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東方永絆録  作者: Alice
二章:黒白少女
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なくしたモノ

「あら、魔理沙。こんなひょんなところにどうしたのかしら?」


 散々白玉楼の中を探した挙句、見つけたそいつは縁側に座っていた。隣には誰もいない。


「なんだ、一人か?」


 床に置いてある湯呑は二つ。誰かいた形跡がある。多分片方は幽々子のものだろう。


「ええ。幽々子は少し席を外しているわ。それで、どうしたの?」


 紫はお茶を啜る。


「分かってるんじゃないのか? 私はなくしたモノを取り返しに来たんだ」

「なくしたもの? そういえば貴方、箒を持っていないわね」


 紫は私を舐めるように見たあとにそう言った。


「そうじゃない。いや、それもなくしたんだけど、今は箒じゃないものを取り返しに来た」

「へえ、なにかしらそれは?」

「私の記憶。魅魔っていう人物についての記憶だ。お前が持ってるんじゃないのか?」


 それを聞いた途端、紫の表情が少しだけ変わった。こいつが犯人じゃないにしろ、何かを知っている証だ。


「面白いことをいうわね。私が貴方の記憶を持っていると? その根拠は?」

「んなもんあるか。強いて言うなら、お前だからだ」

「貴方、結構無茶苦茶言っているってわかってる?」


 そんなもの自分だって分かってる。だけど、これといった証拠がない。


「知るか! とりあえず、私の記憶を返しやがれ!」

「全く厄介ね。もし私が貴方の記憶を持っていたとして、はいそうですかって返すと思っているの?」


 紫はため息をついた。


「いいや、全く思っていない。人からものを奪う。それが私の専売特許だぜ」


 私は懐からミニ八卦炉を取り出し、紫に向ける。


「今は貴方と遊ぶ気分じゃないわ。去りなさい」

「なっ!? なら無理矢理にでも取り返すのみだ――っ!?」


 隙間を使って、紫は私の首を絞めてきた。


「去れと言ったのよ。聞こえなかったの?」


 紫の目はどこか狂気に満ちていた


「ぐ……嫌だ……私は……絶対に諦めない」


 どうにか言葉にする。紫は本気だ。


 くそ……意識が遠のいていく……


「返してあげなさい。紫」


 そんなとき、私の後ろから声がした。その瞬間、紫の手が私の首から離れた。


「げほっげほっ……小夜……さん……?」


 咳き込みながら振り向くと、そこには小夜さんが立っていた。


「小夜……どうしてここに?」


「歴史に綻びを感じたのでここに来ました。最初は貴方の家に行ってみたのですが留守でした。ですから、貴方が行きそうな場所を探した挙句、ようやくここにたどり着いたというわけです」

「歴史に綻び? そんなモノあるわけないじゃない」


 紫は笑い飛ばす。


「そうですか? 貴方が魔理沙さんの記憶を置き換えたのもそうといいきれますか?」


 小夜がそういった瞬間、紫の顔が曇った。


「……小夜。こればかりはどうしても戻すわけにはいかないの。何も言わずに帰ってちょうだい」


 それは紫の本音だったのだろう。いつもより声のトーンが低い。


「そういうわけにもいきません。歴史とは人が様々な事象を受け入れてこその歴史なのです。それをねじ曲げるだなんて神にも許されざる行為です。これは過去にも貴方に言った筈ですが?」

「それは……そうだけど……」


 紫がおされている。小夜さんって一体……


「では、返してもらえますね」

「……分かったわ……でも……」


 紫は私の方を向いた。なんなんだろうか?


「なんとなくですが、理由はわかります。大丈夫。今の魔理沙さんならきっと受け止めることができるでしょう」

「……どうなってもしらないわよ。魔理沙、こっちに来て背を向けなさい」


 私は紫に言われたとおりにする。


「今から貴方は夢を見るわ。それは貴方の魅魔に関する記憶。それがどんなに辛くても途中で終わらせることはできない。それでもいい?」

「もちろんだ」


 とはいっても、過去に何があったのか分からない今、相当怖いモノがある。


 腹をくくる前にふと、紫の手が頭に触れた。


 急に抑えられない眠気が私を襲う。私は抗うことができるはずもなく、闇を受け入れた。

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