二拍目
夏の強い日差しを浴びて、生命の輝きを煌々と出す植物たち。
黒色のズボンに白色のシャツを風に靡かせ、最期の高校生活を謳歌しようとはりきる一団の中に僕もいた。
「風が気持ちいねっ、竜!」
隣には真っ赤な自転車を我が物顔で走らせる彼女の姿。
その生き生きとした表情は根倉な僕をそっとはしてくれない。
「そうだな! ……おっしゃ、飛ばすぞ!」
「ぁっ、まってよ!!」
春には満開の桜を咲かせる並木を、世界で一番の幸せ者は自分であるかのように僕は走らせる。
都内の別段頭も良くない高校に通い、僕たちは志望大学へ向けて最後の追い込みをかけていた。
そんな何処にでもあるような普通の日常。そんな詰まらなく、得難い日々をこれからも共に歩んでいく。
そう、その時の僕は信じて止まなかった。
僕の全てを変える出来事が起きるまでは───。
───平凡な時間が丁度一周した後。
鳴り止まぬ悲痛の叫び。朝なのに光を通さない室内。
到底良い臭いとは言えない悪臭が漂い、乱雑に置かれたぬいぐるみ達は異様な恐怖を吐き出していた。
彼女は───自殺した。
「───ッ」
必死に言葉を押し込む。
美子が何故自殺したのか、つい昨日まで普通に笑っていた彼女がなぜ目の前で首を釣っているのか。
何もわからない。何もわかりたくない。
全くもって呆気ない出来事。異世界からの魔物に殺されるわけでもなく、世界を救うために自身を犠牲にしたわけでもない。
僕が何かをしたのか、誰かが何かをしたのか。
何故君は死んでしまったのか。
到底笑顔とは思えないその死に顔の裏には何が隠されているのか。
一つ必然性があったとすれば、彼女を発見したのは僕だってこと。
「美子……どうして」
後日にわかったことだが、彼女の机の上には桃色の手紙が残されており、その中身には純白の紙切れに一言「秘密だよ」と書かれていたらしい。
父親が悲しみの余り、破り捨ててしまって直接見ることはできなかったけど。
いったい彼女が秘密にしたかったことはなんだろう。
いくら考えても、誰に聞いてもその答えが見つかることはなかった。




