ツケの回収にあがりました
「やっと追いついたぜ。で、なんで命蓮寺なんだよ?」
どうにか命蓮寺前に到着。霊夢は寺門の前に立っていた。
「やっと来たのね。考えて見なさいよ、妖怪と人間の平等を望み、それ相応の魔力を持つ者。そして、最近封印が解かれた人物。それに当てはまるのは、一人しかいないわ」
「聖……白蓮……」
私は呟くように言った。
「待て待て、ちょっと待て。いくらなんでもあいつがそんなこと……」
しないとは言い切れないが……
「そんなの関係ないわ。今日こそ今まで奪われ続けた信仰を返してもらおうじゃない」
あー……それが本音なのな……
「それ、ただの八つ当たりだろ!? 白蓮が犯人じゃなかったら最悪だぞ、お前」
ていうか、奪われる信仰なんてもの最初から存在しないだろ……
「知らないわよ、そんなの。ほら、手厚いお出迎えが来たわよ」
命蓮寺の門が開いたと思うと、そこにはナズーリンが立っていた。だが、いつもと違って耳はないようだ。こいつにも術がかかっているということらしい。
「この命蓮寺に何かようか?」
ナズーリンは平静を装っているが、既に戦闘態勢に入っている。
「なんの用も何も、今こっちは迷惑してるのよ。とりあえず、あんたんとこの僧侶をだしなさい」
霊夢はナズーリンに大幣を向ける。
「それは不可能だ。早々にお取引願おうか」
ナズーリンは何処からともなく、2本のロッドを取り出した。
「手荒な歓迎ね。お寺ってそういう所だったかしら? 少なくとも、私の神社ならおもてなしはするわよ?」
相変わらず根に持ってるのか……私は霊夢に気づかれないように呆れた目を霊夢に向けた。
「こちらは、招かれざる客をもてなすほど暇じゃないんだ」
「ということはやっぱり当たり、ということよね。ここはまかり通らせてもらうわよ!」
霊夢は懐から陰陽玉を取り出した。おいおい、最初から本気モードかよ……
それを宙に浮かせたと思ったら、右手の平をそれの後ろにつける。
「おーい、そこのネズミー。逃げた方がいいぞー」
一応忠告はしといたからな。しかし、ナズーリン本人は何がなんだかわからないという表情をしている。
「それじゃあ、さようなら」
陰陽玉は凄まじい勢いで回転をはじめ、次第に巨大化していく。
霊夢は無慈悲な表情でそれを放った。それは、弾丸より速く、そこらの ミサイルよりも威力が高い球。そんなものをよけられるはずもなく、ナズーリンは寺の門と一緒に吹き飛んでしまった。
陰陽玉をモロにくらったナズーリンは地面で伸びている。 宝具:『陰陽鬼神玉』の一本だ。
「あーあ。派手にやったな、お前。弁償させられても知らんからな」
「ふん。退かないあいつが悪いのよ。私に責任はないわ」
博麗の巫女は悪びれる様子もない。巫女としてあるべき姿じゃないよな……
私はそう思いながら、伸びているナズーリンを横目に、霊夢の後ろをついて行った。
「で、仮に白蓮が犯人だったとして、お前はどうするつもりなんだよ?」
「仮にも何も、あいつが犯人としか考えられないでしょ? それとも、他に犯人候補がいるの?」
壊れた門を通り抜け、私達は境内を歩きながら、そんな会話を繰り広げていた。
「いや、いないけどさ。なんか引っかかるんだよな。あの紫がこんな簡単なヒントを出すと思うか?」
「それは、私も考えたわ。あいつのことだから絶対に裏があるのはまず間違いないわ。だけど、万が一ということもあるでしょ? 現に、この寺は私達に入ってきて欲しくなかったみたいだしね」
それもそうか。あのネズミは私達を排除しようとした。ということは、なんらかの情報がここにはあるということだ。
「とりあえず、白蓮本人に聞くしかないってことだな——って、どうしたんだ?」
私は前を歩く霊夢の背中に顔をぶつけた。
「毘沙門天か。あんたの方は偉く静かじゃない。ちょうど、あんたの部下に迷惑をかけられたところよ」
霊夢の陰から前を覗き見る。そこに立っていたのは、寅丸星。この命蓮寺の毘沙門天代理だ。
「それに関しては非礼を詫びます。こちらとしても、これ以上寺を破壊されては困りますので、現在はお二人には手を出さないように皆に言ってあります。どうぞこちらへ」
そういって、星は私達に背を向けた。
「罠……か?」
「さあね。まあいいわ。ついていきましょう。罠だったらその時よ」
私達は警戒を怠らず、星の後ろをついていった。