レディ・フローラ
ガラスの靴の掴みは上々なので、次にドーム型の物と、林檎型、カボチャの馬車型の物を取り出します。
「どれも素敵ね……この天使もとても可愛いわ。でも私はカボチャの馬車が欲しいわ。ガラスの靴のとカボチャの馬車、シンデレラみたいで素敵よね」
クラリスお姉様、よっぽどシンデレラがお気に召したようです。
「確かにそうね……でも私達の年代からしたらデザインが少し若いわ。でも、この天使は素敵ね。裾のレースが繊細で、今年のアリシアお義姉様のお誕生日プレゼントに渡したいわ」
なるほど、エレナおば様位の方には少しメルヘンチック過ぎたようです。ふむ、でもこの年代の方の方が色々お付き合い等のプレゼント用に買っていただけるかもしれませんね。
「おじ様、もう少し貴族用の落ちついたデザインの物を考えた方がいいでしょうか?」
「うーむ、そうだな……いや、とりあえず今回は靴と馬車をメインで行こう。あまり色々なデザインを一気に出し過ぎると、せっかくのインパクトが薄れてしまうからな。
まずは絵本が流行った頃に、あの絵本の中のガラスの靴とカボチャの馬車としてセンセーショナルに発売し、それからしばらくして少し人気が落ち着いて来た頃に新作として発表していこう。
新作と言う言葉に弱いのは、貴族も平民も同じなんだよ。
同時に出すより3倍は売り上げが増すぞ」
さすがおじ様、悪どい笑顔ですね~。でも確かに新作と聞くと気になりますもんね。
「さすがですわ。あと期間限定や数量限定にも弱いですよね。私もすぐ釣られて買ってしまいますわ」
「その通り。期間限定に数量限定としたら飛ぶように売れるぞ。あと今だけ割引なんてのも売れるな。
そうだ、数量限定で何か貴族向けに少し豪華なのを作ってみたらどうだ?多少高くてもすぐ売れるぞ。
そうだな、あまり個数があっても限定感が無くなるから5個くらいでどうだ?」
なるほど……数量限定はいいですね。今よりもっと繊細にするのもいいですが、インパクトが足りませんね。
数量限定で最初に思い出せるのがグラス付きビールって……女子力の無さに悲しくなります。
あとはクリスマス限定デザインの化粧品とかジュエリーですかね……現実的なのはジュエリーですね。
何を隠そうブロウ子爵家はジュエリーの商家なのです。
ダニエルおじ様が宝石や天然石の魔力持ちで、加工はお手の物なんです。
そして奇跡的にご子息のチャールズ様は鉱物や鉱石の魔力持ちだったので、鉄や銅はもちろん、金、銀、白金の加工もお手の物なので、二人合わせてどんなジュエリーでも作れてしまいます。
以前はエレナおば様やクラリスお姉様がメインでデザインを考えていらっしゃいました。
とても洗練されていて上品なデザインでしたが、なにぶん保守的で面白味に欠けたので、何か他所より卓越した商品は無いかと一時期おじ様を始め、子爵家の方々はとても悩んでおられました。
その時たまたま遊びに来ていた私が、前世仕事柄ブライダル雑誌を色々読み漁っていた時に目にしたブライダルジュエリーのデザインを試しに描いて見せたらとても気に入っていただき、それからレディ・フローラと言うブランド名でジュエリーデザインをさせていただいています。
前世のパクリに自分の感性を織り混ぜつつデザインしたジュエリーは、自分で言うのも何ですが斬新だと言うことですぐに大人気のブランドになりました。
もちろんデザインだけでなく、おじ様とチャールズ様の確かな技術力あっての事ですけどね。
特にブリリアントカットは、今までに無い輝きを放ち皆様の度肝を抜かれたとか。おじ様の技術あってこそ出来るカットなので、今ではブロウ子爵家の代表作となっております。
デザイン画だけなら手紙と一緒に郵送できるので、母国にいる間もちょこちょこやり取りしながらデザインしているんですよ。
ちなみにデザイン料の代わりに土地を貸してもらってお米と大豆を育てさせて貰っています。




