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頭を打って、前世の記憶を取り戻しました。
ここは乙女ゲームの世界でした。
鏡を見ると、とても醜い子豚がいました。
ダイエットを決意しました。
運動をしようとしました。
結果、怪我しました。←今ここ NEW!
痛い。
「…お嬢様、大丈夫ですか」
周囲のメイドさんが皆、心配そうな顔で見てくる。ああ。心配かけてすみません…。前世では享年35歳だったので、こんなにお世話されるとかなり恥ずかしいです。
「ありがとう。平気よ」
「氷です。エリザ様。ひやっとしますよー」
そう言って、私専属のメイドのミリーが氷を持ってきて、足に当ててくれる。
あ、そこそこ。
左足のくるぶしあたりが無茶苦茶痛い。
あー。えーとね。
状況説明すると、
早くこの肉体につく贅肉をどうにかしたくて、庭で小走りでもしようかなーと思ったわけですよ。
100メートルくらいかな。ほーんのちょっと走ったところで、ぐきりと、足首が曲がってはいけない方向へちょっと曲がっていました。
oh…
で。
執事の熊と虎の獣人、二人がかりでそっと抱えられ、ベットに寝かされました。
………………、思い出したけどエリザベスってば、
普段の移動はすべて、あの熊人さんと虎人さんが担ぐ籠に乗って、移動してたんだった。
歩けよ。
うん、そりゃ太るわけですよねー。
そして、ある程度以上の肥満の人は、痩せたいからって急に運動しちゃいけないんだNE★
じんじん痛む足首を擦りながら、なんだか切ない気持ちになってきた。
あー。うん。ベッドで横になってるのも暇だし、情報を整理します。
私、エリザベスは、まだ7歳だそうです。
鏡を見ても顔がむちむちすぎて年齢不詳だったよ。栄養状態がいいからなのか、7歳にしては背も高いしね。結局、メイドさんにとぼけたフリして聞きました。
頭打つ前の今の「エリザベス」としての記憶なんだけど、なくなったというわけではないけれど、前世の「私」の記憶が膨大かつ鮮明に存在しすぎていて、かなりぼんやりしてしまったって感じ。
まぁ、7歳の頭に、一人の人生のはじめからおわりまでの記憶を流し込むとそうなるのかな。
攻略対象の皇太子さまには貴族の集まりでは何回か会ってたはずなんだけど、あいまいにしか思い出せないなー。
ゲームでの容姿は知ってるから、金髪碧眼で綺麗な顔なんだろうなーとは思うけど。
とりあえず、私は皇太子さまの婚約者にならないよう、頑張ろうと思います。
ゲームでは、どのキャラのルートになろうとも、高慢で不遜なエリザベスは主人公が平民のくせに素敵な男性と恋に落ちるのが許せないらしく、主人公を拉致、隣国へ奴隷として連れて行こうとする。
で、お決まりの展開で主人公はヒーローに助けられて、エリザベスは罪人を示す刺青か焼きごてだったかを身に刻まれて国外追放。
皇太子ルートでは、さっくり殺される。
罪人として国外追放か、死刑。
それがゲーム通りなら待ち受けている、私の運命。
多分、『主人公を拉致』って行動がその運命のトリガーになってるんだろうし、私は絶対にそんなことしない。
だけど、そのフラグ回避だけではかなり不安が残る。
乙女ゲーム転生のテンプレでは、なぜか、どれだけ回避してもゲームシナリオと同じことが起こる。ゲームシナリオの強制力ってやつが働くものらしいよ。
なので、できるかぎり、私はゲームの世界とこの世界を違うものにしていくつもりだ。
この世界のエリザベスは、高慢じゃない。
この世界のエリザベスは、噛ませっぽい子豚ちゃんじゃない。
この世界のエリザベスは、攻略対象以外の恋人がいる。
うん。
恋人がいれば、
攻略者と恋に落ちる主人公に嫉妬なんかしてない、って主張できるよね。
問題は、精神年齢35歳の私が、小学生低学年くらいの子と、付き合わなきゃいけないってこと、と
…………普通の子供の三倍は体重ありそうな7歳児でも、恋人にしてもいいよって男の子は存在するのかな…………。
はあぁぁぁ。ダイエットしたいよぅ。
私は痛む足首を抱えながら、ごろんごろんと転がるのでした…。
アクセスがいっぱいで
びっくりしました。
ゆっくり頑張る予定です。よろしくお願いします。