畳
さて、昨日アトリエは完成したので、今日はいよい畳を作りましょう。
新居は内装工事が入っているので、公爵家の例の場所をお借りして作ることにしましょう。
夏の終わりにまだ何も手付かずだったので、きっと冬の今新しく何かしていることは無いはずです……ほら、やっぱり私のいつもの場所が空いていました!
まずは稲藁を大量にですね……ふんふふんふふ~ん。圧縮して圧縮して~作って圧縮して~を繰り返してなんとか畳8枚分出来ました。
ふふ、ついでにお米も大量に出来ました。
そうしたら今度はい草ですね。作って泥染めして乾燥して織って織って~、あぁいい香り……
ちなみに縁は作りきれなかったので縁無しです。
台車の上に積みながら作ってなんとか完成です……お腹空いた……は!とっくにお昼過ぎてるじゃないですか!大変です!
あれ~?でも誰も探しに来ませんでしたね?
「あらベラお帰りなさい。アトリエはどうだった?」
どうやらアトリエに行っていると思われていたようですね。慌てふためくメイドさんが、サンドイッチとスープと果物を申し訳無さそうに持ってきてくれました。
何も言わずにフラフラしていた私が悪いので、全く問題ないです、むしろこんなにありがとうございます!
公爵家の執事さんに、アトリエに畳を運んで欲しいので誰かお借りできないか聞いたら、マークさんといつもの庭師さんをお借り出来ました。
荷馬車で近くまで行き、台車に畳を積んで運びます。お店へ着いたらダリウス様も手伝ってくれて、部屋まで畳と、一緒に作った靴箱と机を運んでくれました。
私も手伝うと言ったんですが、階段から落ちたりしそうで怖いから止めてくれと全力で断られてしまいました。解せぬ
あとは布団が届けば完璧ですね。
マークさん達を見送っていると、声をかけられました。
「あの、イザベラお嬢様お久し振りです……覚えていらっしゃるでしょうか?」
「あら、あなた確か公爵家のクリーンメイドさんじゃない。確か結婚して辞めたんでしたよね?とりあえず中へどうぞ」
休憩室へ連れて行ったら、ダリウス様が温かい紅茶を入れてくれました。茶菓子にチョコを出します。
「あの……突然こんなこと言うのも何ですが、よかったらここで雇ってもらえませんか?お嬢様がお店を出すと聞いていてもたってもいられなくて……クリーン位しか出来ませんが、お掃除も洗濯も得意です!」
「ちょっと落ち着いてください。えっと、あなた結婚したんですよね?ご主人は働くことを何て言ってるの?
そもそも公爵家や他の貴族のお屋敷みたいにお給料も出せないので、働くとしてももっといい所があるんじゃないの?」
「ぅぅぅぅぅ……」
どうしましょう、物凄く泣かれてしまいました。オロオロしているとダリウス様がクリーンメイドさんの隣に座り、優しく背中をさすってあげます。
「大丈夫よ、誰も追い出したりしないわ。安心していいのよ。ゆっくり呼吸して」
クリーンメイドさんが少し落ち着きました。さすが姐さん、頼りにしてます!
「それで、えっと……」
「ジニーです。いきなり泣いてしまってすみません……」
「そう、ジニーね。いいのよ、気にしないで。泣きたい時は思いっきり泣くといいわ。泣いてスッキリしたら、今まで行き詰まっていた物の先が見えてくるのよ」
おお、いいこと言いますね!ダリウス様、素敵です!
「ありがとうございます……少し長くなりますが、よかったら話を聞いていただけませんか?」
「もちろんよ、でも無理に話さなくてもいいからね」




