#52接近
ローマ帝国の扱いが、サチ国とほぼ同じです。
ローマ帝国の皇帝、トラヤヌスは、文官からの報告を聞いた。
「日本皇国・・・という国の特使が来ただと?」
「はい、特使は皇帝陛下との謁見を願っておりますが・・・」
トラヤヌスは、日本皇国という国が気になっていた。文官の話によると、
中国より東にある島国らしいが、そんな遠い国がこのローマ帝国まで来た
ということが気になっていたのだ。
何の目的があるか知らないが、トラヤヌスは「追い返せ」と言った。
しかし、文官が「特使は豪華絢爛な献上品を持ってきていて、追い返すには
もったいない」と言ったので、渋々許可した。
しばらくすると、日本皇国の特使が入ってきた。
「本日は、皇帝陛下と謁見でき、誠に恐縮至極に存じます。私は、
日本皇国特派大使、三島綾乃と申します」
整ったスーツを着たこの女、三島綾乃は丁重に挨拶した。トラヤヌスは、
特使が女であることに驚いた。この男尊女卑の世の中で、女性を重役に
することはあり得ないからだ。トラヤヌスは、文化の違いを悟った。
「うむ。遠路はるばるご苦労であった。今日は何の用で参った?」
「はい。本日は、是非とも貴国と国交を結び、貿易を始めたく、ここまで
参りました」
「・・・貿易だと?」
トラヤヌスは、何故、こんな田舎の国と貿易をするのだと思ったが、
三島は構わずに続けた。
「その通りです。では、こちらをお読みください」
そう言われ、1枚の紙がトラヤヌスに手渡された。その内容は、
「1、日本皇国とローマ帝国は互いを独立国と認め、国交を結ぶこと。
2、ローマ帝国の首都に駐ロ日本大使館を置くこと。日本皇国の首都に
駐日ローマ大使館を置くこと。
3、パンテレリア島を100年日本皇国に租借すること。租借料は年間
1万アウレウスとする。
4、ローマ帝国と日本皇国は貿易をすること。交易地はパンテレリア島とする。
両国の国民の出入りはパンテレリア島に限定する。なお、ローマ帝国の
関税自主権は認めない」
その内容の中には、いくつか知らない単語があったので、トラヤヌスは
それを三島に聞いた。
「大使館とは何だ?」
「大使館とは、派遣元の国と外交をする大使が常駐する役所のことです。
大使は派遣元の国の代表となります」
「そうなのか。では、租借とは何だ?」
「租借とは、国の領土の一部を一定期間借りることです。租借すれば、
租借料を払うことが義務付けられます」
「っ!?い、1万アウレウスというのは本当なのか?」
それを聞き、トラヤヌスは、耳と目を疑った。アウレウスとは、金貨の
単位で、1アウレウスは6万3000円ほど。つまり、1万アウレウスは
6億3000万円。パンテレリア島などの何もない小島にそんな大金を
払うなんて信じられなかったのだ。
「もちろん本当です。いくらでもお支払いしますよ」
トラヤヌスが受けた衝撃は、計り知れなかった。




