【過去編】弟子入り
次の日。
「ん……朝?」
私はベッドに、私を泊めてくれた人は床の布団に寝て、一夜を過ごした。
昨日の夜は何も教わらず、今日から魔法について教わることになっている。昨日はなかなか寝付けなかったのだけど、気がついたら眠ってしまっていたようだった。
「お姉さん、朝だよ?」
私はまだ布団の中で寝ているそいつに話しかける。
「ううん……朝? それならまだ寝る時間じゃない……」
そいつは布団にくるまった。
「いや、朝だよっ!?」
私はそいつが何を言っているのかがわからなかった。
「分かってるわよ。私は悪霊よ? 朝は弱いの……」
悪霊は頭だけを布団から出して、目をこする。やはり、悪霊は光に弱いのだろうか? どこかだるそうに見える。
「えー……朝ごはんは?」
「朝ごはんならリビングのテーブルの上に作っておいてあるわ。それでも食べなさい」
そう言うと、そいつは布団にもぐりこんだ。
リビングに行くと、 朝食は白パンときのこスープが机の上にあった。私はぺろりと平らげる。
「ごちそうさまっ!」
食器を下げようと思ったのだけど、流しがない。私は仕方なく食器をそのままにして部屋に戻った。
「あら、早かったわね。それじゃあ、授業を始めましょうか」
部屋に戻ると、布団は片付けられ、代わりに本が山積みにされていた。
「え……授業……?」
なんでこんなところまで来て人里の真似事をするのかが分からなかった。
「貴方ねぇ……何も教わらないで魔法が使えるようになるわけないでしょう? 魔法っていうのはいわば知識よ。知らないものを使えるわけ無いの」
そいつは大きなため息をついた。
「はぁい……よろしく、おねぇさん」
私は力なく返事をした。授業を受けないと魔法が使えない。それなら、受ける他ないというのは幼い私にもわかった。
「昨日からやけに他人行儀だと思ったけれど、自己紹介がまだだったのね。私は魅魔。呼び方は好きにするといいわ」
魅魔と名乗った悪霊は思い出したかのように自己紹介をした。
「じゃあ、魅魔先生」
「それはやめて。私は先生ってタチじゃないんだから。それに、先生キャラをとってしまったら、可哀想でしょう?」
なんでもいいって言ったじゃん……それに、なんのことを言っているのか理解ができなかった。
「じゃあ、魅魔様……?」
「いいわね、それ。何か偉大に感じるわ」
魅魔様はどこか満足気だった。
「それじゃあ、はじめるわよ。でもその前に、ひとつだけ聞いておくわ。貴方はどんな魔法を使いたいの?」
「魅魔様と同じ魔法が使いたいっ!」
私は心に焼き付いたあの映像を思い出した。あんな綺麗な魔法を私も使いたかった。
「ということは、熱と光ね。教えやすいに越したことはないわね。はい、まずはこれを読みなさい」
魅魔様から厚い本を受け取る。私は腕いっぱいにそれを抱く。
「こんなに覚えられないよ……」
「覚えなくていいわよ。それはどうせ魔法を使いだせば理解することよ。でも、空っぽのままじゃ、理解することもできない。だから、それを適当に読んできなさい。今日の授業はこれまでよ」
「えっ!? もう終わりなの?」
なんて言うかあっけなさすぎる。
「ええ。今日の授業は、ね。明日また来なさい。保護者がお迎えに来ているわよ」
「保護者?」
私が首を傾げると、魅魔様は窓の方を指さした。
「こーりん?」
窓の外には霖之助が抱く立っていた。
「やあ、魔理沙。元気にしてたかい?」
霖之助はこちらが気付いたのに気付くと軽く手を振った。
「あら、私には挨拶なしなのかしら?」
「これは失礼。おはよう、魅魔。この時間に起きてたのかい?」
「ええ。弟子に叩き起されたわ」
そういうと、魅魔様はちらりと私を見た。
「そうかい。それじゃあ……」
霖之助はにやりと笑った。
「ええ。仕方なく、ね。任されてあげるわよ」
魅魔様は静かに胸を叩いた。




