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86話.雨猫、僕の宝物

「僕はイギリスにいく」そう決意してから、僕は休みをもぎ取るべくがむしゃらに働いた。そんなある日、陽葵から連絡が入った。


最近は仕事を詰め込んで会えていないけれど、毎晩のように電話をしている。この前話さなかったことの反省をいかして、思ったことをできる限り話すようにしているのだ。


でも、この昼の時間に連絡が来るのは珍しい。仕事の合間に通知を確認すると、


「私、色々考えたんだけど、私も一緒にイギリスに行ってもいいかな」


とある。


続けて何件かメッセージが着ているようで、読み進めると、どうやら僕を心配してくれているらしいこと、私にも関係することだから私も直接向き合いたいということが書かれていた。


とても嬉しい、と感じた。僕のことを心配してくれていることも、そして一緒に考えてくれようとしていることも。「ありがとう、とても嬉しい」と返事をする。


でも、パスポートだっているし、お金だってかかる。休みも取らなきゃいけない。それはとても申し訳ない気がする。


「アオくん、そろそろ出番です」


「はーい!」


その時、ちょうどスタッフさんに呼ばれて仕事に戻った。今日も仕事が山積みだから、頑張らないと。


今日の夜の電話でちゃんと陽葵と話そう。



後ろで大きな窓が空を映している。ちょうど空を飛行機が横切った。空港、それは新たな世界にに旅立つ場所。僕達も新しい未来のために飛び立つ。


あの後、何回も話し合って、僕は陽葵と一緒にイギリスに行くことになった。話し合いはお互いちゃんと言いたいことを言い合った。ちなみに、お互いがお互いを心配して少し喧嘩みたいになったけれど、


「迷惑なんて思わない!むしろかけてよ!私、もう嫌だよ?あなたからじゃなくて、他の人からあなたの話を聞くの」


という陽葵の言葉が決め手だった。こんなに心配して大事に思ってくれている人に出会えたことは本当に幸せだと思うし、断ったら信頼していないってことだと思うから。


ありがとう、陽葵。


そう思いながら、隣をみてほほ笑みかける。それに気づいた陽葵が不思議そうに首を傾けた。


「どうしたの、ゆうくん?」


「いや、なんでもないよ」


「そう?……あ!搭乗時間だよ!行こっ!」


僕が首を横に振って言うと、陽葵はまだ不思議そうな顔で首を傾けていたが、電光掲示板に僕たちが乗る飛行機の名前と時間が表示された途端意識をそちらに動かした。


「うん、そうだね」


僕が返事をすると、陽葵は僕の手をぱっと取る。それから、先を急がせるようにグイッと引っ張った。


あんなにお父さんに会うのが嫌で、逃げていた僕なのに、君にギュッと手を握って貰えたら何故だろう、とても心が凪いでいる。


搭乗時間を知らせる電光掲示板は、僕たちの、僕の過去と向き合うためのスタート合図でもある。繋がれた手があたたかい。陽葵となら乗り越えられる予感がする。


僕も陽葵の手をギュッと握り返す。それに少し驚いた顔をした陽葵だったが、すぐにニコッと微笑んでくれた。


あたたかさが伝染して心に響く。その心地良さに、自分はひとりじゃないって信じられる。


「行こう!」


これから何が待っているか、どうなるかはわからない。でも、この笑顔が、この人が絶対手放しちゃいけない宝物だ。

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