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三神正義と魔法の箱  作者: 桜華 澄
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悪霊の再来

悪霊の再来


俺は天使たちと現場に急行した。マリアは、翔兄さんとジョンに、悪霊がまた出たことを伝えていた。

「ショウ、ジョン、また悪霊よ。急ぎましょう。詳しいことは、セイギが後で…」

「わかった」

兄さんたちはランチもそこそこに席を立った。ジョンは例の機械『バスターコール』をカバンに詰め込み、それを携えてマリアの後を追った。

俺たちは先ほどの病棟に着いた。廊下のところに来て俺はびっくりした。

悪霊はさっき見た時よりさらに大きな塊となって現れていた。直径にして三メーターはあるだろうか。中央に赤くギラギラした目のようなものがたくさんあって、病室のドア付近でうごめいている。

俺は走りながらとっさに悪霊目がけて霊波を放った。奴は一瞬動きを止めただけでびくともしない。かえって赤い目をギラギラ光らせ俺たちに光線で反撃してきた。

「グワー、ゴゴゴー!」

ルシムがとっさにガードしたので無事だった。だが続けて攻撃がくる。

「バリアはそんなにもちません」

ゴーズも戦闘態勢に入っていた。ミーシャヲは俺の後ろに隠れた。ルシムが、

「正義、一歩後ろに下がって霊波をもう一度溜めて攻撃してください」

「ルシム、わかった」

俺が霊波を溜めているとき、後からマリアがやってきた。

「セイギ、大丈夫?」そう言った直後、彼女は黒い塊をみて叫んだ。

「キャー、あれは何」

翔兄さんとジョンは霊が見えないがマリアの様子は察した。ジョンはすぐバスターコールをセットした。すごい勢いでガーガ-音を立てながら、グラフが大きく揺れた。

「すごい、こんなのは初めてだ」

ジョンは悪霊の凄さにびっくりしている様子だ。俺は一気に霊波を溜めた。

「セイギ、悪霊の目を狙え。粉砕したら我が地獄に運ぼう」

「ゴーズ、了解だ」俺は悪霊の目に照準を合わせ、

「粉砕玉砕。いけーー!」と意味不明の言葉を放ちつつ攻撃した。

「グヮーー」

悪霊は叫び声をあげた。黒い塊は粉々になって飛び散った。しかし、あのギラギラとした目だけは残っている。ゴーズも目が残ると予想していなかったようで、すぐに悪霊を地獄に連れて行くことはできなかった。俺は全エネルギーを使い果たしてしまったので、ギラギラ目の反撃は防げない。


手ごわい悪霊


俺が動けないのを見たルシムが、状況を察してもう一度一瞬でバリアを張った。直後に目だけの悪霊が光線攻撃をしてきた。ルシムの機転がなかったら無事では済まなかっただろう。しかし彼がバリアを張り続けるのにも限界がある。

「大丈夫ですか。今のうちに体勢を整えておいてください」

「ルシム、このままだとお前までやられるぞ」

俺は立っているのが精いっぱいになってきた。

「正義、もう一度霊波は打てるか」

ゴーズは再度あの目に攻撃を加えれば勝てると踏んでいる。俺はマリアが俺と同じような霊波を出せるのではないかと思い頼んでみた。

「マリア、あいつを倒して地獄に送るのを手伝ってくれないか。俺に力を貸してください。悪霊を粉砕してみんなを救うんだという気持ちを持って、強く念じてください」

「オーケー。」

マリアは翔兄さんとジョンに、俺が言ったことを伝えた。三人は俺の背後について肩に手をかけた。

「兄さん、念じて」

「わかった。やってみる」翔兄さんは返事をした。三人は集中力を高めて俺に力を与えようと念じていった。みんなのパワーが俺の中に入ってくるのがはっきりわかった。力が集まって俺の両手の中に霊波のオレンジ色の塊ができた。

ルシムがバリアを解いた。その瞬間、悪霊の目に焦点を当て霊波を放った。攻撃は命中。

「悪霊退散だ!」

俺は叫んだ。悪霊は粉砕され、今度こそゴーズが地獄に連れて行った。

「よし、一件落着だ。それにしても疲れたな。もう体が動かない。倒れそうだ」

そう思いながら俺は意識が遠くなっていった。遠くからミーシャヲが俺に何か話しているような声が聞こえる。きっと心配しているんだろう。もう一歩も動けない。


 緊急治療室


俺が意識を失ったのを見て、翔兄さんは病院のスタッフを呼び緊急治療室に運んでくれた。点滴による治療を施したが、俺の症状はどうも普通の体力消耗とは違うようだった。それはそうだろう。肉体の消耗というより霊的エネルギーの消耗だから、俺はかなり長い時間意識を失っていたようだ。

