4/6
4
母は誰か客が来るたびに神崎さんを奥の部屋に閉じ込めていた。
不意の客にはたとえ相手が誰であろうとも、玄関で待たせて神崎さんを排除してから家に入れていた。
それに加えて「何も言わずに急にお友達を連れてくるな」とも言っていた。
その理由がようやくわかった。
神崎さんは家族には見えていても、他人には見えないのだ。
見つめる三人に僕は言った。
「なんてね。冗談だよ冗談」
三人の顔が緩んだ。
「なんだって」
「びっくりした」
「あんまり真剣な顔で言うもんだから、どうしようかと思った」
「いやそれにしても演技力がすごいや」
「そうそう、マジで言っているようにしか見えなかったぞ」
そりゃそうだろう。
演技ではなくて完全にマジで言っていたのだから。
時は流れて祖母は死に、姉は結婚した。
不思議なのは、姉の夫にも神崎さんが見えていたことだ。
そして姉に何か吹き込まれたのか、家に来たときにはみんなに挨拶をして、自ら会話に参加をしていたと言うのに、神崎さんに話しかけることはなかった。
ただその視線や行動から、見えていたことは明らかだった。