッと気づいたような顔をして身体を止めた。


興奮した人間はほんと、何をしでかすかわからない。


興奮しっぱなしのみゆを給湯室に併設されているちょっとした休憩スペースへ連れていく。コーヒーメーカーなどが並んでいるその部屋の一角にソファとテーブルがあるのだ。そのソファに座らせ、私が飲む予定だったコーヒーをみゆに渡す。


コーヒーって落ち着かせる効能あったかな?いや、ないかも、なんて疑問も浮かぶが、とりあえずなんとなく落ち着いたみたいでよかった。


みゆを落ち着かせて聞いてみると、ライブが当たったことを報告したかったのもあるが、もう1つあるらしい。


「それで、どうしたの?」


「それでなんだけど、ひまも一緒に行かない?」


みゆはコーヒーを一口飲むと、そう言った。


「え、私も?」


「そう。2枚取ったんだけど、一緒に行くはずの子が急に無理になったってさ。理由は教えてくれなかったんだけど、何かいろいろ家が大変らしくて」


「なるほど」


「周りの友達に聞いてみたけれど、無理そうで。でも、やっぱりさ、せっかくの推しのステージ、空席を作りたくないなぁ……って」


みゆは眉を下げて悲しそうな顔をした。大切な推しがガッカリする姿を見たくないのだろう。


それから、みゆは一旦カップを目の前のテーブルに置くと、私の方を向く。その瞳には懇願の色が浮かんでいた。切実な願いなのだということが伝わる。それから、ギュッと手を握られる。


「だから、お願い!あたしがお金、払うから!」


そこまで言われたら、行くしかあるまい。それに、Colorsのステージってことは、ゆうくんもいるわけだし。私も少し興味がある。私はこくりと頷いた。


「わかった、一緒に行くよ」


「本当に!?やったー!!」


みゆの顔にぱぁぁっとわかりやすく笑顔が広がる。喜色をあらわにする、とはこういうことだろう。


「あ、でも、お金はちゃんと払わせて」


行くからにはお金はちゃんと払いたい。そう言うと、みゆは悩みながらも頷いてくれた。


公演は3週間後ならしい。仕事中のゆうくんをみる機会はあまりないから、ちょっと楽しみ。


でも、ゆうくん本人には言わないでおこっと。仕事とプライベートは分けたいだろうし、気が散られても困る。まぁ、ああ見えて抜け目ないし仕事に関しては人一倍頑張る人だから言っても完璧にこなすだろうけれど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