#59報告
日本皇国との開戦から10日。ハドリアヌスは、朗報を待ち望んでいる。
きっと、各地で勝利が続いているに違いない。そう思い込んでいたのだ。
そんな中、文官が戦いの結果を伝えに来た。しかし、皇帝の予想は、
現実とかけ離れていた。文官が報告をした時、皇帝は耳を疑った。
「い、今・・・何と申した?」
「・・・エジプト、マウレタニア(モロッコ、アルジェリア)、ヌミディア
(アルジェリア)、アフリカ(チュニジア)、プロコンスラリス(リビア)、
キレナイカ(リビア)、アラビア、シリア、ダキア(ルーマニア)、ゲルマニア
(ベルギー)、ラエティア(スイス)、ブリタニア(イギリス)が陥落しました。
各地の部隊が全滅し、アフリカ全域、アジア、ヨーロッパの一部が占領
されました」
文官は先ほど言った内容をもう一度繰り返した。自分の聞き間違いではない
ことを確認した皇帝は、絶句した。
(まだ開戦から10日だぞ?日本皇国の領土は極東の島だけのはずなのに、
アジア方面だけならまだしも、何故アフリカやヨーロッパも陥落したのだ?
アジアには大量の軍勢を置いたはずなのに・・・どうなっているんだ?)
皇帝は、文官の報告が不思議でならなかった。まず、開戦からたった10日で
これだけの領土が陥落したこと。厳密に言うと、陥落したのは4日目で、
6日間でこのローマまで情報を届けに来たのだ。この時代では、かなり早い
方だろう。
次に、アフリカ全地域とアジア、ヨーロッパの一部が陥落したこと。
敵はアジアから来ると踏んでいたため、アジア方面に軍勢を置いたが、
そこもあっけなく陥落。更に、同時期にヨーロッパやアフリカも陥落した。
これは、日本皇国の領土が極東以外にも、ヨーロッパやアフリカにも
領土があることを物語っている。これは、皇帝などを震撼させた。
「一体、どんな兵器を使ったら、ここまで早く進軍できるのだ?」
「逃げてきた兵士の話では、大きな鉄の箱のようなものに乗って来たり、
歩兵は奇妙な筒のような武器を使ったり、鉄でできた鳥が来たりと、
未知の兵器を使っていたと話しています。しかし、逃げられた兵士が
少ないことと、戦闘のことを話せる兵士が少ないため、確証は
得られていません」
「ふむ、そうか・・・」
日本皇国の技術力なら、未知なる兵器を持っていてもおかしくはない。
しかし、現実的にあり得ない証言が多く、逃げた兵士の多くが、強烈な
ショックにより、PTSDのような症状になってしまい、証言が少ないため
確証が得られていないのだ。
ローマ帝国は、成す術もなく日本皇国の進軍を許すだけだった。




