舞踏と鍛冶師さん
はじめまして、拙い文章ですが、見てくれた方は評価、感想、意見等々、宜しくお願いします。
「ちょっと鍛冶師さん、いいですか?」
ギルド【銃使いの城】の鍛冶場にて、鍛冶師さんを見つける。
「おや、舞踏じゃないか? どうしたんだい?」
運がいいことに、今日はご機嫌が良いらしい。幸先がよろしいことである。
「今、何をしているのでしょうか?」
鍛冶師さんは怒ると怖い方なので、怒らせないように敬語で喋るのが吉だ。
「ん、見て分からないのかい? 武器の強化中だよ。と言ってもこの仕事はもうそろそろ終わる頃合いだがな」
一瞬、俺に目を配らせるとまた鍛冶に戻る。いつもの事である。
「一つ質問して宜しいでしょうか?」
駄目と言われたら引き下がるしかないのがこのギルドのヒエラルキーを物語っているのかもしれない。
「構わんよ」
どうやら、本当に今日は機嫌がよろしいらしい。手も止めてこっちを向いてくれるとは。あぁ違う、終わったのか。まぁいいや次の仕事に取り掛かられる前に本題を繰り出そう。
「一週間ほど前に、俺がお願いした武器の強化依頼どうなりました」
「どうなったもなにも、舞踏から頂いたマテリアルの純度が低くて使い物にならなかったからな。やってないな」
……そんなはずはないのだが、アレは今開放されている中でも最大の迷宮の60階層で手に入れた物だから純度的には間違いがないはず。鑑定士にも見てもらったし。
「えっ? で、そのマテリアルは」
「ほら、こん中だよ。お前がもし純度低かったら使って……あー、わかった。私としたことがしてやられたようだ」
今、強化が終えたばかりの銃のトリガーに指を入れてくるくる回して見せる、鍛冶師さん。そして、ちょっと演技かかったかのように『あっちゃー』と言うポーズを取る。
「と、いうと?」
「まぁ、奇術師の仕業だろうな」
「あんにゃろーか」
あの野郎、今度あったらトレインの計に処す。(良い子は真似しないで下さい。BANされます)
「まぁ、今の話で大体分かったと思うのだが――」
「――いえ、わかりませんけど」
「そうか。……そうだな。まず舞踏、お前が来た後だ。あの時私は作業が重なっていてお前の方を見ず、『忙しいからそこに置いといてくれ』と言ったよな」
はい、覚えておりません。
「そうですね、確かそうだった気がします」
「その後なんだが、もう一度お前が戻ってきたんだ」
「えっ? 戻ってきてませんよ」
「そうだな、私はてっきりお前が戻ってきたものだと思って、作業に没頭していた。案の定、お前の声が聞こえた。いやぁ流石奇術師だな。関心するよ」
あー奇術師の野郎、そういえば声帯模写とかあったとか言ってたな。アレにスキル振り分けるとか最早ロマン枠すぎるだろ。
「関心しないでください。で、結局どうなってるんですか?」
「あぁ、お前の声が聞こえたんだ。『すみません、伝え忘れました。もし、マテリアルの純度が低かった場合、他の人の装備に回して頂いて構いません』ってな。振り返るのもめんどくさかった私は二つ返事で返しておいたよ」
「それって……」
「それが、これだ」
そう言って、2つの武器を見せる。一つはサイレンサーが付いた小型魔道銃、一つは先ほど指でくるくる回していた、魔道銃だ。
「ちなみにその武器は?」
「これは、影歩者と戦乙女のだな」
「奇術師のじゃないんですか?」
「じゃないな」
「じゃあ、奇術師の目的は?」
「お前が持ってきた、本物のマテリアルの方だろうな」
「ちなみに奇術師は?」
「私が知るわけ無いだろう? 自分で探してくれ。私は今日中に三件仕事を終わらせなければならないからな」
「あっはい」
よし、今日の俺の仕事は奇術師をぼこる、だな。