イカれた変態野郎
「メンハンやろーぜ!」
放課後、そんなキャッチフレーズで俺を誘う主はリージアだった。
メンハンとは、メンズハンターというマルチプレイのできる所謂狩りゲーなのだが、俺はこのゲームをリージアと小野寺きゅんの三人でよく遊んでいる。
しかし、どうもこのゲームは三人では盛り上がりに欠けるのだ。
そんなこんなで、四人目の仲間を探していたところ、リージアが見つけたらしく、紹介もかねて一緒に遊ぶことになった。
深雪にはリージア達と遊ぶと言って別れた。拗ねた目がとても愛らしく、深雪展が開催されたら満員御礼であろう。
俺たちは学校を出て集合場所に向かっていた。
「それで、四人目ってどんなやつなんだ?」
「ボクの友達だけど、なんと女の子なんだ。しかも、ボクみたいな美少女なんだ
ヨ。やったねカナタ! ボク以外でおっきくしちゃダメだヨ♪」
「お前はなにを言っているんだ……?」
「なんで私まで……」
隣で不満を漏らす楓。俺を見る目がとても冷え切っている。
「だってかえでっちもメンハン仲間だし。それにカナタと一緒にいたいでしョ」
「いたくないし! 近くにいるだけでおぞましい! 乳首を剃刀で剃りたい気分!」
「やめてください! 言葉で聞くだけでゾッとするのでやめて!」
町には同じ学校の制服を着た生徒がチラホラと窺える。もちろん全員男の娘なわけだが、周りの人達は特に気にしている様子はない。酷い詐欺だ。
なるほど、いま俺は両手に花の状態なのか、男だけど。
目的地は学校の近くにあるファミレスである。
学生の人気スポットのひとつで、ドリンクバーだけで何時間も耐久出来るのは素晴らしい点よね。店員さんは迷惑だろうけど。
「たしかお店の前で待っているみたいだから、行けばわかると思うよ」
お店が遠目から見える場所まで来ると、女の子が一人いるのが視認できる。
「あ、いたいた! おーい、しのっちー!」
そこにいたのは俺のよく知る女の子、四宮恵里だった
☆
「へー、しのっちってカナタの元カノさんなんだ」
「彼方君って両刀だったんだ」
「断じて違います」
別に隠すようなことでもないので正直に答える。
俺たちはドリンクを片手にゲームに興じるのだが、どうやら二人は俺と四宮の関係のほうに興味があるようでゲームそっちのけで問い詰めてくる。
「どうせカナタが不甲斐ないから振られたんでしょ」
「なんでわかるの? エスパーかよ、お前」
「甲斐なさそうだもんね」
「そういうかえでっちはカナタに振られたくせにー」
「う、うっさい! 彼方君の鼓膜破るぞ!」
「おい、なんで俺に矢が飛んでくるの? 理不尽すぎませんか?」
「私のことなんか忘れて、かわいい子をはべらせてるなんて嫉妬しちゃうな」
「いや……こいつらは……」
四宮は勘違いしている、こいつらは男の娘なんです。
そう思っていたが四宮は思いもよらぬ事を口にする。
「知ってるよ、リージアは女装した男の娘なんだよね?」
「お、おう。知ってたのか。つうか疑問とかないの?」
「うーん、確かに最初聞いたときは驚いたし信じられなかったけど、最近増えてるみたいだからね、男の娘」
そうだね、主にうちの学校で増えているね。
「そっちの小野寺さんも、もしかして男の娘?」
「うん、よろしくね四宮さん」
楓が友好的に対応すると四宮もそれに応えるように微笑む。その笑みを少しは俺にも分けていただけないだろうか。
なんだか最近は男の娘が日常化していて違和感が無くなってしまった。こうして 四宮のような一般人にも浸透しているとは、いよいよ日本も終了かもしれん。
いや、四宮の順応性が高いだけか。
「俺としてはリージアと四宮が知り合いということにビックリしてる」
「バイト先が同じなんだよね、しのっちはバイト先の先輩なんだ」
「リージアはいつも元気だから、お店も活気が出るよ」
「へー、なんのバイトしてるんだ?」
「メイド喫茶だヨ」
ほう、メイド喫茶。四宮とリージアのメイド姿か……別に興味ないけど一度行ってみようかしら? いや、興味ないけどね、挨拶がてらね?
