#19参戦要求
黄河沖海戦と同じ頃、秦の王宮では内部が混乱していた。それは、隣国である楚に
侵攻するかどうかだ。日本皇国が攻め込み、弱体している楚に侵攻すれば、
秦の勢力拡大はできるだろうが、その占領地を盗るために日本皇国が干渉して
くるかもしれないからだ。そこで意見が分かれていたのだ。
秦の王である荘襄王は、楚には侵攻しない派だ。荘襄王は
日本皇国がどれだけ強いかを知っているからだ。しかし、勢力拡大をするように
言ってくる重臣もいる。そんな中だった・・・・
「異国からの使いだと・・・・・?」
秦の文官が「異国の使いが陛下と会わせてほしいと言っている」と告げてきたのだ。
荘襄王は「もしや・・・」と思い、通すように命じた。そして、出てきたのは・・・
「日本皇国の者だな?」
日本皇国大使の葛城が部屋に入ってきて早々、荘襄王はそう言った。その服装で、
すぐに日本皇国人だと分かったからだ。
「はい、そうです。私が日本皇国大使の葛城誠です。本日はお目にかかれ光栄です」
葛城がそう丁寧に自己紹介を済ませると、1つの紙を取り出し、それを国王に渡した。
「参戦要求・・・・だと?」
国王はそれを目にするや否や、驚くようにそう言った。そこには、日本皇国は秦に
燕、斉、楚に対しての参戦要求を願うと書いてあったのだ。
「はい、我が国は燕、斉、楚との戦が難航していまして、是非とも貴国に我が国との
共闘をしていただきたいと存じ上げます。もちろん、食料や武器は我が国が最大限、
保証しますし、燕、斉、楚に勝った暁にはその地を全て差し上げます」
葛城はそう淡々と説明したが、最後にとんでもないことを言っていた。それは、
燕、斉、楚の土地を全て差し出すと言ったのだ。それには国王も・・・・
「全て・・・・・だと?」
「はい、全てです」
国王が聞くと、葛城はきっぱりそう言った。これには国王も疑問を抱くしかなかった。
(何故占領地を全てやるなんて言うんだ?そんなことしても日本皇国には何の得も
ないだろう・・・)
国王は、日本皇国が何か企んでいるのかとも思ったが、その企みすら予測は
出来なかった。
「分かった。我が秦は貴国と同盟を組み、参戦を引き受けよう」
国王は考えた末、了承した。あんな広大な土地を手に入れれば、中国統一も夢
じゃないからだ。
「ありがとうございます。早速、本国に伝えます」
葛城はそう言うと王宮から出ていった。