#48能力と弊害
お互いが、挨拶を交わし終わった時、天皇にキリストが疑問を呈した。
「何故、私をここまで連れてきたのですか?」
「それはだな・・・お前に、いくつかの質問があるからだ」
「質問・・・ですか?」
天皇の答えに、キリストは少し戸惑った。
「ああ、そうだ。まず聞くが、お前は本当にこの前、復活したのか?」
「その通りです。天界で神と会い、お前はまだ生きるべきだと言われ、
この下界に舞い戻ってきました」
「ふむ。そうか・・・」
話が胡散臭いが、事実のようなので、信じることにした。
「次に聞くが、隊員の傷を、手をかざしただけで治したというのは本当か?」
天皇が聞いたのは、飛行機内での出来事だ。それを聞き、キリストもそのこと
を思い出した。
「もちろん、本当です。それが、神からの能力です」
「・・・なら、その能力とやらを見せてもらおうか」
そう言うと、天皇はナイフを取り寄せた。それを見て隊員は「あれが御業か。
初めて見た」などと呟いた。しかし、キリストにはそれが手品の一種にしか
見えなかった。
次の瞬間、天皇は自分の腕を切りつけ、その傷からは新鮮な血が噴き出した。
隊員は、それを見て驚いたが、証明のためだと思い、何も言わなかった。
「さあ、この傷を治してみろ」
キリストがその傷に手をかざすと、瞬く間に傷が癒えていった。
(まさか、本当にこんな能力を持っている人間が他にいたとは・・・)
天皇は、顔には出していないが、内心ではひどく驚いていた。神の能力を
持つ人間が他にいることは、日本皇国にとって脅威となる。
見過ごしてはいけない存在だ。
そんなことを考えていると、キリストは・・・
「私は、いつになったら帰れますか?弟子たちが待っています」
と言ってきた。キリストは、天皇と謁見すれば帰れると思っているのだ。
しかし、そうはいかない。
「それは無理だ。しばらく、ここに滞在してもらう」
そうきっぱりと言われ、キリストは深く落ち込んだ。この後、キリストは
処分される。
その日、キリストが帰った後、会議でキリストの処分について話し合い、
結果として処刑という選択肢になった。
翌日、弓削京郊外でキリストは絞首刑となった。




