#番外編1
今回から番外編です。皇族の話と言いながら、前半は弓削京の話になってしまいました。
日本皇国の最大の都市、首都でもある弓削京。神武天皇即位紀元120年に西京市からここへ遷都されて以降、長い間日本皇国の首都であるため、千年京と呼ばれてる。
弓削京は、建設されて以降、時代の流れに合わせて発展してきた都市でもある。その証拠として、中心部には高層ビルが立ち並んでいる。しかし、弓削京の北側にいる旧市街地は近代の面影を残している。
弓削京は静岡平野の大部分を占める都市であり、弓削京はどこの県にも属さない特別な都市である。
弓削京の行政の最高責任者は天皇である。
弓削京は日本皇国の中心であるため、交通の大動脈でもある。弓削京の東西を流れる東海道新幹線とそれを延伸した路線は、弓削京近くの静岡駅を起点としていて、西は鹿児島まで、東は北海道まで行くことができる。博多からは、対馬を通り朝鮮へ行くことが可能であり、北海道からは樺太へ行くことが可能である。
朝鮮からは中国へ、樺太からはロシアへ行くことができ、1つの鉄道で世界を巡ることも可能なのだ。
弓削京近くの静岡空港は、本国最大のハブ空港であり、上海、ロンドン、モスクワ、アレクサンドリア、ニューヨーク、シドニー、ブエノスアイレス、ニューデリーなどの世界各地の都市を結んでいる。
弓削京内にある清水港及び三保半島は日本皇国最大の港湾であり、この港には大量の物資が毎日運ばれてくる。清水港の面する駿河湾には、いつも大型のタンカーが往来している。
日本皇国一の大都市である弓削京だが、何故、弓削京はここまで大都市なのか。
理由は、弓削京の中心に鎮座する1つの氏族にある。その氏族とは、弓削氏。天皇を始祖とする氏族、つまり皇族である。皇族には苗字がないため、弓削という氏族名が苗字の代わりとして用いられている。
「ハァ・・・どうしたものか・・・」
椅子に腰かけため息をつくこの男、弓削文人。その姿から、情けない若いサラリーマンのように見えるが、彼は第32代皇太子。次期天皇の皇位継承の第一順位である。その血統から、神の子孫と周りに言われているが、彼自身は並のレベルであり、それにもかかわらず国の重役を任されている。自分が皇太子であることが、プレッシャーになっていることもあるだろう。
「あら、どうしたの?そんなところに座り込んで」
そこに現れたのは、文人の従兄弟である弓削霞美。年も近いため、お互いは親しい仲である。
「・・・何だ、霞美か。霞美こそ、どうしてここに?」
「天皇陛下に、文部相へ書類を渡すのを頼まれて」
「そうか・・・全く、こっちも大変だよ。天皇陛下が出席する会議で出す資料を間違えちゃって、この前も同じようなミスをしたし・・・もう散々だよ」
「そうだったの。別に気にすることはないわ。ミスは誰にでもあるわよ」
(この前も天皇陛下に同じようなこと言われたな・・・)
霞美に励まされ、文人は天皇からの励ましの言葉を思い出した。本当に、このまま皇太子をやっていけるのか、彼は心配だった。




