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彼女は決意する

 太陽は沈みかけ、夕日の光がより一層強いものに感じます。

 目の前に深雪が静かに眠っているのですが、女の子のような白い肌は日の光に反射していて、その姿があまりにも幻想的だから少し嫉妬をしてしまいました。


 深雪と親友のような関係になれたのは、必然だったのだと思います。

 新しい出会いがあれば、私の周りに人が集まるのですが、思ったことを言ってしまう性格ゆえに、すぐに人は私から離れていってしまいます。


 それでも男子は諦めずに近づいてくるのですが、下卑た思いが見え透いていて、私のほうから離れ、結果として私はいつも孤立していくのです。

 中学に進学しても私の生き方は変わることなく、同じように孤独な生活を送っていきました。それが、四宮恵里の青春だったのです。


 時間が経てば、クラス内のグループも形成されると自然にクラスから浮いてしまう中、私以外にも浮き出て孤立している人がいました。

 

 それが、三条深雪でした。


 その子はどう見ても女の子の容姿をしているのですが、どうやら性別は男の子のようで、私はなんとなく彼に興味を抱くようになりました。

 深雪を観察していると、どうもお昼休みは図書室に入り浸っているようで、声をかけるには絶好のタイミングだと思い、声を掛けることにしました。


 話してみると、感情をそのまま表す態度や実直な物言いが私には大変好ましく、この人なら上手くやれそうだな、と思えることが出来たのです。

 このサラサラとした感情は私の人生で初めての経験でした。


 それを手放したくない私はしつこく深雪に絡んでいきました。すると、深雪自身も私に対して意識を向けてくれるようになり、自然と仲良くなることが出来ました。

 深雪は都心の高校に進学すると聞いたとき、少し焦りました。


 元々、地元の高校に進学するつもりだったのですが、そうすると深雪と離れてしまう。離れてしまえば関係がなくなってしまうことを恐れた私は、同じように都心の高校に進学することを決意しました。なんだかストーカーみたいで、というよりまんまストーカー行為で少し後ろめたい思いでした。

 高校に進学し、半年ぐらい経ち、深雪は私と遊んでいる時に唐突に言うのです。


 「恵里にね、紹介したい人がいるんだ」


 「紹介したい人? 何それ誰それ?」


 「僕の友達……というか、兄弟かな」


 鹿河彼方と出会ったのは深雪の紹介からでした。

 すごく不思議な人でした。

 他の男子とは違って下心のようなものは感じません。


 なのに、何故か必死に私のことを口説こうとしているのです。そのくせ、その目は何処か遠くを見ています。私は気になりました。彼が何を思って行動しているのか。

 余りにしつこいので根負けした私は彼と付き合うことにしました。


 彼はひねくれていて、何を考えているかわかりません。だけど一つだけわかることがありました。いつも深雪のことばかり考えています。

 彼は自分の意見を言いません。やる事なす事私に合わせてくれます。だけど、深雪のことになると、自慢話や愚痴など自分のやりたいことを語ります。


 彼は何事にもやる気がありません。だけど、深雪のことになると活力が溢れます。深雪が熱を出したと知ると、デートの最中でも駆けつけていきます。

 彼の頭の中は深雪で出来ているのでしょうか? 少しくらいはその思いを私に向けてくれてもいいのにと思わずにはいられないのです。


 そんな風に思われたかったんだと思います。

 たぶん、嫉妬していたのでしょう。

 私に気が向かないかと試行錯誤したのですが、どれも空回りに終わってしまいました。


 思えば、私は愛情を求めていたのかもしれません。

 親は仕事ばかりで、帰るのも遅く、帰ってくればすぐに寝てしまう。そんな環境の中で育った私は愛情というものを知りませんでした。


 だから、彼方クンが深雪に向ける本物の愛情を少しでも分けて欲しかったのです。

 彼方クンの目には深雪しか映っていない、そのことに自覚してしまうと、あるのは諦めの感情だけでした。


 彼の隣は相応しくないのだと、その席を深雪に譲るように身を引きました。

 あと、いたずら心です。コテンパンに振ったら、少しは気を向けてくれるかもしれないと思い、彼のもとから離れました。


 結局、何も得られないまま終わってしまったのですが、今でも私はあの愛情を欲しているんだと思います。


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