#7復活、内部の分裂
天皇が撃たれてすぐに青年は取り押さえられ、逮捕された。
一方そのころ、重症を負った天皇は病気に運ばれていた。しかし、
弾丸が撃ち込まれて、心臓は機能を停止している。そんな状態を現在の
医療技術で、今後生存できるように治せるわけもなく・・・・
天皇の生存は絶望的だと誰もが思った。街中では、天皇の崩御までもが
噂されている。
しかし、この天皇は普通の人間と訳が違っていた。
(あれ?なんか傷口が治って・・・それに痛みも・・・)
この時、撃たれてから5分。既に、天皇の傷口が塞がり、心臓の損傷も
なくなっていた。常識では考えられないが、能力によって完全に元通りに
なっていたのだ。
(能力、様様だな。やはり、死ぬことはないのか・・・)
そんなことを考えていたら、ついに病院に着いた。この間も、まだ天皇は
寝たふりをしている。今起きれば、面倒だからだ。
「天皇陛下、病院に着きましたからね!今すぐ手術を・・」
侍従長が、そう慌てながらに言った。別に、応答を求めているわけでもなく、
ただ安心させるためだ。
「いや、その必要はない。今すぐ帰るぞ」
「は・・・陛下、ご無事でいらしたのですか?」
突然、天皇が息を吹き返したことに侍従長はひどく驚いた。まさか、
さっきの声かけに応じるとは思っていなかったからだ。
「ああ。前にも言ったであろう。私は不死身だと」
その後、天皇はすぐに公務に移った。それも何事もなかったかのように・・・
しかし、外では何事もなかったとは済まなかった。天皇を撃ったという
計り知れない怒りが国民に募り、犯人である旧サチ王家の青年は死刑が
確定したが、それでも怒りは収まらなかった。旧サチ国の国民を意味する
「幸」という名字の人々を逆賊として迫害を始める者が現れてきたのだ。
もちろん、これは罪のない人々への虐殺となるので、警察が殺人罪として
暴動を起こした者は逮捕された。同時に、天皇が不死身であることを国民は
再認識した。
この事件に対し、国内での勢力が二分してしまった。
天皇を守るために、サチ国系名字の人々を排除しようとする「尊皇討幸派」と、
法律を重んじ、罪のない人々を救おうとする「正当派」が台頭したのだ。
これにより、国内には大きな溝ができ、天皇は頭を悩ませるようになって
しまった・・・・