#22海外領土
今回は日本皇国民サイドの話です。
「お父様、お母様、街が見えてきました!」
地平線に街が見えてきた時、子供が、はしゃぐようにそう言った。その都市は、同州の最大都市である。
「そうね。でも、私たちの家まではまだ結構あるわ・・・」
「まあ、このくらい大したことないさ」
大荷物を背負っているこの家族。今はインドネシアにある家まで行こうとして
いるが、彼らは日本皇国人。そう、日本皇国からの移民である。本国での生活は
金銭的にあまり余裕がなかったため、政府が補助金を出してまで進めていた
海外進出に参加したのだ。
しばらく進み、最大都市の郊外にある配給された家に着いた。その家は、高温多湿
なインドネシアに合うよう設計された木造住宅である。
「なんだか、質素な家ね・・・・」
「しょうがないだろ、本国にいても良い生活はできないんだし」
母親が少し不満を漏らしたが、すぐに父親が不満を消すように言った。
まずは、荷物を下ろしてその整理をする。今日からこの家で生活するのだから、
必要なことだ。それもひとまず終わり、父親がこう言った。
「よし、次は熱帯雨林の開墾だな」
「開墾って何ですか?」
「土地を拓いて使えるようにすることさ。草木があったら使いようがないだろ?」
そう言うと、子供を連れて家の奥まで来た。そこには鬱蒼としたジャングルが
広がっている。比較的貧しいこの家では、ジャングルを農地に転用して自給自足
するしかないのだ。
父親は斧や鎌を用意し、その鎌を子供へ渡した。
「俺は木を切り倒すから、お前は生えている草を刈ってくれ」
「分かりました!」
作業を分担して親子は無言で作業する。熱帯雨林とだけあって、作業は中々
進まない。
「お父様、疲れました・・・・」
子供がそう訴えた。額には汗がぐっしょりとついている。
「よし、じゃあこの辺で休憩とするか」
家に入ると、母親は食器や器などを食器棚にしまっていた。どうやら、1人で
荷物整理の続きをしていたようだ。父親と子供は座り込み、休もうとしたが・・・
「臨時放送です。只今、ジャワ族による皇国への反乱が起きました。当該地域の
成人男性は、今すぐ所定の場所へ集まってください」
突然、臨時放送が町内に流れた。先住民による反乱が起きたとのことだ。
父親はそれを聞き、軽く「行ってくる」と言って出ていった。
「お母様、ジャワ族って何ですか?」
「この辺の先住民よ。土地を奪われたといって、たまにこういうことがあるの」
「じゃあ、この家の土地も、元はジャワ族のものだったんですか?」
「そうだったかもね・・・」
「・・・・・・」
それを聞き、子供は黙り込んでしまった。