「カナタも暇だったら今度おいでよ、えっちなサービスするよ?」
「風営法に引っかかるようなことはやめましょうね……」
隣に座るリージアが詰め寄って誘惑をしてくる。ああ、何でいい匂いがするんだろう。鼻孔をくすぐる臭いに陶酔してしまいそうだ。むしろこのまま堕ちてしまいたい。
「リージアって他のバイトの子やお客さんからもすごい人気なんだよ。特に男性
のお客さんからはアイドル的存在として大好評!」
「あはは、リージアが男と知ったらお客さん泣いちゃうな」
「大丈夫、みんな知って崇拝しているから」
日本終わってたわ。
「そういえば三条さんとは仲直り出来たの?」
と楓がそんなことを聞いてくる。
「え!? 彼方クン深雪と喧嘩してるの?」
「いや、喧嘩というか、少し言い争いをしただけで……」
「それで仲直りしたの?」
「……特に何もしてないけど、あいつ、いつも通りだったから大丈夫かなーと」
俺がそう言うとみんな頭を抱え哀愁の目で見てくる。
「カナタ……あんなに意気揚々としていのに、それはないよー」
「蛆虫以下」
「良い、彼方クン? どんなに相手が悪くてもとりあえず男が頭を下げるものなんだよ」
ちょっと、その理不尽な理論の前に深雪は男だからね?
だが俺の反論の余地を与えないように、三人が責め立ててくる。
「とにかく謝らなきゃ駄目だとボクは思うヨ」
「土下座、もしくは切腹」
いや、最後の死んじゃうからね。
「深雪にも何か考えがあるんだよ。きっと……」
「彼方クンはどうしたいの?」
「……」
四宮の言った言葉が深く突き刺さる。
「俺は、あいつが幸せならそれでいいよ」
「違うよ、彼方クン自身がやりたいことだよ」
俺は何がしたいのだろう?
俺自身、今の状態は平穏だと思う。
何もしなくても問題はないだろうけど、それは目を背けているだけじゃないだろうか?
逃げているようで、負けてしまっているようで少し癪に障る。
「俺は……あいつの傍に居たい。深雪が隣で笑ってくれればそれでいいのかも……。だけど、あいつは今何かに苦しんでいて心から笑えてない気がするんだ。今まで気付かなかっただけで昔からそうだったのかもだけど、だからこそ救ってやりたい。あいつの心からの笑顔が忘れられないから」
スッと出てきた本音を一気にぶちまけてみた。
すると言葉を失ったように、一同呆然としている。
「愛の告白だっ! むきーっ!」
「わかっていたけど、やっぱりそうなんだ……」
「ああ、私は男子に負けたんだぁ……」
何やら意気投合している三人である。
「とにかく、そういうことで……どうすればいいっすかね?」
「うわあ……、台無しだー」
「打ち首決定」
「あ、今の普通にない」
おうふ、四宮さんのナチュラルな拒否は大ダメージですぞ。
何にせよ今後の方針は決定したわけで、深雪の喜びそうなことを思いついた限り提案していくことになった。
「カナタがみゆきっちを押し倒す」
「彼方君が三条さんの唇を奪う」
「彼方クンが深雪と禁断の花園へ……ぶふほっ」
碌なアドバイスがなかった。あと、四宮はなぜか頬を赤く染めている。
「もう少しまともな意見をお願いしたいのですが……」
「そもそも、深雪のこと一番知ってるのはカナタなんだから、自分でやり方を考
えるのが手っ取り早いんじゃないかな?」
「ばっか、こういうのは身近だからこそ気づけない点ってやつがあるんだろ?」
「彼方君が鈍感畜生なだけだと思うよ。いま言ったことだって、あながち間違えじゃないと思うよ。若いんだから盛りのついた行為に身を投じて一夜の過ちを犯そうよ」
この人たちは俺を貶めたいのでしょうか? あと過ちを促進するな。
「参考までに、彼方クンの深雪の喜ばし方を聞きたいな」
四宮はメロンソーダをチビチビ飲みながら聞いてくる。
