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プロローグ
赤々と燃える炎は、生き物の伸ばす触手のように不規則な動きを繰り返している。
その中に、時折、淡い水色の炎が混じる。顔をそむけたくなるような異臭が、燃え盛る建物のあちこちから漂ってくる。革靴の踏む大地は黒い煤に覆われ、未だプスプスとくすぶり続けていた。
廃墟と化した村の中を、騎士たちが忙しそうに探しまわっている。
村人、いや、少し前まで人だったもの、サナギ状に丸くなったその「もの」を完全に回収するまで、彼らの仕事は終わらない。
建物のほとんどは燃え尽きて、黒い煙が幾筋も、秋晴れの青空へと昇っていく。
今まさに崩れ落ちようとしている村の教会の前で、黒衣の騎士はその煙を天まで辿った。
「分かった。すぐに行く」
伝令の部下に返事を返して、黒衣の騎士は、再び馬の背にまたがった。
ドレイファスの宝石シリーズの前日譚にあたる、重要なエピソードです。
ナシエラで起こる出来事が、過去と未来をつなぐ重要な事件であることを、この先のシリーズで是非体感してください。