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 私、エリザベスは今、7歳です。

 

 前世でいうなれば、小学2年生です。義務教育期間です。

 貴族の幼少期の教育は優秀な家庭教師に指導してもらうようです。

 

 小学校はないのかな?

 

 あ。この乙女ゲーム『マジックプリンセス』の舞台は、王立の『魔法学校』なんで、あの学校は絶対ありますね。(ゲーム版のエリザベスもここの生徒ですし)

 でもあそこは――――魔術の才能が認められた中高生くらいの年齢の少年少女が集まってエリートになるために学ぶ、専門学校や大学みたいな雰囲気でした。


 というわけで、昨日は頭を打ったり(記憶取り戻したときに打ちました)、捻挫したり。いろいろあったのでお休みでしたが、今日は家庭教師の授業があります。

 


 ど、どうしよう。

 この前の授業のことなんて、まったく記憶にないわけですが、いや、でも7歳向けの内容だし。

 

 なんとかなる……よね?








 ――――――――――――――――――――――



 

 午前中は、マナーの授業でした。

 

 

 

 

 

 結果報告は――

 

 

 惨敗しました。貴族のマナーって難しいね。

 うん、前世の記憶で上書きされたようで、まったくこの世界のマナーの記憶がないんですもの。

 でも、暗記得意ですし、すぐに巻き返す自信はあります。

 


 

 

 

 

 授業中にちょっと嫌なことがありました。



 何度目かのミスのときです。


 

 女性の神経質そうな先生は、私にぎりぎり聞こえる程度の音量で、囁かれました。

 

 

 

 

 

 

 

 「何度言ったら分かるのよ。この物覚えの悪い白豚が」と。

 

 


 

 

 軽蔑しきった冷たい目が私を見ていました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私の外見が現在酷いのも、マナーが散々だったのも、

 

 

 全部、事実です。

 

 

 

 

 事実ですから、傷つくのはおかしいのかもしれません。

 

 

 確かに私の姿は豚そのものですよね。鏡を見てもそう思います。


 

 だけど、あまりに家族が周りのメイドさんが優しかったからでしょうか。誰かからこの姿を蔑まれる、という可能性を失念していたように思います。

 

 でも、皆が優しいのは皆にとってエリザベスが身内だからです。

 

 

 つまり、あれが一般の人の感覚で――。

 

 

 

 ああ、だめだ。

 

 

 精神年齢35歳のくせに、不覚にも泣きそうです。

 

 

 

 さらにもうちょっと弱音を吐きます。

 

 

 私は、この乙女ゲームが好きです。攻略キャラも皆結構好きなんです。お気に入りキャラだっています。ゲームでの彼らの性格が、彼らとつむいだ物語が好きです。

 

 

 もちろん、恋愛関係になって、優しくて甘い台詞を言っていただけるのは、ヒロインです。エリザベスではありません。

 

 そこはわきまえています。

 

 だけど、彼らに一目見ただけでさっきのマナーの先生みたいな、侮蔑をふくんだ目で見られたら…と想像すると、それはなんだか、たえきれないくらいとても悲しいことだと思います。

 

 

 

 

 

 

 午前の授業が終わってから、明らかに落ち込んでいる私に、ミリーは、お茶を淹れてくれます。

 

 

 

 

 ほっとする、やさしい、花の香りがするお茶でした。

 

 



 

 ぽろりぽろりと涙がこぼれるのを、俯いて誤魔化しました。




 

 気付いてないフリをしてくれるのがありがたいです。

 


 

 うん。元気出てきた。

 

 

 

 痩せよう。

 

 すぐに、マナーも完璧に覚えて、見返してやるんだ。

 

 


 

 

 

 心の中で燃える誓いをたてる私なのでした。

 

 

 

 

 

 



 

 

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