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#64終戦

その内容に、ハドリアヌスはこう思った。


(講和と言っているが、これでは我が国が日本皇国の傀儡になることと同じでは

ないか・・・)


ローマ帝国が明らかに敗戦国であるため、きつい要求を突き付けてくることは

分かっていたが、ハドリアヌスが思っていたものとは少し違った。


ハドリアヌスの予想では、講和という名のもとで多額の賠償金を請求し、国家の

意地を困難にさせ、やがて国を滅ぼそうとしていると思っていたのだ。

ところが、この内容では、国の維持が難しくなったら支援してローマ帝国を

何かしらの目的で維持しようとしているのだ。

他にも、ローマ帝国の軍隊を解散して反乱を起こさないようにしているが、

代わりに日本皇国の自衛隊が防衛を行おうとしている。これも、国の維持の

ためだろう。


しかし、きつい要求も、もちろんある。第3条では、日本皇国が占領した領土、

つまりイタリア半島中部以外の全地域を割譲しなければいけないのだ。

何百年もかけ手に入れた広大な領土が、こうも簡単に奪われてはプライドが

ズタズタだ。

第6条では、ローマ帝国の国家機関に日本皇国人を登用しなければならない。

これは、日本皇国が内側から国を操作できるようにするということだ。

第8条、第9条も同じことだ。


ハドリアヌスが紙の内容を読みながら、考えを巡らせていた時、三島が、

ずっと立ちながら待っているのが辛かったのか、痺れを切らした。


「あの・・・そろそろよろしいでしょうか?」


口調こそは優しかったものの、声色は若干怒り気味だった。ハドリアヌスも、

それに気付いた。


「あ、ああ・・・すまない。つい考え込んでしまった」


ハドリアヌスは、すっかり考え込んでいたため、三島の存在を忘れていたのだ。

少し、申し訳なさを噛み締めた。


「この条約に対する返事に、期限は問いませんが、できるだけ早くに返事を

くださると嬉しいです。我々にとって良い返事を期待しています」


そう言うと、三島は頭を下げ、退出していった。


この時、ハドリアヌスの脳内では、もう返事などを決まっていた。その答えは、

条約に同意、だ。講和に同意しなければ、日本皇国が次に何をしてくるか

分からない。日本皇国の動きが何もなかったとしても、今のこの状況では、

ローマ帝国の滅亡は必然。日本皇国に従うしか、方法はないのだ。


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