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第8話 ずっと昔の話

 とてもとても大昔、世界には七柱の神様がいました。

 その時、世界には七柱の神様以外、虚無しかありませんでした。

 寂しかった七柱の神様たちは協力して、大地と海と空を作りました。

 しばらくすると、世界には木々が生い茂り、ケモノたちが生まれ出しました。

 次に七柱の神様は、自らの血を垂らし、沢山の神人族を作りました。

 神人族は全治全能であり、完璧な生命でした。

 ケモノや木々を食べることはなく、眠る必要もありませんでした。

 争いは起きず、誰もが平等であり、平和な世界がしばらく続きました。

 しかし、完璧であったが故に、

 神人族は定命である自分達の未来に絶望してしまいました。

 その多くが無気力になってしまい、子孫も残さず死んでいってしまいました。

 困った神様達は、次は不純物を取り入れた不完全な命を作ることにしました。

 木と花に血を混ぜて、華人族を。

 土と石に血を混ぜて、鉄人族を。

 ケモノの爪と皮に血を混ぜて、獣人族を。

 虚無に血を混ぜて、人族を。

 四つの種族は無知で不完全な種族でした。

 ケモノを殺して食べ、木々に食らいつき、よく眠ります。

 同族同士ですらしょっちゅう喧嘩をして、その数がよく変わります。

 しかし、無知故絶望知らずの逞しい生命でした。

 神様達は自らの腕を切り落とし、

 四種族が滅びないよう見張り番として、七匹の龍を最後に作りました。

 四つの種族が仲良くしたり喧嘩したりを繰り返し、それを七龍が見守り、

 またそれを神様が見守るといった構図が、しばらく続きました。

 ですが、異変が起きました。

 世界の外から、星に乗って魔王がやって来たのです。

 魔王は自分の命令を聞く魔物を作り出し、四種族へ戦争を仕掛けました。

 魔物の軍団を率いる魔王軍は強大でした。

 四種族が力を合わせても、魔王軍には敵わず、その数を減らしていきます。

 長い戦いの中で、四種族は知恵を絞り、戦う術を考えました。

 華人族は、術式を用いた『魔法』を。

 鉄人族は、鉱石を精錬した『磨剣』を。

 獣人族は、肉体を最大限に活用する『摩気』を。

 人族は、その三つを更に改良して強力にしました。

 四種族は、新しい力を武器に、魔王軍と戦いました。

 熾烈を、極めた戦いの中、四種族は遂に魔王を倒したのです。




 喜びも束の間、倒したはずの魔王は、すぐに復活し、また戦争を始めました。

 何度倒しても、魔王はすぐに復活してしまうのです。

 なぜなら魔王は、『不滅の怪物』だったのです。

 四種族がいくら倒しても、復活してしまうのです。

 何度も復活する魔王に四種族は、次々に倒れて行きます。

 四種族の滅びの危機を止めたのは、七龍でした。

 七龍達は傷ついていく四種族を見過ごせず、神が課した見張り番の役目を捨て、

 守護者として四種族へ味方しました。

 神々も七龍を咎めず、

 直接手を出せない自分達に代わって、異界の七人の勇者を世界に使わせました。

 勇者達は最初、そんなに強くはありませんでした。

 精々、半人前の戦士程度です。

 ですが、勇者達は知恵を絞り、世界の法則を紐解き、

 『パーソナルシステム』の開示に成功しました。

 勇者達は『パーソナルシステム』をヒト達に広め、自身と仲間を強くしました。

 強くなった勇者、四種族、七龍、神人族の生き残りをも味方につけ、

 ついに、最後の戦いが始まります。

 戦いはとてもとても、激しいものでした。

 魔王は勇者にしか滅ぼせません。

 ですが、魔王は地を埋め尽くさんばかりの魔物の大群の、最奥に隠れています。

 だから、魔王へ勇者達を送り届けるため、

 五種族と七龍の連合軍は我が身を犠牲にして血路を切り開きます。

 魔王もただ静観していたわけではなく、ケモノを狂わす『呪い』を、

 世界中に撒き散らしました。

 『呪い』はただケモノ達を凶暴化させ、更にはケモノを根源に持つ、

 獣人族の英雄達をも狂わせました。

 感染した獣人族は敵味方の見境なく殺し尽くす狂戦士として、理性を失います。

 内憂外患の連合軍は瓦解寸前。

 それでも、『パーソナルシステム』を用いた『呪い』の判別法などを駆使し、

 多くの犠牲を出しながら、連合軍は勇者を魔王の元へ送り出すことに成功しました。

 七人の勇者は、死力を奮って魔王に挑みました。

 勇者と魔王の戦いは、十日十晩続きました。

 空を裂き、海を割り、大地を砕く、攻防が繰り広げられ、

 遂に魔王は、打倒されたのです。

 帰ってきた勇者は、三人だけでした。




 戦いの被害は甚大でした。

 七龍は全てが死亡。五種族は多くの国や人を失いました。

 特に獣人族は、魔王の死後も『呪い』に苦しみました。

 大地は荒れ果て、家を建てるにも、作物を育てるにも、

 凶暴化したケモノが力なき人々を襲います。

 生き残った勇者の一人が、状況を解決するため、魔物に目をつけました。

 魔物達は魔王死後は、その全てが活動を停止していました。

 魔物は、ヒトを殲滅するため、知性はありましたが、感情がありませんでした。

 魔王からの命令がなければ、まったく動かないのです。

 勇者は魔物達に『心』を与え、『自我』を芽生えさせました。

 その上で勇者は、魔物達に大地に生きるヒトとして生き、

 同じ同胞たちを助けてくれないかと、頼みました。

 魔物達の多くは自分達のやってきた事を深く後悔し、

 自身に人々に仕え、奉仕する役目を課しました。

 以降、魔物達は魔人族と名を改め、世界の復興に尽力しました。

 また、神も残った腕を切り落とし、新たな七龍を作りました。

 今度は、見張り番でも守護者でもなく、世界に生きる生命として。

 新たな七龍は、ヒトと交わり、龍人族を生み出しました。

 七龍と龍人族は世界中を巡り、枯れた大地に自身の生命を根付かせ、

 傷ついた大地を癒していきました。

 少しずつ、長い時間をかけてヒトと世界は蘇っていきました。

 復興が軌道に乗った頃、いつの間にか、勇者達は姿を消していました。

 帰還したのか、亡くなったのか、どこかに隠棲したのか、

 誰にもわかりませんでした。

 神々も、生命達の成長を見届けると、どこかへ去って行きました。

 残された者たちは、時に争い時に協力して、自分達の足で歩みだします。


 こうして、七種族と七匹の龍が住まう世界、アイリディアは生まれたのです。


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