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三神正義と魔法の箱  作者: 桜華 澄
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復活

復活


俺は日本に帰ってきて、すぐ空港から正二おじさんに連絡を入れた。

「おっ。正義、よかっただろう。これからは何かあったら仙人に直接連絡していいからな」

「おじさん仙人と連絡していたんですね」

「まあそういうことだ。でも、仙人の凄さがわかればそれでいいじゃないか。正義にも能力が備わっているのがわかっただろう。わしにはない、そのような能力をどう使うかは本人次第だ」

「わかっていますよ。それより、こういった話は母や兄弟たちには、なかなか分かってもらえないでしょうから、しばらく俺の家族には伝えないでください」

そう話して電話を切った。

仙人もスマホ持っているのか。テレパシーとか使えそうに見えるんだけどな。それに、あのど田舎でスマホの電波が入るのかな。やっぱり俺は正二おじさんに、まんまとしてやられたということなんだろうな。などと考えていた。

俺は何かわからないが気持ちが高ぶっていて、まるで戦場に向かう兵士のように、思わず武者震いをしていた。

 まだ夏休みは十分に残っているはずなのに、進路を決めないといけなという気持ちだけは強かったので俺は焦っていた。自分のできることを早く見つけないといけない。俺は電車に乗るための通路を思わず足早で歩いていた。

空港から帰りの電車に乗り継ぐ途中で、五十代くらいの紳士とすれ違った。

俺は、その人から『心臓の病気を患っている』という感覚が伝わってきた。俺は真っ直ぐに乗り換えの電車に向かうつもりだったが、その紳士が気になって引き返し、紳士の後を追った。


心臓病患者と医療天使ミーシャヲ


「誰か救急車を呼んでください」女性の悲鳴のような声がした。

俺は『やっぱり』と思いながら、走っていった。紳士が倒れていた。すれ違った場所から五百メートルくらいのところだ。俺はとっさに空港で常備しているAEDを取ってきて心臓マッサージを行った。周囲に人が集まってきた。

「手慣れたものですね。救命の知識をお持ちでしょう。学生さんはお医者さんを目指しているんですか」と先ほど助けを呼んでくれた女性が言ってきた。

「あ、いや、やり方がわかるだけですよ」

必死になって俺は処置を続けた。すると救急隊の人がやってきて、

「君、ありがとう。後は我々に任せてください」と言った。

救急隊は紳士を担架にのせて運んでいった。俺はほっとした。非常に緊張していたせいだろうか手が震えている。震えが収まるのをしばらく待ってから周囲を見渡すと、やじ馬たちは雲の子を散らすようにいなくなっていた。

「正義、見事でした」

守護天使ルシムだった。俺は慌てていてルシムの存在のことをすっかり忘れていた。

「見ていたんだ」

「もちろんですよ。ミーシャヲがあの紳士の心臓弁膜症まで治していましたから彼はもう大丈夫でしょう」

「へー。医療天使のミーシャヲはそんなにすごいんだ。あんな短い時間に、いったいどんなことをしたんだい」

「正義があの紳士の心臓病に気づかなければ私もミーシャヲも動けませんでした。」

「俺が行動して君たちが動けるんだな」

俺がルシムと話をしていたらミーシャヲが戻ってきた。

「ご苦労様」

俺はしみじみとミーシャヲを見た。金髪でボーイッシュな髪形していて、目の色はブルーだ。服装はルシムと同じで、ムームーのような長い服だ。色は白であった。

ミーシャヲは嬉しそうにはしゃいでいた。仙人のところから帰ってきてすぐに遭遇したこの出来事は、俺に大きな変化をもたらすことになった。まるで、自分の中に革命が起ったようだ。いや、それ以上のことかもしれない。


居候天使


家に戻った俺はボーっとしていた。電車に乗り、駅から自宅まで歩いたのは間違いないのだが、そのことは全く覚えていない。韓国滞在中にあまりにもいろいろなことがあったので、おそらく混乱していたのだろう。

翌日いつものように目覚めたら、俺の部屋の中がとても窮屈な状態になっていた。天使が二人もいるからだ。そうだ、仙人が俺に付けてくれた二人の天使は、はっきり見えるんだった。それに実態があって触れることもできる。普通の人にそんなこと言っても、たぶん理解して貰えないだろう。四畳半一間の俺の部屋は、さらに二人が入るととても狭く感じられる。部屋にはパソコン机、ベッド、本棚がある。これらは外せないから、やはり狭い状態を我慢するしかないだろう。

「ミーシャヲ、ベットの上で暴れるな」

「だって、たのしいんだもん」

「だから、狭いんだから騒ぐなって」

天使は自分の大きさを変えることができるんだから、ポケットに収まるサイズにでもなってほしいものだ。俺がなんだかんだと守護天使と医療天使に文句を言っていると、突然

「正義、悪いが土曜日に手伝ってもらえないか」

昇兄さんが部屋のドア越しから言ってきた。おれはつい、

「わかりました」と言ってしまった。いつもならしぶしぶ返事をするのだが、この日は部屋に天使が二人動き回っていたので、何も考えず承諾してしまったのだろう。

「え…」昇兄さんは、そう言って突然ドアを開けて入ってきた。俺の雰囲気がいつもと違うのを察したに違いない。でも兄さんには天使は見えない。

「正義、今、なんて…。あ、いや頼むよ…。」

「ういっす」

「あいつ、どうなってるんだ。いつもはまともな返事なんかしないから、なんか調子がくるうな」昇兄さんはブツブツ言いながら行ってしまった。

「正義、注意してください。普段と変わらないように行動してください。返事が変わっただけでも不審がられることもありますから」

「わかった。それにしても居候が二人増えただけで、こんなに部屋が窮屈に感じられるものなのか。ルシム小さくなっていいぞ。ミーシャヲも」

二人の天使はウキウキした様子でまるで子供のようだ。

「正義、外出る」ミーシャヲは早く活動したい様子だ。

「まだ勝手に出るなよ」



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