プロローグ
「イザベラお前との婚約は破棄し、我が愛しのマリーへの殺害未遂の容疑で国外追放とする!」
「慎んでお受けいたします」
ほぅ……こんな場面でさえギャラリーが見とれるようなカーテシーを流れるような所作でするイザベラは、この国の御令嬢達の憧れの的だった。
そして誰もがイザベラがマリーを殺害しようとしたなどと信じていなかった。
見事なハン○ックポーズを決めて悦に浸っているこの国の王太子以外は……
誰もが憧れる伯爵令嬢イザベラの中身がとても残念な事は、家族と親戚しか知らない事実である。
ギャラリーが皆こんな茶番に巻き込まれてお可哀想にと胸を痛めている頃……イザベラは歓喜に震えていた。
“はい、婚約破棄キター!しかもこのナルシスト、ビシッて効果音が出そうなほどのハ○コックポーズ決めてくれましたよ。
無駄に背筋を使いそうですね。
ああ、それにしても長かったです。やっとですよやっと!
どんなにこの日を待ちわびたことか……やっと私のキラキラ畳生活が始まるのね!
もちろん全部冤罪ですけどね!
ナルシストの横でほくそ笑んでいるマリー男爵令嬢の自作自演ですけどねー。
マリーちゃん、ナルシストを無事に引き取ってくれて、本当にありがとう。
冤罪はいただけないですけど、自作自演の証拠はたっぷりあるので、お父様が外交から帰ったらどうにかしてくれるでしょう。
まあ別にこの国に帰る予定も無いので、どうでもいいんですけどね。ふふふ
ああ、体が羽根のように軽いです。思わずスキップしちゃいそうです。
ダメよイザベラ、あのドアを出るまでは我慢よ我慢。
あら?でももうこの国から去るのに我慢する必要ってあるんでしょうか?
あ、あそこにハンナがいる。ハンナー、無事任務完了よ。誉めて誉めてー!
あ、思わず笑顔でスキップして手をふっちゃった。まぁハンナも笑ってるし問題無いですね。
さぁ、今すぐ出発しましょう。
明日まで待っていたら、事情を知った陛下が絶対何か言ってくるので、今すぐ行くわよハンナ!“
「オーッホホホホ。オーッホホホホ。フリーダム!」
“立派な悪役令嬢になるために練習した高笑い、今こそお披露目の時よ!“
あぁ、イザベラ様お痛わしい。
あまりのことに気がお触れになったんだわ……
イザベラはギャラリー達に哀れまれていることなど気付きもせず、従妹のハンナの腕を取りスキップで会場を後にした。