ラブリー・ガーネット
午後からは行く宛もなく絵本を置いてくれそうなお店を求めて街の散策です。
人が多いお店は八百屋さんにお肉屋さんに食堂……どれもお水や生物を扱うし、絵本を置いて貰うには向かない感じですね。
洋服屋さんに靴屋さん、ジュエリーショップですか。あの辺りならどうかな?ん?チャールズ様、にやにやして気持ち悪いですよ……
「ベラ、ちょっとあのジュエリーショップへ行かないか?」
何でしょう?何かの罠ですか!?
「いらっしゃいませーって坊っちゃんでしたか。これはこれは可愛いお連れ様達を連れて……もしややっと婚約者が決まったのですか?」
人の良さそうなスタイリッシュなおじ様がチャールズ様と親しげに話しています。婚約者ですか……チラリとハンナを見れば、チャールズ様もハンナをチラッと見て微笑まれました。
ハンナの頬っぺたが分かりやすく反応しています。ふふふ
「まあその話はまた今度ゆっくり……」
な、何ですか!?まさか私の知らない間に何か進展が!聞いてないよハンナ!今夜は問い詰めなくてはいけませんね!
「それよりどう?出来てる?」
「もちろんです。オーナーの指示通りこちらの一番いい場所に。あとは本を置いて頂くだけになっております」
どう言うことでしょうか?本を置いてくれるって事ですか?
イケオジが一番いい場所と言った所を見に行くと、なんとシンデレラスペースが出来ていました!ガラスの靴も貴族用と平民用の2種類が飾ってあり、何となくそのうちこんなのもいいかな~なんてデザインしていたシンデレラモチーフのアクセサリーがショーケースの中に並んでいます。
ビックリしてチャールズ様を見るとにやにや笑っています。
「ビックリした?ここ、うちの店なんだ。てか子爵領の街のジュエリーショップが他所の経営なわけないじゃん。本当ベラってその辺は抜けてるよな~」
なんと、ブロウ商会のお店でしたか!そう言えば子爵家は宝飾品の専門でしたね!でもこんないい場所を取ってしまっていいのでしょうか?え?レディ・フローラの新作だから当たり前だって?確かにブロウ商会の一番人気のブランドと言えばレディ・フローラなので問題無い……のかな?
あ、こっちにはガラスペンも置いてあります。レディ・フローラの新作、ラブリー・ガーネットシリーズって……何ですかこのこっぱずかしい名前は!ガラス製品はみんなラブリー・ガーネットシリーズになるんでしょうか?
誰が考えたか分かりやす過ぎますね。ハンナも顔を真っ赤にして何やらチャールズ様にヒソヒソ言っています。表情的には抗議してるんでしょうか?
チャールズ様はにやにやしながらハンナを宥めているようです。もうやだ、この二人!勝手にやっててください。
「さあさあ、こちらに本を置いてください!皮表紙の本が出来上がったらそちらに変える予定です。
うちのお店は平民向けのリーズナブルな物から、貴族向けの高価なものまで扱っていて、品質も一級品なのでわざわざ来られる貴族のお客様も多いんですよ。
そう言う方は新作と聞くとすぐに飛び付くんですよ。
しかも今回は可愛らしい本に、本に関連したアクセサリーと来たら貴族令嬢が飛び付きますよ!はっはっは」
全然知りませんでした。レディ・フローラは人気だと聞いてましたが、わざわざ他所からまで買いに来るんですね。
こんな綺麗に飾って貰って……嬉しいんですけど……どうも隣のラブリー・ガーネットが気になって素直に喜べないのは何故でしょうか……




