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91話.ある執事、受難

結希様と陽葵様が出ていかれた後の部屋、旦那様はテーブルに両肘をつけ、顔の前で組むような仕草のまま、旦那様のすぐ横に立つ私に声をかけました。


「Noa」

(ノア)


「Yes, sir.」

(はい、旦那様)


聞こえてきたお声はどこか威厳に溢れており、少し硬い雰囲気です。先程結希様とお話になった時と近い声音とでも言いましょうか。返事をすると、旦那様はその格好から動かずについで質問をなさいました。


「What did you think about that conversation?」

(お前は先程の会話をどう見る?)


「Umm……」

(そうですねぇ……)


いいとは言えないがそんな率直に言う訳には行かず、悩んでいると、旦那様はバッと勢いよく顔を上げて、こちらをうるうるとした瞳で見上げてきます。その様子は先程の威厳は全くもって霧散しており、不安げに揺れるその瞳がどこか子どものようでございました。


「Bluntly! Tell me what you really think!」

(はっきりと!はっきりと!言ってくれ!!)


「You had a dignified attitude, but……」

(威厳はあったと思いますが)


「But……?」

(が?)


私の言葉に、旦那様はごくりと唾を飲み込み、続きを待っておられます。その姿は緊張感に溢れており、少し怖いくらいです。


「I think they didn’t get your feelings.」

(旦那様のお気持ちは伝わっていないだろうな、と)


「Really!?」

(そうなのか!?)


だって、怒って出ていきましたし。


きっと、旦那様は2人を認めないとは思っていらっしゃいません。旦那様なりのお互いをよく知りたい、これから仲良くして欲しいという言葉なのでしょう。


ですが、相手方には全く伝わっていません。それどころか反対されたと思っていると思います。


感想を言われた通り率直にお伝えすると、旦那様は大きな声でそう言い、それから頭を抱えて項垂れました。私はさらに言葉を続けます。


「Yes. Frankly speaking, you look formidable when you are silent. I think the way you speak is also kind of scary. And you should have explained your feelings more clearly.」

(はい。単刀直入に申し上げますと、旦那様は黙っていらっしゃると怖いのでございます。それに話し方もあのようになさると更に怖くなるのではと存じます。それから、言葉足らずです)


「Oh……!What am I gonna do! 」

(うわー!どうしよう!)


私の言葉に旦那様は自らの髪を掻き回されました。それはもう、せっかくセットした髪型が崩れるくらいに。上げられていた前髪が額の方へ下がり、ふわふわとまとまっていた髪は毛先があちらこちらを向いてしまっています。


そうです、見ていただいてわかる通り、先程までのお姿は仮初のお姿。言わば社交界用、お仕事用のお姿なのです。本当の旦那様はこのように子どものよう……失礼致しました、大変感情を素直に出されるお方なのです。


「Sir, I’m afraid you should treat them like that.」

(恐れながら、その姿をお見せになればよろしいのではないかと)


そうすれば、可愛らしい方だということは十分に伝わると思うのですが。


「No way!!」

(む、り、だ!!)


うんうん唸る旦那様に少々呆れながらもお水をコップに注いで手渡しながら声をかける。


「Why don’t you simmer down a little bit?」

(少々落ち着かれては?)


「Thanks.」

(ありがとう)


旦那様は私からお水を受け取ると、一気に飲み干し、コップをポンとテーブルに置いた。それからしみじみと言葉を続ける。


「Yuki found a nice girl. She can make him happy exactly.」

(結希はいい女性を見つけたな。きっと幸せにしてくれる)


親バカだと思います。先程、「お父様」と呼ばれてとても嬉しそうでしたし。


では何故あのように接することしか出来ないのか、それは、きっと旦那様は何十年も結希様に会えておりませんし、彼の母親、つまり奥様からも会えないようにされていらっしゃったからなのではないかと存じます。なので、接し方がお分かりになられないのだと思います。


「He can say his own opinion like that. He has really grown. And he found his love. 」

(あんなに意見をはっきり言えるなんて、成長したなぁ。愛する人まで見つけて)


凛さんとの婚約の話も元はといえば結希様を心配して結んだものでしたからね。


素直に腹を割ってお話なさればよろしいのに、と私みたいな老いぼれは思いますけれどね。


この親子、どうなるんでしょうね。

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