「そうだな……。機嫌が悪い時はもので釣るぞ、甘い物を買ってきてやると笑顔になるんだ。それが子犬みたいですごく可愛いくて可愛くて……。あとは、たまに早起きして朝食を内緒で作ってやったりすると、自分の仕事を取られて少しむすっとするんだが、なんだかんだ喜んでくれるなあ。焦げたトーストなのにね。ごはんと言えばこの前夕飯の手伝いをした時なんて鼻歌まじりに料理してたな、ありゃ相当上機嫌だったぞ。あとは誕生日のときにだな……」
「……っ」
「はあ……」
「彼方クン、私たちいる?」
どうしたのだろう? なにやら皆不機嫌なご様子だ。楓なんかわざと音を立てながらストローでジュースを飲んでいる。あとリージアが机の下からガツガツ蹴りをかましてくる、非常に痛いのでやめていただきたい。
そうして彼女たちはそれから喋ることなく、無言でゲームを始めてしまった。俺も参加したのだが何故かパーティから蹴られた。
俺は成すすべなく、カコンとコップの氷の音だけが虚しく響くのであった。
☆
議題の結論から言えば、「自分で考えろバカナタ!」だそうだ。
気付けばあたりは暗くなり、町の町灯がチラホラと点灯しだす時刻である。
俺たちはドリンクバーとポテトだけで乗り切り、不思議な達成感を感じつつで店を出た。
「今日は誘ってくれてありがとね」
「めでたくメンハンメンバー結成だね! また今度やろうね、しのっち!」
「私たちは寮だから、ここでお別れだね」
今日はこれでお開きということで、それぞれ別れの挨拶を交わす。
俺、リージア、楓の三人は寮暮らしなので、四宮とは帰り道が違う。ここで彼女と別れても構わないのだが、流石に夜も更けているなかで女の子を一人帰すというのも後味が悪い。俺は四宮を送っていくことを提案してみる。
「大丈夫だよ、私これでも相手の秘孔を点けるんだよ!」
四宮は北斗神拳の伝承者らしいが、南斗神拳の使い手の暴漢が襲ってくるかもしれないし、ここで引いては男が廃るというものだ。
「まあ、囮ぐらいにはなるよ。そんなに気にしないで良いよ」
「ぶーぶー、ボクたちもか弱い男の娘なんですけどー」
「妖怪すけこまし……」
何やら批判を背中から浴びるのだが無視して見送る。
二人はぶつくさ言いながらも納得して帰って行った。
「家どこら辺なんだ?」
「丘の公園を超えなきゃいけないんだよね。だから無理しなくていいよ」
あの丘を往復しなければいけないと思うとげんなりする。けれども、一度言ってしまったことなのだから、ちゃんと任務は遂行しよう。
そうして歩き出すのだが、どちらも口を閉ざしてしまい静寂だけが残る。
空を見上げれば星などひとつも見えない夜空だった。まるで、今の俺たちを象徴しているかのようなほの暗い空模様。
「それで彼方クンはどうするつもりなの?」
先に口を開いたのは四宮だった。
「どうするって、何が?」
「もう、深雪のことに決まってるじゃん」
「まあ、何とかなるよ。心配しないでいいよ」
「心配するよ……。私だって関係ないわけじゃないんだから」
そういえば、深雪と四宮も少しばかしギクシャクしているようだが、実際のところどうなのだろう? この際だから聞いてしまおう。
「四宮こそ、大丈夫なのか? あれ以来、深雪と連絡取ってないんだろ?」
「まあ、うん……。何回かメールはしたんだけどね、うやむやにされちゃうんだ。私嫌われちゃったのかな?」
いつも笑顔の彼女の表情が珍しく陰っている。
「そんな事ないと思うぞ。あいつ嫌いな奴はとことん嫌うからね。もしも四宮のことが嫌いならボロクソに言われると思うよ」
「あー、確かにそうかも」
納得したように苦笑する四宮だが、安心した様子はない。
丘を登りきると町が一望できる。建物の光がキラキラと一面に散りばめられていて、宝石箱のようでとても綺麗だ。
「わあ、きれい……」
「そうだね、今頃あのビルの中では汗水たらしてやりたくもない仕事を血反吐きながら、家族との時間を減らして月々の残業時間を増やし、上限を超えてサービス残業しているのだと思うと、すごく美しい風景に思えるよ」
「あーあ、とても残酷な景色に見えてきたよ」
そんな、大切な人たちのために自分の命を削るなんてなかなか出来る事じゃないよ!
