リアルお伽噺?
何が起こるのかとベンソン子爵を見ていると、マチルダの前に跪きました。
「マチルダ……知っての通り私は長い間女性に騙されていたことにも気付かず、出世の為にと打算で結婚したくせに相手をほったらかしにして傷付けて……全てを無くした様な情けない男だ……
もう一生女性には関わりたく無いと思って生きてきたんだが、ここに来て君と共に過ごす時間がとても心地好くて、君の真っ直ぐで嘘のつけない性格にとても癒された……
マチルダなら、もう1度信じてみようと思えた。だからどうか、今後の人生を共にここで過ごして貰えないだろうか?
こんな情けない俺と結婚して下さい」
何と言うことでしょう!まるで映画を見ているようです!いえ、お伽噺かな?素敵!素敵過ぎます!
ここにいる女性陣はみんな大興奮ですね!あ、お菓子に夢中なフィリス以外……
マチルダも感動して泣いていますね……両親が亡くなって男兄弟もいなかったので、もう男爵令嬢ではありませんがその辺は大丈夫なんでしょうか?
まぁ子爵ですし、女性問題で色々話題になってしまったのでまともな結婚は望めないでしょうから、あまり気にしなくてもいいんじゃないでしょうか?
どうしても貴族じゃないとって言うのならば、うちの実家に養子に入ってもいいですしね~。おめでとう2人ともよかったですね!
あ、せっかくなので写真を撮っておきましょう!
ちょっと2人をモデルに物語を書きましょうか!あ、でもちょっとベンソン子爵の人生が情けなさ過ぎますね……プロポーズがかっこ良すぎて忘れていましたが、物語のヒーローにするにはちょっと微妙ですよね……
タイトルは『へたれ王子と馬の世話人?』しっくり来ませんね……物語はこんな感じでしょうか?
幼い頃、王子様と馬丁見習いの少女は、王子様の馬のお世話をきっかけに仲のいい友人になりました。
ですが、大きくなるにつれ王子様は勉学に忙しくなり、馬丁見習いの少女もまた仕事で忙しく、身分の違いも分かるようになり、2人の間には距離が生まれました。
ある時、王子様の前に悪い魔女が変身した美しい姫が現れました。王子様はすっかり姫に夢中になり、その後結婚した妻を蔑ろにしました。
すると、怒った妻の家族が妻を救出しに来て、姫が魔女の変身した姿だと見破りました。なんと魔女は城の者達を操り、妻を虐めていたのです!
妻の家族は激怒して、許しを請う王子様と城の者達を許さず、魔女と共に制裁を与えました。
王子様は身分を落とされ、すっかりみんなの笑い者になりました。仕事も無く途方に暮れていた所、新地開拓をする土地があると言うことで、藁にもすがる思いで働きに行くことにしました。
慣れない肉体労働に気弱になることもありましたが、2人の仲間と共に励まし合い、頑張っていたある日、成長したかつての友人がやって来ました。
彼女もまた、この地で働くために雇われたそうです。幼い頃より修行して実力もあるのに、女と言うことで何処にも雇ってもらえずに途方に暮れていた所、領主様に声をかけられたのです。
幼い子供を残して夫を亡くした姉家族と共に、新しい土地での生活を夢見てやって来たのだとか。
思わぬ再会に喜び合い、一緒に働くうちにお互いを尊敬できる関係になりました。
仕事熱心で真っ直ぐで嘘のつけない性格の彼女と過ごすうちに、王子様の心は段々と癒されていきました。
ですが、魔女に騙されていたとは言え情けない自分に自信が持てず、彼女に思いを伝えることは出来ませんでした……
ある日、王子様の前に天使が現れました。色々考え過ぎてちゃ何も出来ないよ!と勇気を貰い、ついにプロポーズすることを決心したのです。
王子様は彼女の前に跪き言いました。
『俺は君も知っている通り、魔女に騙され、妻を傷付け、全てを失った情けない男だ……
もう誰も信用出来ないと思っていた。だが、君と共に過ごす時間がとても心地好くて、君の真っ直ぐで嘘のつけない性格にとても癒されたんだ。
どうか俺と一緒にこの地で生きて欲しい。こんな情けない男だけど、結婚してくれないか?』
『はい、喜んで……』
かつての馬丁見習いの少女の瞳から一粒の涙がこぼれ落ちました。おしまい




