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ep 4

ep.4 start.



よく眠った。目を覚ますと、既に夕暮れ時だった。

怪我を早く治したいならまず晩御飯にしましょう、とヒカルさんに言われたので、食堂へ向かう。

積もる話は食後にまとめてすることにした。

まだ不足している情報も多いし、そう慌てる必要もない。



「夕食ですか?いま準備しますので席についてお待ちくださーい!」


イリーナちゃんの明るい声が食堂に入った私たちを出迎えてくれ、少し元気になった。

席について一息つけるかと思いきや、タイミング悪く食堂に次々と人が入ってきた。

これは配膳が遅れそうだな、と考えていると、キョロキョロと席を探す女性と目が合った。


「すまない、相席させてもらって良いだろうか。

アタシはレイラ、この街の専属センチネルの一人だ。

この辺りじゃ見ない顔だけど、旅の人かい?」


そう断って同じテーブルに陣取った女丈夫は、身長190cm以上で引き締まった体つきをしていた。

あ、いや、透視したとかじゃなくて、ビキニアーマー?みたいな装備をしているので丸見えなのです。

それからこのアマ、私を探していたらしい。他にも席は空いているだろうに。


「セイです。隣はヒカルさん。

二人で旅をしています。こちらこそよろしく」


挨拶を返すも、そんな私の舐めるような視線を感じたのか


「なぁに?そっちの綺麗な子だけじゃ物足りないの?

飢えた獣みたいにギラついた目をしちゃってさ」


え、うそ。そんな元気ないですよ。

べべへ別にそんな目線向けてないですし。

そもそもヒカルさんとはそんな仲じゃないですし。

って隣のヒカルさんは何故か赤面していた。なぜだ。


その後もレイラさんに二人揃って弄られていたが、そこに救いの女神が降臨した。


「もう、レイラ!あんまりお客様をいじめちゃダメですよ!

あんまり酷いと、晩御飯抜きです!

すいません、レイラがご迷惑をお掛けしたみたいで。

こちらが夕食です。ごゆっくりどうぞ」


去り際に視線でレイラさんを牽制すると、他の客への配膳へと向かった。

イリーナちゃんマジ天使。


やれやれ、と言わんばかりに肩をすくめるレイラさんは


「私はあの娘の姉よ。この宿はアタシの実家なの。

家業は|母さん≪アリサ≫と|妹≪イリーナ≫が仕切ってるから、ここではアタシも頭が上がらないのよ」


ほーほーホケキョ。なるほどね。あんなちっこいのに、そんなに頑張ってるのかー、健気だねぇ。

つまり労働基準法は無さそうね。刑法はあったけど。これも心のメモ帳にメモメモ。

そして|お姉さん≪レイラ≫はここに住んでるんですね。

しかしセンチネルとは何だろ?知らないんですけど。

センチネル、番人、守護者、・・・要は街の守り手か。相手は恐竜を含めたモンスターたちかな。ふむ。



その後は食事に専念し、会話と晩酌は専らヒカルさんに任せることにした。

晩御飯はとても美味だった。具体的にはほうれん草のソテーが私好みの濃い目の味付けでグッドだった。スープはコンソメ風味。

気付くと、ヒカルさんとレイラさんはとっくに食事を終えていた。

私はゆっくり咀嚼して消化を助けようとしていたので、夕食を終えるまでにかなりの時間をかけてしまった。

アルコールに顔を赤くしていたレイラさんの話にヒカルさんが相槌を打っていた。

その頃にはほとんどの客は部屋へ引き上げ、あるいは酒場へ繰り出し、その場には私達と数名の客と片付け中の従業員しかいなかった。

そこで私は先ほどから考えていたことを実行に移すことにした。



「レイラさん、この後時間はありますか?」

「どうしたんだい、藪から棒に。

ひょっとして夜のお誘いさね?」

「その通りです。

少々時間がかかるかもしれませんが、この後私達の部屋までご一緒しませんか?」


徐ろに切り出した私に対して、カラカラと笑っていたレイラさんの顔が凍りついた。少し離れたところから皿の割れる音も聞こえた。はて、誰だろうと首を向けると、驚愕に顔を染めたイリーナちゃんだった。

ヒカルさんは理解の色を・・・示していなかった。ジト目で見つめられていた。

助けを求めて周囲を見回すと、厨房からはお母さん(アリサ)が首から上を出して、こちらを興味津々といった様子で見つめていた。

僅かに残っていた客からは怨嗟の念が聞こえてくるようだった。

既に針の(むしろ)であった。どうしてこうなった!


「ち、ちょっと待ってくれよ!アタシは、べ、別にそんなつもり・・・!?

って、そ、それ以前に!ヒカルちゃんが同室なのにそんなことっ!」

「お姉ちゃんにも春がきたんですか!?絶対逃しちゃダメですよ!!セイさんお姉ちゃんをよろしくお願いしますね!」

「(どういうつもりですか、積もる話はどこへ行ったんですか。)」

「(じろー・・・)」


カオスだった。レイラさんはアルコール以上に顔を赤くしていた。

イリーナちゃんとはまたひと味違った可愛さだ。じゃなくて。



「(どないせいっちゅうねん・・・)はