【過去編】出会い
まだ私が幼かった頃、父親と喧嘩もなく、普通の少女として普通の服を着ていた頃、私は霖之助に連れられてよく博麗神社に遊びに行っていた。なんで、神社に通いだしたかはよく覚えていない。
「ねえ、霊夢。今日は何して遊ぶ?」
雨が降っていないとき、私たちは外でよく遊んでいた。その間、霖之助と先代の博麗の巫女は社でお茶を飲みながら私たちを眺めているのがいつもの風景だった。この時から博麗神社は参拝客が少なかったような気がする。
「今日はコレ!」
霊夢はドヤ顔で空き缶を見せつけてきた。
「それで何をするの?」
「ふっふっふ、缶蹴りよ!」
霊夢は胸を張って説明する。
「缶蹴りは二人じゃできないよ……?」
「そんなのカンケーないよ! 魔理沙が鬼ね! そりゃぁぁぁあああっ!!」
私の意見など聞きもせず、霊夢はこれでもかというほど思いっきり缶を蹴飛ばした。
「ちょっ!? ええっ!?」
飛んでいった缶を見送って振り返ってみると、そこに霊夢の姿はなかった。
「本当にやるんだ……」
私は疑問に思いながら、缶を探すハメになった。缶が飛んでいったのは魔法の森の入り口付近だ。普段は危険だから近づくな、とは言われていたが缶を持って帰らないと霊夢がうるさいだろうから、仕方なく足を踏み入れることにした。
「……あんた誰?」
森の中にそいつは座っていた。木を背もたれに一人孤独にシャボン玉を吹いていた。
「ただの悪霊よ。ほら、あなたの探し物はそれじゃないの?」
そいつは近くにあった缶を指さした。
「悪霊っ!?」
私はとっさに身構えた。悪霊なんて何をされるかわからなかったからだ。
「うわぁ、傷つくわね。子供にまでそんな反応をされるなんて……」
そいつは明らかにしょぼくれていた。
「あ、あの……」
私は恐る恐るそいつに話しかけた。
「まだ居たのね。どうしたの? 早くいかないと食べちゃうわよ?」
「えっ!?」
私は急に震えが起こった。正直失禁までしそうになった。
「冗談よ、冗談。私は人は食べないわ。魂までは保障しないけどね」
そいつは苦笑した。それが冗談なのは幼い私にもなんとなくわかった。
「魔理沙ちゃん、そいつから離れなさい」
急に後ろから声がかかった。声の主は先代の博麗の巫女だった。
「あらあら、巫女様じゃない。久しぶりね。こんなところに何の用かしら?」
「ええ、私の娘の友人にちょっかいをかけているようだから退治しにきてあげたのよ。ほら、霊夢と一緒に先に帰ってなさい」
先代の巫女は後方にいる霊夢のほうに目をやる。私は無言でうなずいて後ろに下がった。
「私は戦うつもりゼロなんだけど?」
「まあいいじゃない。最近訛ってんのよ。久しぶりにちょっとくらい付き合いなさいよ」
そんな会話を聞きながら私たちは魔法の森を出ていった。あの二人は実は仲が良かったんじゃないかと今になって思う。
「かーちゃん、大丈夫かな……」
神社に帰って一時間ほどたって、霊夢が先代巫女のことを心配し始めた。
「うーん、その悪霊っていうのには心当たりがある。きっと大丈夫だよ」
霖之助は霊夢をなだめる。
「そ、なんたってかーちゃんなんだから」
そんなときバンッ、と部屋の扉があいた。
「かーちゃん、おかえりっ!!」
霊夢は先代巫女を見るなり、先代巫女に飛び込んでいった。
「ただいま。心配させちゃって悪かったわね」
先代巫女は霊夢の頭をなでる。
「君はもうちょっと静かに登場できないのかい?」
「いいじゃない。それより悪かったわね、霊夢たち押し付けちゃって」
「それは問題ないよ。で、どうだったんだい?」
「ボロ負けよ。まったく、あいつは手加減というものを知らないんだから」
先代巫女はそうはいっているが、外見の変化は何らない。埃の一つすらついていなかった。いったい何の勝負をしてきたのだろう……?
「それじゃあ、魔理沙。僕たちはそろそろ帰ろうか」
「はーい」
私たちは遅くならないうちに人里にある霧雨店に帰った。帰り道に例の悪霊について霖之助に聞いてみたら、悪霊のくせに悪霊っぽくない奴とだけ返ってきた。結局どんな奴なんだよ……とは思ったけど、あえて突っ込まないことにした。




