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全校生徒男の娘!?

コメディの日間ランキングに載ったのですが

よくよく考えるとこの作品、恋愛でした。なのでジャンルを変更いたしました。

コメディだと思って読んでくれた方、ブックマークしてくれた方、申し訳ないです



 あれから二週間が経ちクラスの男の娘たちとも打ち解けてきた頃合い。

 俺以外のクラスメートが全員男の娘になってしまう異常事態を経験し、ちょっとのことでは驚かないメンタルを身につけ新たに成長を遂げることが出来たと思っていたのですが、そんなタフメンタルの俺を驚愕させる出来事が起こったのです。


 

 俺はいつものように深雪と仲睦まじく登校をしていました。

 和やかなひと時、この瞬間を永遠にしたいと思える素敵な時間のことです。


 


 そんな素敵な時間の筈なのに、俺は今全校生徒の男の娘に追われていた。



 「せんぱあああああああああい!」

 「鹿河くうううううううううん!」

 「みんな見て! あれが噂の唯一の男の子、鹿河彼方くんだよ!」

 「彼方先輩! こっち向いてええええ!」



 「だれか助けてえええええええええ!」


 

 くそが! 全校生徒が男の娘になっているなんて聞いてないぞ!? 

 猛獣どもは俺の背中を捉えると、ハイエナのように群がり襲い掛かってきやがる。

 一緒に登校した深雪とも逸れてしまったがそれどころではない。今は野獣の魔の手から逃れる必要がある。


 「私と鹿河君、性春の汗を流そうよ!」

 「いいや、僕と回春の汗を流すんだよ!」

 「違うよ、あたしと売春の汗をかくの!」


 「どの汗も流したくないですからね!」


 勝手に盛り上がる不埒もの共は春真っ盛りの喧嘩を始める。これはチャンスと背中には目もくれずに俺は一心不乱に駆け抜ける。


 無駄に遠回りをして撹乱し、なんとか振り切り教室にたどり着く。難を逃れたか……


 「鹿河君おはよー、愛してるよー」

 「おっすー、彼方くんエッチしよ!」

 「鹿河くん、キスしていい?」


 教室も男の娘だらけなので安息の場はございません。


 「ああああ! とにかく離れろ、馬鹿たれ!」


 纏わりつくヒル共を振り払いようやく席に着いた。


 「ひどい目にあった……」


 「彼方、大丈夫?」

 

 ああ、深雪さん。やはりあなたは天使だ。女装したから余計に羽ばたいて見えるよ。


 「これが毎日続くとしたら、きっと過労死するね。日本の未来は暗いよ」


 「はは、大げさだよ」


 こうしている間もチラチラと視線を感じるのだ。大げさなんかじゃない……

 こうしてモテ男の立場に立ってみると、国民的アイドルってすごいね。あいつらきゃあきゃあ言われても笑顔で歌って踊るんだもの、俺も歌って踊ろうかしら。


 「うーす、ホームルーム始めんぞー」


 俺がこれからの人生に四苦八苦していると、悪の根源がしれっと登場する。


 「ちょっと先生、どうして誰も彼も女装してるんですか!? 女装するのはこのクラスだけじゃなかったんですか!?」


 「うむ、校長の熱い要望でな、このクラスの成果を考慮して、生徒全員に女装をさせてほしいとのことだ。校長も女装教育に熱心なようで、熱意を感じたよ」


 あはは、なにそのスライダー。教育はもっとストレートに攻めるべきだと思うんです。この学校にまともな人はいないのですか?


