作戦成功
よし、女は度胸ですね!
「あの、遅くなったお詫びと言っては何ですが、こちら新商品の試作品なのでよかったら使ってみてください。
参考にしたいので、またお店に来た時にでも店主さんに感想を伝えて頂けると助かります」
そう言って無理矢理渡して頭を下げて、おかみさんの方へ向かいます。と言っても狭いレジの端と端なんですけどね。
え?ええ、今渡したのは例のあれですよ。イケメンさんをイメージして作った靴下です。履いてくれると嬉しいのですが……まぁあまり期待せずにいましょう。
と言うか今日は偶然会えましたけど、きっともう会うことは無いと思うので履いたかどうか何てわからないですけどね。
おかみさんと一緒に商品の検品をします。ちなみに全部注文品のガラスペンです。
流行っていると言うのは本当のようですね。
「あら、マークさんじゃないですか。公爵家の護衛の方がどうして一緒に?
あぁ、ブロウ商会のダニエル様は公爵様の弟さんでしたね。
あら、でもこちらはどちらのご令嬢ですか?」
「あ、申し遅れました、私はチェーチル王国のイザベラ=クラークと申します。
ダニエルおじ様と父が従兄弟なので、毎年子爵家と公爵家へお世話になっているんです。
昨日の夕方子爵領からこちらに到着したんですけど、ブロウ商会に王家からの呼び出しがあって、ダニエルおじ様とチャールズ様は本日朝から登城致しました。
それで、一応私もブロウ商会の仕事を少しお手伝いしているので、今日の納品は私が来させて頂く事になりました。
代理ですみません」
「あらあら、ご丁寧にありがとうございます。朝一で来てくれて助かりましたので、気にしないでください。
……それはそうと変わったドレスを着ていらっしゃるのね?それもブロウ商会の新作かしら?
あと、その日傘も見せていただけませんか?」
「はい、どちらもレディ・フローラの新作です。
と言ってもまだ試作段階でして、販売は来年の夏に向けて出来ればいいなと思っています。
日傘も柄が素敵でしょう?」
「これはどうやって色をつけているの?お花みたいでとても綺麗な日傘ね……それにそのスカートの柄も素敵ね」
「ありがとうございます。日傘は染めて色をつけているんです。やり方は企業秘密です。ふふふ
スカートの方は染めた糸で織っているんですけど、実はウールの生地で同じ柄が欲しくて……どこかいい織物工場があればいいのですが……」
「本当!?実は私の実家が織物工場なの!よかったらうちの工場で作らせて貰えないかしら?」
ふっふっふ、実は知っていました。昨日ダニエルおじ様に聞いたんです。
ウールに強い織物工場があれば教えてくださいと言ったら、納品先のおかみさんの実家がいい工場だって。
スカートに食いついてくれてよかったです。ブラックウォッチ以外にも何色かタータンチェックの見本を用意していたので、バッグから取り出します。
「これが見本の生地です。午後から今朝のお詫びにダニエルおじ様が来るそうなので、よかったらおじ様と色々話してみて貰えませんか?
こんなに早く工場が見つかると思っていなかったので嬉しいです!」
「凄いわね!こんなに色々……どれも素敵ね!
これで冬のワンピースを作ったら素敵でしょうね!」
「そうなんです!私も作りたいんです!でも綿しか作れなくて……
染色の事とかも色々聞きたいんですけど、学園が始まってしまうので国に帰らなきゃいけないので残念です」
「ちょっと待って!あなたが作ったの?え?もしかしてあなたがレディ・フローラなの?
いえ、そんなはず無いわよね……レディ・フローラだとしたら若すぎるわ!」
まぁレディ・フローラなんですけど、今はまだバレる訳にはいきませんので苦笑いで誤魔化しましょう。
そう言えばイケメンさんはまだいるようですね。
はぅ、やっぱり目の保養です。




