意外と演技派なんです
というわけで、冥界に到着。途中になんか三人組がいた気がしたけど気のせいだろう。
「おや、生きた人間が冥界になんのようかな? いつぞやみたいに、また霊たちが騒いでいるようだ」
そこで、私を出迎えてくれたのは八雲藍だった。本当は妖夢が出張ってくると思ってたんだけど、これは予想外だ。妖夢なら簡単に説き伏せることができたんだけどなぁ……
「お前がここにいるってことは、紫が白玉楼にいるっていう情報は本当らしいな。それと、それをいうならお前だって生きた妖怪だろ?」
「まあ、そうなんだけど。でも、生きているってどういうことなんだろうね」
「突然だな。そりゃ、息をしてて、心臓が動いてるってことだろ?」
妖怪の生については良く分からないけど、人間の生っていうのはこんな感じだろう。多分妖怪も同じなんじゃないか?
「どうだろうか? この世には生きながらも死んでいるようなモノは沢山いる。逆に、死にながらも生きているようなモノもね」
コイツの言いたいことはなんとなくわかる。そういや、幽々子って幽霊だったな。あいつは生きているようなものか。この世界の生の定義って難しいのな。
「そりゃ、悪霊かなんかだろ」
私は冗談半分に笑い飛ばす。
「そうね」
藍は笑った。だけど、それは私の冗談が面白かったからでも、苦笑でもないように感じる。一体なぜ?
「ところで、お前から鰹節の匂いがするのだけど、どうしてかな?」
藍の笑いが怖いものに変わった。ヤバイな……
「そりゃ、鰹節ご飯を食べてきたからだ。何かおかしいか?」
「ああ。その鰹節は橙の為に特製に作ったものだ。どうしてその鰹節の匂いがお前からするのかな?」
どこまで橙のことを可愛がってんだよこの狐は……
戦闘不可避か……
私は勘づかれないように戦闘態勢に入る。
「なるほど。こんなひょんな場所に何の用かと思ったけど、紫様に用があったということね。普通なら案内するところだけど、橙になにかしたようだし、主人としてこのまま行かすわけにはいかないな」
「お前、この前それして紫に叱られたんじゃなかったか?」
「それはそれ、これはこれ。式神のことを大切に思わない主人なんていない」
藍は戦闘態勢に入る。
「あ、そういえばだな。あの猫なら布団の上で寝てるぞ」
「なに……?」
面倒な戦闘を避けたい一言だったが、結構効き目があったようだ。
「私は看病をしてやっただけだぜ。あいつ、ずっとお前の名前を呼んでたぞ。可哀想に……一人でお前の帰りを待っているというのにお前はこんなところで私なんかと雑談か……」
私って地味に演技派かもな。自分の知らない意外な一面に驚いてしまう。でも、嘘はついていないぜ。
「……私は失礼する。疑って悪かったな」
そう言って藍は私の横を素通りしていった。二度と合わないようにしないとな……