 「ああ、どんどん男が減っていく……」


 「安心しろ鹿河、先生一同も女装をするぞ。いよいよ男はお前だけだな」


 「何を安心しろと!? 落胆しかできなかったんですけど!?」


 「ここはもう男の娘の楽園だ。お前はこのハーレムの王様なんだ。胸と股間を張れ」


 終わった……この学校は男の娘の巣窟と化した。そして俺はライオンの檻に入れられた哀れなウサギなのでしょう。

 俺が絶望しているなんて素知らぬようにホームルームを始める六道。


 「さて、実は最近判明したことなのだが、お前たちに伝えなければならないことがある。」


 いつにも増して真剣な表情をする六道。いや、いつもは気味の悪い表情しかしないが。





 「喜べ諸君、男の娘は妊娠するぞ」





 一瞬の沈黙――――





 「「えええええええええええええ!」」



 クラス内は六道の発言にびっくり仰天のご様子。俺は耳を塞ぎたい思いです。



 「鹿河君の赤ちゃん……っ!」

 「彼方くん! 子供は何人欲しい?」

 「名前どうしようかな? かなたんも一緒に考えて」


 どうしてみんな明るい家族計画を目論んでいるのだろう。その前に突っ込むべきところがあるのではないでしょうか?


 「ははは、今夜は眠れないな、鹿河」



 黙れ、淫行教師。


 「どういうことですか? いくらなんでも信じがたいです」


 「どうやら過去に一件、男の娘が子を宿し出産をした事例があるらしい。まあ、詳しいことはまだわからんがね。現在も調査中の状態だよ」


 「なんですかそれ。確定の情報じゃないなら変に煽らないでくださいよ」


 「すまない、つい興奮してしまってな……研究者として失格だな」


 珍しく憂いている六道。反省という言葉を知っているとは意外だ。


 「だが、私は男の娘が妊娠すると確信している。男が妊娠する事例だってあるんだ。別におかしな話ではないだろう」


 そう言われるとそんな気がしなくもない……いや、やっぱおかしいです。


 「よし、ホームルームは終わりだ。今日も一日頑張ろうな」



 いや、学校のことについて話そうよ……


 


 ☆


 


 ようやくやってきた憩いの時間である昼休み。

 しかし、休息のための時間は、今の俺にとって地獄の一丁目と化していた。



 「ねーねー、かなたん。僕と子供作ろうよー」

 「何言ってんのさ。あたしが孕むの!」

 「鹿河くんは誰と子供作るの?」


 俺の席はクラスの男の娘たちによって包囲されていた。


 「作らないから! だいたい、どうやって子供作るか知ってるの?」


 「もー、かなたんのエッチ。決まってるでしょ、思いっきり僕の中に射せ……」


 「ごめんね! 聞いた俺が馬鹿でした! それ以上言っちゃダメだよ!」


 「ちなみに、男の娘の中には女装精子という生殖細胞があるのだが、それに精子が受精することで女装卵が生まれてだな……」


 「いらない! その説明はノーサンキュー!」


 つうかなんで六道までここにいるんだよ。


 「ええい、そこをどけ!」


 俺は男の娘ジャングルをかきわけて、なんとか脱出に成功する。

 廊下に出ると、深雪が壁に背を預けて待っていてくれた。


 「お昼はお楽しみでしたね」


 「楽しくないよ!? 何見てたのさ!?」


 「それで……どこまでやったの……?」


 「何を……?」


 「だから、その、……エッチなこと」


 「なにもされてないから、ちょっと詰問にあっただけだよ」


 「あやしいー。なんか鼻の下とか伸びてるし」


 「そりゃ、見た目は美少女なんだから、囲まれてキャッキャッされれば、誰だって浮かれるだろ。だから、俺はおかしくない。正常だ」


 「死んでくれない?」


 辛辣すぎませんかね、俺は被害者なんですよ。むしろ癒してほしいです。

 そんな俺の想いとは反し、侮蔑するような瞳で俺を糾弾する深雪。


 「あれは襲われたんだ、俺は被害者なんだよう……」


 「ふーん」


 「納得して頂けました?」


 「全然」


 「えーと……」


 大変不機嫌なご様子の深雪さんである。


 「なんとか機嫌を直していただけませんか?」


 「じゃあ、僕のお願いを聞いてくれたら許してあげる」


 「お願い? なんでしょうか?」




 「休日、僕とデートしよ」




 予想外の言葉だった。デートって変な言い回しはやめてほしい。心臓に悪い。

 了承すると深雪はあっさりと機嫌を直した。やっぱりちょろい。


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