おっちょこちょいな庭師
「こんなみょんなところに何の用だ、人間。霊達が騒ぎ出したから予想はしていたけど、やっぱりお前か……」
白玉楼の前では魂魄妖夢が待ち構えていた。
「お前こそなんでこんな妙なところに突っ立ってるんだよ。お前、門番じゃなくて庭師だろ?」
「う……それはそうなんだけど……今、幽々子様は接客中だ。私がいてもしょうがないでしょ。今はお前みたいな邪魔が入らないように見張りをしていたんだ」
妖夢は刀を引き抜いた。箒がない分こちらの不利。真っ向から戦うのは正直避けたい。かと言って、あのスキマ妖怪が律儀に門から出てくるはずもない。この機を逃せば、また振り出しに戻ってしまう。今までの苦労が水の泡だ。
「まあ待て。話し合おうじゃないか半人半霊」
「話……? お前と話し合うことなんてない!」
酷い言われ様だぜ……
「まてまて、考えてみろ。幽々子って結構いい体してるだろ? お客様に襲われてんじゃないのか?」
「なっ!? そそそ、そんなことがあるわけっ!!」
妖夢は顔を真っ赤にする。
「だ、だいたいお客様は女性だ」
「そうか。でも、女同士という可能性もなきにしもあらずだぜ?」
自分で言っててなんだが、それは確実にない。というか、あって欲しくない。それが、幽々子と紫ならなおさらだ。
「そんなことっ! 幽々子様ぁああっ! ってそんなことあるわけないでしょっ!!?」
「ち、作戦失敗か……じゃあ、これを見ろ」
私は懐からお茶碗を取り出す。
「それがどうした……?」
「ほら、よく見てみろよ。どっかで見たことないか?」
私はいろんな角度からそのお茶碗を妖夢に見せる。
「――ああっ!! それは、幽々子様のお茶碗! 前になくしたと思っていたらお前が持っていっていたのか! この泥棒!」
妖夢は茶碗のことに気づいたらしく大きな声を上げる。
「泥棒じゃない、ちょっと黙って借りていっただけだ」
「それを泥棒っていうんだよ! 返せぇえええっ!」
妖夢は剣を構え直し、突っ込んできた。
「――っ!?」
だが、妖夢は剣を振りきることはなかった。刀は私の前でぴたりと止まる。
「どうしたんだ? 斬れないものはなかったんじゃなかったのか?」
「殆どないといったはずだ」
私はお茶碗を盾にした。まさかここまで効果があるとは思ってもいなかった。主人思いのいいやつだな。
「そうか、そんじゃ返してやるよっ!」
「ああっ!! 幽々子様のお茶碗!」
私は後方にお茶碗を思いっきり放り投げた。一応、割れないように魔法はかけてあるから大丈夫だろ。
妖夢は必死にそれを追いかけていく。
「健闘を祈るぜ」
私は見えなくなった妖夢にそう言い残して、屋敷に入った。
ちなみに、あのお茶碗は幽々子のものじゃない。幽々子のお茶碗に似て非なるものだ。マヨイガで見つけて拝借してきたもの。以前、白玉楼にきたときに幽々子の茶碗を見ていたからな。もしかしたら、と思って持ち出していて正解だったぜ。
「でも、なくしたのはお前の責任だぜ。私は白玉楼から持ち出してなんかいないんだからな」
あいつって結構おっちょこちょいなんだな……




