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96話.わたし、お出掛け

もう秋も後半に入ってきている。屋敷の中は暖かくしてくださっているが、外はそこそこ寒い。なので、この家に来るまでも着ていたベージュの厚手のコートを再度着る。


ちなみに中は薄手の黒いセーターの上に黒いチェックのノースリーブワンピースを合わせたコーディネートになっている。ワンピースはスカートの部分が大きめのプリーツになっていてお気に入り。


靴は長めの茶色いブーツ、カバンは黒色だ。


ちゃちゃっと準備をして、待っているだろうゆうくんのもとへと向かう。玄関先で待ち合わせなのだ。集合場所にはもうゆうくんが待っていた。


「ごめん!遅くなって」


「全然!行こ!」


ゆうくんはそう言ってから、すっとこちらに手を伸ばす。さながら王子様か騎士かのような振る舞いだ。先程までのうじうじさが嘘のようである。


「エスコートは任せて、僕のお姫様」


「本当にさっきまでと同一人物?」


優しげな声音に赤面しそうになって、照れ隠しで苦し紛れにそう返すと、ゆうくんは少しだけ照れたように、にへっと笑い、それから、私の手をぱっと取る。


「そのツッコミはなしで!大人しくエスコートされてて?」


握られた手をぎゅっと握り返すと、照れたように笑うゆうくんはどこか可愛くもある。可愛くもかっこいいのくもあるなんてずるいなぁ。


そんな思いを抱きながら、外へと歩き出す。ノアさんが玄関で見送ってくれたので、ぺこりと一礼をすると、ノアさんも優しい笑顔で紳士然とした礼をしてくれた。


その礼の美しさに少し見惚れていると、ゆうくんに繋がれた手が少し強めに引っ張られた。そのまま少し早足で屋敷から出る。不機嫌な顔をしているゆうくんに引っ張られながら歩く。


こちらを見ずにズンズン進むゆうくんに、私はクエスチョンマークがいっぱいだ。きっと、前から見たらいっぱい頭の上に飛んでいると思う。


「あんな風な振る舞いがいいの」


しばらくズンズンと歩いていたが、少し歩くスピードがゆっくりになって、そうゆうくんが言葉にした。相変わらずこちらの方は向いてくれなくて、ちょっとそっぽを向いている。その言葉はなんとも思いがけないもので、目を白黒させてしまった。


「え、なに、急に」


「いや、ちょっとデレてるように見えたから」


ポツリと落とされた言葉にさらに驚く。それってさ、それって……。


「なになに??ノアさんにまで嫉妬してるの?」


そう言うと、ゆうくんはわかりやすくビクリと跳ねて、それからあわあわとした動きをした。図星をつかれた人の図、そのままである。


「え、あ、ちが!そういう訳じゃないんだけど……」


「ふふふ、じゃあ、どういう訳なの?」


あのノアさんに嫉妬するなんてちょっと面白くて笑ってしまう。ふふふと笑っていると、決まり悪くなったのかゆうくんはこちらを見て、それから少し拗ねたような顔をした。おもちゃかお菓子を買ってもらえなかった、小さな子のような表情。


「……正直に言うと、嫉妬してるよ。君が笑顔になると、僕が笑顔にさせたいなって思ってしまうんだもん」


「なにそれ〜!私はゆうくんにいっぱい笑顔を貰っているし、それに私の想いがそれくらいって思われるのはちょっと心外だなぁ〜?」


拗ねているゆうくんが面白くて、クスクス笑いながらそう言うと、


「いや、そーゆー訳じゃ!ごめん、重いよね。この前アヤにも重いって言われたんだよね……」


あわあわとしたような姿をみせ、それから少し落胆したような表情をした。落胆と言うよりは自己嫌悪か。


「アヤさんって、あのメンバーで赤色の子?」


「そう。気をつけてたんだけどなぁ。僕、今、めっちゃかっこ悪いよね……」


「ふふふ、私は別にいいよ、重くても。それだけ愛されてるって思えるし。ありがとう」


まあ可愛い嫉妬だし。相手がノアさんなのはちょっとびっくりだけど。


照れたのかしばらく無言でいたゆうくんだったが、少し歩いてから、問いかける。


「……お腹、すいてる?」


「うん、ちょっと空いてる」


そう返事をすると、ゆうくんはうーんと少し悩んでから、


「レストランに行くか食べ歩きをするか、どっちがいい?」


と聞いた。ロンドンの食べ歩き。楽しそう。


「食べ歩きがいいな」


私がニコッと笑いながら言うと、ゆうくんはまた花がほころぶように笑う。それから、キュッと少し力を入れて私の手を握り、道案内をするように優しく引いてくれる。


「じゃあ、バラ・マーケットに行こう。屋台がいっぱいあるよー」

ゆうくんとのお出かけが始まります。

場所はロンドンをイメージしています。

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