魔理沙の推理
「凄い音だな……」
私は法堂から脱出し、再び命蓮寺境内を歩いている。あんな殺戮空間にいたら私の命がいくつあっても足りないぜ……
戦闘が始まってから、法堂からは凄まじい音が境内中に響きわたっている。
「とりあえず、白蓮のことは霊夢に任せておいて大丈夫だろ。あいつには悪いが私は私で動かさせてもらうぜ」
私があの場から離れた理由はただ一つ。やっぱり、どうしても今回の異変が命蓮寺だけで起こしているとは思えないからだ。多分関係はしているんだろうけど、今回の犯人は白蓮じゃないような気がするんだよな。
「おや。ここになにか用ですか、人間」
「いや、お前も今は人間だろ。そんなことはいいか。特に要はないんだけどな。そこ、入らせてもらってもいいか?」
私が向かった場所は仏殿。扉の前には星が立っていた。
「それは不可能です。といったら?」
「無理矢理でも通らせてもらうさ」
私は戦闘態勢に入る。
「随分と感がよろしいんですね。そういうのは紅白の巫女の方が得意だと思っていたのですが、思い違いのようでした」
「まあ、霊夢はな……」
こういう推理じみたものは、いつもあいつの仕事なんだけど、今回に限っては逆になってしまった。今、あいつの頭の中は命蓮寺を潰すことしか頭になかったからな……あいつ……
そんなことを星に言えるはずもないけどな。
「それにしても、よくここだとわかりましたね。参考に理由を聞いてもいいでしょうか?」
私は警戒はしながら、一時戦闘態勢を解く。
「そりゃ簡単だぜ。初めは攻撃的だったのが一転、霊夢が門を壊したと思うと静かになったのがひとつ。どこか壊されたらまずい場所があるということはすぐにわかったぜ」
ま、普通に考えりゃ、建物を壊されたい人なんていないだろうけどな。
「ですが、それではここだという目星はつかない筈です」
星の敵意が少しずつ強くなってきているのがわかる。
「ああ。もうひとつは、さっき法堂に案内するときにお前が遠回りをしたことだ。最初はなんかの時間稼ぎかと思ったんだけど、白蓮の様子を見るにそんなんじゃなかった。ということは、私達を近付けたくない場所を避けて通ったということになるだろ?」
「なるほど。ということは、私の失態ですね。すみません、聖。責任は毘沙門天としてきっちり取らせていただきます」
星は戦闘態勢に入った。こっちも穏やかじゃないな。
「ま、分かりわすくていいけどな! 私も最初から本気モード——って、マジかよ!?」
星に容赦という文字はないらしく、私が戦闘態勢を取りなおす前にレーザーを発射してきた。
「ちっ! セリフくらい言わせてくれてもいいじゃないか!」
私は箒に跨り、空に飛び上がる。
「あなたの都合なんて知りません。あなたにはここでやられてもらいます」
星は私に続き、空中にやってくる。
「それはこっちのセリフだぜ。さっさとやられてくれると助かるんだけどな——うわっ!?」
さらに無数のレーザーが私をめがけて飛んでくる。
「無駄口を叩いている暇があったら反撃をしてきてはいかがですか?」
「くそぉ。後悔しても知らないからな!」
星の放ったレーザーは複雑な動きをしながら私に飛んでくる。
相殺するしかないか……
「このぉっ!!」
私は足に装着していたマジックアイテム茸缶を投げ出す。
魔符『スターダストレヴァリエ』
無数の光線をレーザーに直撃させる。相殺した瞬間、爆発音と共に煙があたりを包み込む。
「これで終わりだぁァアッ!!」
彗星『ブレイジングスター 』
私は箒に跨り、最高速度で毘沙門天に向かって突っこんだ。