#9暴動の失敗
とある地方都市の郊外。ここでは尊王討幸派の者たちが集まっていた。
彼らは顔を分からなくするため、わざと暗所で灯りを点けずにいる。
「この世の中は、どう考えてもおかしい」
その中の1人が口を開いた。
「ああ、全くだ。奴らは私たちを逆賊と見なし、ここまで追われる羽目に
なった。天皇陛下の事も考えていない奴らの方が逆賊だろう」
その発言に対し、皆は「そうだそうだ」と続いて言う。
「それで、その事を指示したのは誰なんだ?」
「正確には分からないが、総理大臣や防衛相、それに警視総監などが指示
しているらしい」
その事を聞いた時、その場の全員の思い付きが一致した。
「今こそ、あの逆賊共を成敗し、天皇陛下をお守りするぞ。日時は1週間後。
できるだけ多くの兵を集めてこい」
全員がその発言に合意。そして、すぐさま彼らは解散した。
会議から1週間が経った作戦実行の日。尊王討幸派の反乱軍数名は
国家中枢機能が集中している弓削京中心部へ向かった。
反乱軍の目的は1つ。尊王討幸派を逮捕するように命じた官僚たちの始末だ。
まずは総理大臣。今、総理大臣は総理官邸の中にいる。
反乱軍はそこを目指して歩き始めた。
「よし、着いたな。では、始めるぞ」
反乱軍は総理官邸の前まで着き、先頭にいる主導者が声をかけ、
銃を手に持った。そのまま、反乱軍は勢いをつけ、官邸の扉を開いて
中に入った。総理大臣の執務室はこの廊下の奥。そこを目指して
早歩きで駆け出す。
「首相だな!貴様には死んでっ・・・!」
執務室に入った途端、銃口を向けてそう言おうとした。しかし「死んでもらう」
と言いかけた時に声が消えた。その理由は、そこに衝撃の人物がいたからだ。
「て、天皇陛下!?」
その場にいた天皇を除く誰もが驚いた。総理大臣がいないことに加え、
そこには、何故か天皇がいたからだ。
「ああ、そうだ。残念だがここに首相はいないぞ。それと・・・
その拳銃でも私は死なないぞ?」
そう言われ、主導者は拳銃を下げた。天皇が銃弾でも死なないことは
この前の事件で分かっているからだ。
「何故・・・ここに天皇陛下が?」
反乱軍の誰もが思った事だが、主導者が代表して聞いた。
「君たちがここに来ることは知っていた。なので、総理大臣にここへ
来ないように言っておいただけだ。言っておくが、あれは官僚の指示
ではなく、全ては私の指示だ。君たちは、天皇のためにやっていると
勘違いしているようだが、それは全くの間違いだ」
「そ、そんな・・・・」
その場の反乱軍は、それを聞いて一気に戦意を失った。
その後、身を明け渡した者が逮捕され、その全員の死刑が確定した。
こうして、反乱は鎮圧され、尊王討幸派は力を失った。




