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三神正義と魔法の箱  作者: 桜華 澄
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再び夢の世界へ

再び夢の世界へ


その間俺は一度目を開けたものの再び眠った。そして夢を見た。夢の中で俺は不思議な世界の旅人となり、暑い砂漠の中を歩いていた。そして、突然極寒の地に行ったり、熱帯雨林の地に行ったりした。さらにその後も周囲の環境は変わったが、俺は驚きもせずむしろその変化を楽しんでいた。どうやら行ってみたいと思うだけで、どのようなところでも一瞬で飛んで行けるようである。俺がまた別の場所に飛ぼうとした時に天使たちが現れて、

「正義、大丈夫ですか。ここでは楽しそうですね」とルシムが言うと、

「あたい心配した。今まであんな怖い悪霊見たことない。今も震えてる」

ミーシャヲも話かけてきた。よほど恐ろしかったのだろう。俺はミーシャヲを慰めた。

「ミーシャヲ、ごめん。アメリカの医療の素晴らしさを知ってほしかったのに…」

「正義、悪霊は我に任せよ。悪霊が来るのはアメリカという国が抱えている問題が原因か、それとも、もっと深い意味があるのか。我にも謎である」

ゴーズは神妙な面持ちで語ってきた。

「そうだね。この広い霊界を見ていると地球は狭いね。でも俺はいつか医者になって、皆の病気を治してあげたいと思った」

「正義、将来の目標がやっと決まりましたね」

「やっぱりアメリカに来てよかったよ」

俺は天使たちに囲まれて笑っていた。

その時突如、俺の背中を強く引っ張る者がいた。俺が振り返るとそこには誰もいなかった。だが突風の吹きすさむような『グォー』という大きな音がして、俺は後方に倒れ大きな穴に落ちた。今まで近くに穴なんて見当たらなかったのに、いったい何だ!

穴に落ちた俺は背中を打ち、ゴボッと咳をした。体中が痛かった。夢の中で激しい痛みを感じ、それで俺は夢から覚めた。俺が目を開けると、そこには翔兄さんがいた。


正義の蘇生


「正義、気が付いたか。気分はどうだ」

「あっ。兄さん俺助かったんだね。ありがとう」

「三日三晩意識が戻らなかったんだ。やるだけのことをやって後はお前が意識を取り戻すのを待った。その間みんなでお前を励ましていた」

「そうだったのか。マリア、ジョンもいてくれたんだ。ありがとう」

そばにいた彼らにお礼を言うと、ジョンは

「意識が戻ってよかった。でもすぐには動けないから、もう少し休んでいたらいいですね。食事をして体力をつけて、リハビリもしっかり行うといい」

ジョンは俺にアドバイスしてくれた。どうやら彼自身大きな病気か怪我をした経験があるに違いない。

「ジョン、体が動かなくなった経験があるんですか」

「そう、FBIの捜査で、拳銃を持った犯人を追跡中に撃たれてしまった。その時に病院の集中治療室に運ばれてた。一時期命の危険すらあったが、マリアが必死になって祈ってくれたおかげで助かったんだ」

その話を聞いた俺は、祈りの持つ力をあらためて認識した。

「マリア、祈りには力があるんだね。今回それを強く感じたんだ。人の命を救いたいという気持ちを持って祈ると、それは霊界に届くんだね」

俺がいろいろ話をしているのを心配した翔兄さんが、

「長く話をすると疲れる。今はまだ無理をせず、しっかり休み食事をとったらいい。」

「わかった。そうするよ」

俺は食事の時間になるまで少し眠ることにした。三人は部屋を出た。

眠っている間に俺は治療室から一般の病室に移された。食事の時間近くになったとき、ノックの音がした。俺が目を開くと、若い女性の看護師がそばにいた。

「セイギ、担当のマーガレットです。よろしく」

看護師は昼食を運んできて自己紹介をした。

「明日からリハビリが始まります」

マーガレットはにこにこしながら俺に伝えてくれた。

俺は久しぶりにくつろいでランチを味わった。天使たちも嬉しそうにしている。

俺が移った病室はそんなに大きいとはいえはないが、それでも日本の病院の部屋よりは広く造られている。今までの明るさが戻ったミーシャヲは、またお仕事がしたいという雰囲気であった。

「正義、元気になったか。あたい病院の中をいろいろ見たい」

「見てきていいぞ」

ミーシャヲはもう大丈夫だと思った。

俺が順調に回復してきているのをルシムが見て話かけてきた。

「正義、アメリカに来てからいろいろありましたね」

「そうだよな。兄さんが俺に見せたいものがあると言ったんで、それが何なのか知りたくてここまで来たけど、それっていったい何なのだろうか」

俺が意識を失っていた時に使用された治療機器『魔法の箱』のことはまだ知らなかった。


 希望


リハビリを始めてから三日たった。俺の体は順調に回復していった。足が軽くなり、腕も自由に動かせるようになったし食事がうまい。毎日様子を見に来て検診をしてくれるマーガレットが、

「セイギ、元気そうね。食事はおいしい?」

俺は朝食を取りながら、

「マーガレット食事は最高だね。早く元気にならなくちゃ」

「リハビリも順調だから大丈夫よ」

「ありがとう」

アメリカの看護師は医者と同じくらい勉強している。俺も学ぶべき点はたくさんある。

「このスープとってもうまい。日本で俺の家族がやっている病院でも出したいくらいだ」そのようなやり取りをしていたら、ドアをノックする音が聞こえ、翔兄さんが入ってきた。

「正義、だいぶ顔色も良くなった。歩く時はまだしんどいか。痛いところはあるか」

「兄さんありがとう。今のところは大丈夫。松葉づえを使わなくてもよくなったし、痛いところもないよ。それより聞いていいか。ここに来る前に兄さんが言っていた『見せたいもの』とはなんだ」

俺はずっと気になっていた。それにアメリカに来た目的は悪霊を退治するためではない。今後の日本の医療に役立つことを知るためだ。ミーシャヲには最先端の医療を見せてあげたかった。翔兄さんは笑いながら、

「正義、魔法の箱だよ」

そう言って、俺のベッドのすぐわきに置いてあった銀色の箱を見せてくれた。

「この箱?これはいったい何だ」

箱があるのは以前からわかっていたが、それが何であるのかは全く想像できなかった。使い方も用途も効果についても不明であった。兄さんはその箱について説明してくれた。


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