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姉の夫しかり、私の嫁しかり。
さわやかさとか清潔感とは真逆の印象を、相手にこれでもかと与える神崎さんなのに。
そして神崎さんは、やはり一向に年をとる様子がなかった。
私は改めて考えてみた。
神崎さんとはいったいなんなのだろうか、と。
しかしそのうちに、考えることをやめてしまった。
神崎さんに対する祖母の反応、父の反応、母の反応がよみがえってきたからだ。
その子供の頃からの膨大な情報を整理すると、結論は一つしかない。
その結論とは、祖母も父も母も神崎さんがなんであるかを、全く知らなかったということだ。
後に血縁関係になった者を除けば、みんな私と同じように物心がついたときには神崎さんはすでに家にいた。
ただそれだけなのだ。
おそらく先祖代々長きにわたって神崎さんは存在しており、その正体を知るものは誰一人いないのだろう。
それから人の一生に比べればほんのわずかの時が流れて、すっかりしゃべれるようになった娘が私に聞いてきた。
「ねえねえ、神崎さんってなんなの?」
私は笑って答えた。
「神崎さんは神崎さんだよ」
と。
終