85話.わたし、驚愕する
彼女に言われたとおり宇佐美さんの座っているソファと反対側に腰を下ろす。
「あき、お2人にお飲み物を。紅茶とコーヒーがあるのですが、どちらがよろしいかしら」
「紅茶でお願いします」
「では、あき、紅茶を4つ、よろしくね」
「かしこまりました」
そう、あきさんが返事をし、キッチンと思われる場所へと姿を消した。
「今日は来て下さり、ありがとうございます。その様子では結希はちゃんと自分のことを話せたんですのね」
あきさんが去っていくのを見届けた宇佐美さんが口を開く。
「うん、話せたよ。ありがとう、凛のおかげだよ」
「私からもお礼を言わせてください。宇佐美さん、ありがとう」
2人で頭を下げる。今日はこれが一番したかった事だから。
「いえいえ、お二人が幸せなら私も嬉しいですわ」
そうやって話していると、あきさんがお盆に紅茶を乗せてやってきた。テーブルの上にお盆を置き、ソーサーと共にカップを一つ一つ紅茶を置いていく。カップを置き終わると砂糖の入った瓶をテーブルに置く。
「ありがとう、あき。あなたも座って」
その言葉にこくりと頷き、あきさんは宇佐美さんの隣に腰を下ろした。
私たちは話を続ける。
もうひとつ、直接聞いてみたかったし、謝りたかったことがある。謝るのもおかしいのかもしれないけれど……。
「宇佐美さんはゆうくんと、その……婚約者同士なんですよね。私が……その……取ってしまったような気がして。ごめんなさい」
ゆうくんから恋愛感情はお互い全くなかったときいているが、自分の婚約者に手を出されるのなんて嫌に決まっている。
「あら、そんなこと!私、結希のことを恋愛対象として見たことは1度もございませんわ」
宇佐美さんがあっけらかんといい放つ。その顔は笑顔で特に気にしていないように見えた。
「結希がとても大事にしている女性が結月さんで良かった、と私は思っているのですわ。だって、こんなに素敵な方、結希には勿体ないくらいですもの」
ころころと笑うその姿も上品で、こんな素敵な人に「素敵な方」と言われて少々緊張する。
でも、そのお嬢様は、その素晴らしく上品な笑顔のまま、この後、すごい爆弾を落とした。
「それに、私、その…… 少々気になる方を見つけたんですの……」
恥じらうようにぽっとその顔を染め、それから、少し下を向く。
「ええええーーー!!??」
私とゆうくんと、そして一際大きいあきさんの声が部屋に響いたのだった。