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東方永絆録  作者: Alice
一章:紅白少女
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絶望と光

「ていうか、何なのよあいつ。いくらなんでも強すぎでしょ……」


 レミリアは息を切らせている。全員が全員瀕死状態だ。


「ほんとにそうだよな。正直勝てる気がしないぜ」

「せめて師匠が来るまで持ちこたえれば……」

「神奈子さまぁ、諏訪子さまぁ……早く来てくださぁい……」

「幽々子様ももう時期……」


 そういえば、こいつらの親玉はこのあの少女のことを知っているんだったな。援護が来てくれれば、この状況はいくらでもひっくり返せる。それまで持ちこたえられればの話だが……


「もう終わりですか? それならば、これで終わらせましょう」


 少女は再び腕を振り上げた。また、あのレーザーがくるのか……


「皆下がってろ。ここは私がなんとかする」


 とっておきの八卦炉を取り出す。これでなんともならなかったらゲームオーバーた。


「ファイナルスパークだっ!!」


 魔砲『ファイナルスパーク』


 八卦炉から放たれた巨大なレーザーと巫女が放ったレーザーがぶつかり合う。今度は手応えありだ。


「いっけぇええ!」


 私も少女も一歩も譲らず、衝突したところを中心に大きな爆発が起きた。


「今だ、霊夢!」

「わかってるわ!」


 霊夢は少女に向かって勢いよく飛び出した。


 既に霊夢は夢想天生を発動しているようだった。霊夢に向かって飛んでくる光弾は霊夢をすり抜けていく。


 これで王手だ!


「へえ、あなたの夢想天生は全てのありとあらゆるものから宙に浮くものなのですね。ですが——」


 急に霊夢の動きはだんだんと遅くなり、ついには止まってしまった。


「おい、どうしたんだよ!? ——っ!?」


 ——ゾクッ……


 瞬間、体がすくんだ。


「恐怖そのものからは浮くことは不可な筈です」


 少女から感じたものは狂気そのもの。それは、フランを軽く凌駕していた。


 人は圧倒的な力を前に、ひれ伏すことしかできない。その少女はまるで神であるかのごとく、私達の前に立ちはだかった。少女はまるで、私達のことを蚊でも見るかのように見下ろしている。


 私達は全く動くことができなかった。正直、飛んでいられている自分を褒めてやりたいくらいだ。


「なんなんですか……あの人……」

「人間がここまでの魔力を持っているなんてありえないわ……」

「……」


 早苗やレミリア、ついにはフランまでもが震えだす。


「これが、全てを無に帰す私の力。貴方達はこれまでです」


 少女の周りを黒い光が包み始めた。それは、今までとは違いなんとも禍々しいもの。


 そこにあるのはただ一つ。絶望だった。


 恐怖で体が動かない。逃げなきゃいけないのはわかっている。だけど、竦んでで動けない。


 私達は無を受け入れるしかないのか……?


「これが私の——痛っ!?」


 全てを諦めたとき、少女は素っ頓狂な声をあげた。それと同時に黒い光が分散する。


「秘符『デコピン』。これで被弾。あなたの負けよ、小夜さよ

 

 気づくと、スキマ妖怪が少女の顔の前にできていた。


「紫か……?」


「はぁい、紫ちゃんです。私が来なかったら死んでたわよ、貴方達」


 気付くと私達の後ろに紫がいた。私達は何も言い返せなかった。


「それにしても、いくらなんでもやりすぎよ。あのままじゃ、ホントにこの子達を殺してたわよ?」

「はい……流石にやり過ぎました……」


 気付くと少女から狂気は感じられなくなっていた。今となっては紫に叱られ、逆にシュンとしている。


「ま、待てよ! 本当にデコピンなんかで……」


 普通ならそんなことで負けを認めるわけがない。しかも、こんな異変を起こした犯人だから尚更だ。


「被弾は被弾。負けは負けです。そんな事でうじうじしては仕方ありません」


 やけにさっぱりしてるんだな……


「さて、異変解決の後はあれね」


 紫は盃を傾けるジェスチャーをする。


「まだその風習は続いていたのですね。それで、どこでやるんですか?」

「もちろん、博麗神社よ」


 そんな会話をしているなか、霊夢はさっきいた位置から動かず、少女を見たまま固まっていた。


「おーい、霊夢。そんなとこで何やってんだ?」


 私は霊夢に近づく。


「さよ……小夜……」


 霊夢は意味深な顔で、小さく呟いた。


「ん? どうした?」




「小夜様っ!? それって、御先祖様の名前じゃない!?」




 いきなり大声を出す。耳が痛いぜ……


「ご先祖様だ? 言われてみれば、夢想天生のことを知っていたよな」


「いやいや、なんでそんなに呑気なのよ!? 御先祖様よ!? いくら封印されてたからってなんで見た目が私達と同い年くらいなのよっ!?」


「それは封印のせいではないでしょうか。おそらく、副作用か何かでしょう」


 小夜と呼ばれた少女が私たちの前まで飛んできた。


「きゃっ!? 小夜様っ!?」

「どうしたんですか? そんなに驚いて」

「い、いえ。なんでもないです」


 御先祖様だと分かるやいなや、戦闘前の威勢はどこかに消えていったらしい。それどころか、あずけられた子猫のようになっている。


「そんなことより早く神社に向かいましょう」


 小夜は笑顔で霊夢の手を握った。霊夢のこんな緊張した顔を見るのって初めてかもな。

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