「ここまで来れば大丈夫だから、もう送ってくれなくても大丈夫だよ」
「そっか、気をつけて帰れよ」
「もう、ここは最後まで君と一緒にいるよ! てな感じで囁く場面だよ」
「いや、また丘を登りたくないからここで帰るわ」
「えー、ケチだなー」
お互い茶化し合うような形になる。なんだか半年前にタイムスリップしたようで不思議な感じだ。もしかして告白でもしたら意外といけるんじゃないだろうか。
そんな浮ついたことを考えていると目の前に四宮の顔があった。
「深雪のことお願いね」
「お、おう……。任せとけ」
フローラルの香りが鼻腔をくすぐり少し頭がくらついてしまう。
「なんだか、上手くいかないことばかりだね。どうしたら上手くいくのかな?」
憂いた表情で四宮は言う。
「素直になること……かなあ」
「それが出来たら苦労しないよ」
「まあ、そうだよね……」
誰も素直になれていない現状がこれだもんな、口だけ星人にだけはなりたくないね。
「いまからでも、素直になってみないか?」
「……今から?」
「単純だよ、自分の伝えたいことを伝えるだけ、自分のやりたいことをやるだけ。周りの目なんか気にしないで自分の欲望に忠実になる」
「うーん、恥ずかしいし、やっぱり怖いかな」
「俺もそうだよ。周りの目を気にして、自分のやりたいことを後回しにしてた。でも、最近とんでもない新任教師が来たんだ。そいつは、周りの目なんか気にしないで、自分のやりたいことをでかい声で伝えてた。それどころか、周りを自分色に染めるんだ。迷惑な話だけど、少し憧れた。あんな感じに自分の思いを伝えたくなった。わかるかな?」
「うん、わかるよ」
六道は変態だけど、それでも尊敬できる部分がある。
自分の意思を、思いを相手に伝えられる心の強さがあった。
「私ね、無意識に言いたいこと言って、周りから嫌われるんだ。だから人一倍怖い。平気な振りしてるけど、本当はすごく悲しいんだ」
声は少しずつ萎んでいく。それが彼女の本音なのだろう。
本音を聞いて、俺の中に熱が入ったかのように高揚していい気分だ。俺の周りの空気はキラキラと輝いていて、町を照らす光なんかよりもずっと綺麗だ。
思えば、俺の周りの人間は真っすぐな人ばかりだ。六道も、リージアも、楓だって、自分の気持ちを言葉にのせて歌い上げていた。それは凄く狂暴で、獰猛なのだけれど何故だかスッと俺の感情に入り込んできて、俺が今まで抑え込んでいた感情を揺さぶりかけてきたのだ!
俺の伝えたい思いはたったひとつで、それ以外に意味なんてない純粋な思いなんだ。それを伝えたという証明が欲しい。公平な世界に傷をつけたいんだ。
「嫌ならいいんだけどね、でも俺はやるよ。もう大人ぶるのはやめる。俺って学校で問題児扱いされてるからさ、クソガキらしく振る舞うよ」
「もう、そういうのズルいよ。……わかった付き合うよ」
「本当だな? いいんだな? 俺はもう後戻りする気はないぞ」
俺は四宮の瞳をしっかり見つめて確認する。
「か、彼方クン……?」
頬をピンク色に染める姿がいやらしい、じゃなくていじらしい。
「俺は言うからな、素直な気持ちをぶちまけるからな?」
「う、うん。……大丈夫、心の準備できた! かかってこいだ!」
俺は息を整える、心を落ち着かせる。ああ、この溢れんばかりの想いを伝えたら
俺は壊れてしまうかもしれない。むしろここで壊れてしまおう。
もし、四宮に拒否されても後悔しないと信じている。
「せーので叫んでみないか、あの町に向かって」
「恥ずかしいよ、なんでまたそんな事するの?」
「なんか叫びたい気分なんだ。町中の人に聞いてほしいんだ」
「…………それって愛の叫び?」
「うん、愛の叫び」
四宮は少し悩んでいるようで、何かと葛藤している表情をしている。
決意を固めたのか俺の目を見て頷く。どうやら俺の馬鹿に付き合ってくれるらしい。
「よし……、いくぞ!」
「うん……!」
町中に、いや、世界中の人達に届くように、俺たちの叫びで世界がぶっ壊れても構わない。どいつもこいつも俺たちの声を聴いた瞬間に脳の奥まで浸透してグニャグニャにとろけさせて、頭をおかしくさせてやるから耳かっぽじって聞きやがれ!