意識を取り戻したのは丸一日たってからのことだった。気が付くと、俺の側に翔兄さんがいて治療を施していた。兄さんは俺の意識が戻ったのを見て、

「正義、頑張ったな。大丈夫か」と言った。

俺のベッドの周りに凄い機械と特殊なカーテンがあって、普通の人は近づけない。マリアはこの部屋にあるイスに座って俺を見守ってくれた。

「セイギ、皆助かった。ありがとう」

マリアも声をかけてきた。彼女も俺のことを心配していてくれたようである。天使たちは俺が動けなかったので緊急治療室の周りでうろうろしていた。

天使は人間の命令で動くものである。俺の意識がなかったり、たとえ意識があったとしても体力消耗が激しいときなどは、単独で行動を起こすことはできないのだ。

天使たちが緊急治療室を出たり入ったりしているのにマリアは気付いた。俺の命令を待っているが行動できず、そのために治療行為を行うこともままならない。その状況を敏感に察知したマリアは、俺に代わって天使に命令した。

「ルシム、ゴーズ、ミーシャヲ。私の声が聞こえる。ああ、わかるのね。セイギを助けて。お願い」

マリアのその一言を受けてミーシャヲが俺の近くに飛んできて治療を手伝った。だが俺のダメージは相当なものだったため、ミーシャヲでもなかなか回復させられなかった。

意識は取り戻したとはいえまだかなり苦しんでいた。俺の状況を見ていた翔兄さんは、

「もうあれしかないな。やってみるか」

俺の容体はかなり深刻な状況だった。


魔法の箱を初使用


「正義、苦しい中済まないが、ちょっとだけ聞いてくれ。これから新しい治療機器を使用する。ツボと呼ばれる人体の各所に特殊な刺激を加えて治療する。まだそんなに多くの患者に使用してはいないが、効果はあるはずだ。僕はその機器を『魔法の箱』と呼んでいる」

兄さんの言葉を聞いた俺は、不自由な状況ながら首を小さく縦に振った。それから兄さんはその機器を取りに行くと言った。

今の俺は体の中からすべてのエネルギーを出しつくしてしまった状態である。肉体が損傷しているわけでもなく、精神的なダメージを受けているわけでもない。だが体を動かすことができないし意識がもうろうとしているのだ。

今までに霊力を極限まで放出して倒れてしまった人はいるのだろうか。おそらくそんな経験を持った人は、ほとんどいないだろう。だから今の俺を治療することは、アメリカの最先端の治療方法をもってしても、かなり困難な事ではないか。兄さんにはそのことがわかっているので準備して緊急治療室を出た。兄さんは後を見送るマリアに話しかけた。

「マリア、正義を見ていてくれ。ちょっと外すがすぐ戻る」

「わかったわ。ジョンと一緒にセイギをみている」

俺の様子を見ながらマリアは祈るしかなかった。

ジョンはしばらくマリアといてくれたがFBIからの連絡が入ったようで治療室を出た。

兄さんは病院の外に出て、車に乗り込み『魔法の箱』の置いてある作業場に向かった。こうして二人は席をはずし、俺の側にはマリアだけ残った。

どのくらい時間が経ったのだろうか。マリアがウトウトしていると、ジョンが帰ってきた。ジョンはマリアの近くに来て、

「マリアありがとう。セイギが戦った悪霊のことをFBIの特殊操作部に報告してきた」

二人が話をしていると、翔兄さんが戻ってきた。

「ショウ、どこへ行っていたの」

「マリア、前に僕が『魔法の箱』のことを話したのを覚えているかい。それを取りに行っていたんだ。この医療機器を使って正義の治療を行う。今、彼の体力の消耗は普通ではないから西洋医学の手法では回復や治療は困難だ。だからこの『魔法の箱』に期待している」

翔兄さんはそう言って、緊急治療室に入り銀色のアルミ箱を正義のベッドの横に置いた。そして、箱からフォークのような手の着いたコードを伸ばした。翔兄さんは、その先端部分を正義の頭に当てた。スイッチを入れたが、この機械が一体どのような治療効果をもたらすのかはよくわからない。

おそらく細胞を活性化させて人間の持つ自然治癒力に働きかける類の治療機器ではないかと思われる。翔兄さんは、頭から順番に、鍼灸で言われている、いわゆる『ツボ』という場所に順次医療機器を当てていった。結局全身に治療が施されたので、一時間以上の時間がかかった。翔兄さんは緊急治療室から出てきた。

「ショウ、セイギの容体はどうなの」

マリアが心配そうな顔つきで尋ねてきた。

「やるだけのことはやった。正義は眠っている。この医療機器を使ってすぐによくなるわけではないが、明日も続けて治療をしていこう」

翔兄さんは後をナースセンターの人達に任せた。

「マリア、君も疲れただろう。後は病院の人達に任せたから、一度家に戻って休んだ方がいい。明日また出直そう」

「ショウ、わかったわ」

そして三人は病院を後にした。

「天使さん、後はお願いね」マリアは、最後に声をかけてくれた。


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