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101話.わたし、記憶にない

イギリスから帰ってきて数日。私は仕事に明け暮れていた。休んでいた期間の仕事が机の上にドーンっとのっていて、出勤初日からとてもやる気を削がれたのはここだけの話。


まぁ、自分でついて行くと言ったのだから仕方ないのだし、後悔は全く欠片もしていないが。だって、ゆうくんの力になりたかったんだ。


ゆうくんも仕事が忙しいらしい。特にライブ前になるので、練習がいっぱい入っているらしい。遅れを取り戻さなきゃ、と息巻いていた。


一方で、お父さんとは連絡先を交換したそうで、本当に少しずつではあるが連絡を取っているとのこと。まだ再出発したばかりの関係なので、お互い関係を手探りで構築しているようだ。まだまだこれからという感じだろうか。


ひとまず、この山のようになっている回覧と書類、それから溜まっている仕事を何とかしなければ。先輩の企画の手伝いと、この前発売したCMにゆうくんたちが起用された化粧品の事後調査についてなどなど。


「頑張るぞー!」


「燃えてるね、ひま」


1人で声を上げていると、後ろ側から声が聞こえてきた。同僚のみゆである。みゆは通路を挟んだ反対側に机があるのだ。その声に振り返り、挨拶をする。


「あ、みゆ!おはよう」


「おはよー。で、どうだった?イケメン猫との旅行は?ラブラブしたかい??」


みゆは挨拶を返してくれたあと、ずいっとこちらに顔を寄せ、そう問いかけた。みゆには仕事を休む理由を伝えておいたのだ。旅行前の仕事の引き継ぎもみゆに伝えた。


「そ、そんな旅行じゃありません!」


「はいはーい。ランチの時、とりあえずどんな感じだったか聞かせてよ〜」


目をキラキラと輝かせながらグイグイと近寄ってくるみゆを両手で押し返す。何のための旅行かどこに行ったのかも全部あんたは知っているでしょうが。


私の反論に、みゆはからからと笑いながら私から離れる。これはからかわれたな、うん。


お昼の時間がやって来た。溜まっていた仕事は午前中に大分と片付けた。あとは午後に頑張ればいいだろう。


山ほど積み上がっていた諸々が半分くらいになっている。これほどまでに仕事が速いなんて、私はひょっとして天才ではなかろうか。1人でドヤ顔を披露していると、肩をトントンと叩かれた。振り向くと、みゆの姿。


「なにしてるの、1人で。変な顔」


「変な顔とは失礼な。見てよこれ、仕事早く終わった!」


「はいはいー。それより、はやくご飯いこ〜」


軽く流された。もう少し何か言ってくれてもいいだろう。と思っていると、冷たい目でこちらを見てくるみゆ。「すみません、調子に乗りました」と目で伝えると、「よろしい」と返ってきた。



ランチのために道を歩く。今日は社食ではなく外食をしたい気分だったのだ。といっても、行き先はいつもと同じ、食事処 つばきである。唐揚げを食べるぞ。


「ね、ひま」


唐揚げを食べる!と息巻いていた私の隣を歩くみゆから声をかけられた。その声はどこか周りをはばかるような小さな声だった。


「ん?どうしたの?」


声を潜めるみゆにつられてこちらも声が小さくなる。聞こえるようにみゆの傍により、聞き返した。すると、みゆはさらに小さな声で話す。


「金髪の男、知り合い?」


「金髪?そんな知り合いいたっけなー」


みゆの問いかけにうーんと考える。私の仲の良い人達の中に金髪はいないと思う。ゆうくんも明るい色ではあるが、金髪ではないし。記憶をさらってみるも、一向にわからない。


「ほら、あの男。ずっとこっちを見てるからさ」


そんな私にみゆは小さく反対側の道路を指さしてそう言った。言われた方向をみると、金髪にジャラりとアクセサリーをつけた男がこちらを見ていた。サングラスがかかっており、顔は見えない。だが、やはりこんなに派手な男の知り合いはいた覚えがない。


「いや?見覚えないなぁ……」


「そう?じゃあ、たまたま目が合っただけかな?」


「多分?それより、唐揚げ!唐揚げ!」


「あんた食い意地はってるわね」


「だって、唐揚げ、久しぶりなんだもん」


呆れ顔のみゆにえへへと笑い返す。お腹が空いていた私にはもう金髪の男のことは頭から抜けてしまっていた。

ここから最終章スタートです!

一波乱ありそうな予感ですねぇ。

金髪の男、みなさんは覚えていますか??

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