「俺は深雪が好きだあああああああああああああああああ!」
「私は彼方クンが好きいいいいいいいいいいいいいいいい!」
「「……………………え??」」
俺たちの全身全霊の叫びはお互い肩透かしを食らった。
いや、俺のこの想いは誰をも困惑させる自信あったけどね。
お互い何を言ったらいいかわからずに、ただ硬直している。
「……えーと、俺のこと好きって、マジ?」
「やっぱり彼方クンってホモだったの?」
これはひどい。なんて馬鹿なんだろう、そのくせ心はスッキリとした神聖な気持ちだ。
お互い意味が理解できずに硬直してしまっている。ついでに言えば周りにいた人達も硬直しているようだ。
「俺から説明していいかな?」
「……どうぞ」
俺の提案が受理される。
「専門家曰く、俺は男の娘しか愛せない人間らしいんだ。いやね、あまり実感とかないんだけど……それで、女装した時の……男の娘の深雪が好きなんだ。でもね、男の娘が好きといってもホモじゃないらしんだよね、専門家曰く……。」
しどろもどろに説明口調というか、言い訳がましいというか、とにかく女々しい。
「あー、そうなんだ。わーい」
なにやら四宮の脳みそがとろけているようで、まともに反応してくれない。もしかしてドン引きしたの? そんな酷いやい。
「それで、四宮は俺のこと好きなの?」
「……うん、まあ、そんな感じ」
「でも、俺、コテンパンに振られたけど」
そう、俺は半年前に四宮に振られたはずだ。それなのに彼女は俺のことを好きだと言っているのはどういうことだろう? 彼女のあられもない姿を見てゲロを吐く男が好きだなんて随分とイカれていらっしゃる。
「だって、彼方クン深雪のことばっかなんだもん。私のこと全然見てくれないし……。だからね、ムカついたから思いっきり振って少しは後悔させてやろうかなって思ったの。少しでも悲しんでくれたなら、ざまあみろって感じでさ……」
べーっと舌を出して悪戯な表情をする四宮。
俺はそんなに深雪ばっか見てたのか。自覚が無いものだから何とも言えない。随分と彼女に酷いことをしてしまったようだ。
「ごめんな、四宮の気持ちには応えられない」
「うん、彼方クンが正真正銘の変態だってわかったから良い収穫だよ」
「あ、うん、いろいろごめん。……それで、スッキリした?」
「うーん、男の娘に負けたと思うとやっぱりモヤモヤするなあ……。けど、想いは伝えられたから多少はスッキリしたかな」
そうして四宮は俺から離れていく。
「そろそろ帰ろうよ、深雪も心配しちゃうよ」
「うん、深雪のことは任せてくれ。今度はあいつを素直にしてみせるから、そしたら四宮はあいつを受け入れてくれればそれで良い」
「受け入れられなかったらどうするの?」
「四宮のこと信じてるから、大丈夫」
「はは、何それ」
今度はお互い笑い合う。
「それじゃ、深雪のことお願いね」
「おう、任せとけ」
別れを告げると彼女は丘を下っていく。
馬鹿なこと言ってしまった。だけど四宮が拒絶しなかったことに安心する。
ベンチでイチャイチャしていたカップルが俺のことを指さして笑っている。笑いたきゃ笑えばいい、俺はすごく気分がいいんだ。お前たちの嘲笑なんかで止まらないぞ。
さあ、帰ろう。そして、深雪を男の娘にするための戦いに興じようじゃないか。




