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三神正義と魔法の箱  作者: 桜華 澄
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仙人の治療

仙人の治療


次の日の朝、仙人は朝食をとりながら、俺に正二おじさんがこのお寺に来たときのことや、仙人自身に関する話、おじさんが出会って友達となった朴昌淳パクチョンポク氏に関する話をしてくれた。

「わしはこのお寺の住職でな。霊的な能力を持っておる。漢方医でもあるんじゃ。正二が出会った昌淳はわしの孫じゃ。町で開業医をしている。昌淳の父は朴錠福パクチョンポクといって漢方の研究をしている博士じゃ」

それを聞いて俺は、三代にわたって医療にたずさわってきたのか。すごいなと思った。

食事が終わってしばらくすると、お寺のお坊さんたちの動きがせわしなくなってきた。

「正義、わしの仕事をちと見ていくがいいでな」

そう言って仙人はお寺の本堂に集まって来た人たちのところに出向いていった。

患者と思われる人たちが五人一列に並ぶと、仙人は一人一人の名前を聞き、どこが悪いのかを尋ねていった。それが終わると仙人は右の人から順番に病気の部分に手をかざしていた。俺は驚いた。仙人の手から光が出ていた。光が当たっているところから、黒い煙のようなものが出ている。

「うわあっ」と俺は叫んでしまった。

お坊さんがすぐに俺に駆け寄り、静かに見ていてほしいと言うしぐさをした。俺もしぐさで「すみません」と答えた。昼過ぎまでに五十人ほどの人がやってきた。仙人はその人たちすべてに丁寧な治療を施した。

すごい。なんというパワーだ。俺がそう思っていると治療を終えた仙人が声をかけてきた。

「正義、何か見えたかの。」

「はい。かざしている手から光が出ているのが見えました。それと黒い煙のようなものも。あれは何ですか。」

「見えたか。わしの治療は手から『気』を送ったり、『医療天使』を使ってその人の悪いものを取り除いたりしておるでの」仙人はそう言って俺のすぐ近くまで寄ってきた。


正義も治療を受ける


目が見えないのに俺の頭の位置がわかるのか手をかざし始めた。手かざしをされるのは初めてだったので、俺はびっくりしたが成り行きに任せることにし目を閉じた。

「体の悪い所に手をかざすのか。俺は頭が一番悪いんだな…」

仙人の手から伝わってくる波動のようなものは、温かく感じられた。それは徐々に体全体に伝わっていった。この間ほんの二、三分のことであったが、気分がすっきりするのを感じた。

「正義、目を開けてみんしゃい」

その声で目を開けると仙人の周りにたくさんの光る物体が浮遊しているのが見えた。その物体は忙しそうに働いているようにもみえる。

「光る物体が見える」と俺は答えた。

「医療天使じゃよ」

仙人が『医療天使』と言った光る物体は人の形をしていて、仙人が動くとそちらの方向についていき、彼が支持をするとそちらの方向にも動く。

「医療天使は人間と同じ大きさから、人体の細胞の中にも入れるくらい小さくもなれるんじゃ」


天使について


仙人は説明してくれた。俺が今までに抱いていた天使のイメージとはちょっと違う。

「なんで俺にも見えるんですか」

「わしが正義に、ちと知恵を授けての」

「はあ、知恵ですか」

やっぱ俺は頭が足りなかったんだ。俺の頭は凡人程度なのか。いやきっとそれ以下に違いない。少し、しょげていた。

「正義は元々霊が見える能力を持っておったしの。わしは、それを引き出したにすぎんのじゃ」

俺の頭が悪いから治したということではなかったんだ。ほっとしたぜ。頭が悪いというんじゃなくて…。医療天使が見えるのなら俺も超能力占い師になれるのかな。俺はそんなくだらないことを考えていた。すると仙人は、

「医療天使の他に何か見えるかいの。医療天使よりもさらに人間に近い形をしている。守護天使じゃ」

今度は守護天使か。おいおい、どうなっているんだ。ついでに天国とか地獄とか、閻魔様も見えてきたりして…。

「守護天使は誰にでもついている。一人の人間に、平均で六人くらいの守護天使がいるんじゃ。その人間の背景、先祖の功労、その人の感情に左右されるが常に一緒にいる。」

仙人は俺にわかるように説明してくれた。

「そういえば、守護天使は夢に出てきたことがあるな」

俺は飛び回っている医療天使の中から守護天使を見つけた。

「やっと会えましたね。正義。私の名はルシムです」

ルシムはもっと早く見つけてほしかったと言わんばかりで、俺の近くに来てニコニコしていた。守護天使に名前があるなんて驚きだ。

ルシムは男で、俺より十歳ぐらい年上に見える。顔は日本人離れしていてどちらかといえば中東系だ。俺はいろいろ見えるようになって、ルシムの他にまだ誰かいるような気がしていた。周囲を見渡してみたがなかなか見つからない。

やはりいないのか…。何なんだ。俺は誰を探しているんだ。そう思っていると、

「正義、そろそろ日本に帰らなければならんじゃろ」

仙人はお土産を用意してくれた。けっこう大きい箱だ。何が入っているか楽しみだ。

やっぱり韓国だからキムチだろうか。

「それ以外に医療天使ミーシャヲをお供に付けるでな。これが大事じゃて」

「仙人、俺は何もできないですよ」

確かに俺は霊が見えるようになったが医療天使は仙人の十八番じゃないか。それに、医者を目指すかどうかも決まっていない俺が、医療天使なんて扱っていいのだろうか。

「正義は何もしないでええ。日本に行けば医療天使が即座に働くだて」

俺は仙人の言葉を信じた。

「自信を持て。お前を守り助けてくれる者がおるでな。それに正義という名はわしがつけたで。この世の悪に屈せず正義を貫いてほしいの」

仙人は俺の名付け親だったのか。ここにきたのは偶然ではないな。


仙人との別れ


「いろいろお世話になりました」

俺は深く頭を下げた。弟子のお坊さんが車を用意してくれた。帰りは空港まで問題なくたどり着けるだろう。俺はいろいろなことを思い出していた。あまりにもいろいろなことが起こったので若干戸惑っていた。でも仙人と出会って、今まで知らなかったことをたくさん身に着けた事だけは間違いない。

俺は普通の人間で終わってはいけない。仙人からもらった力を何かの役に立てないといけない。帰りの車の中でそんなことを考えていたら、送ってくれた弟子のお坊さんが言ってきた。

「正義さん、空港に着きましたよ。気を付けてお帰りください。それから正二さんにはよろしくお伝えください」

「あー、こちらこそ、ありがとうございました。またいつか、そちらを訪ねる機会がありましたらよろしくお願いします」

空港に向かいながら回想していた。山登りは大変だったがいい思い出になった。超かわいい子なんてそんなにいないだろうからな…。俺はかなり疲れていたようで、帰りの飛行機ではぐっすり眠ってしまっていた。



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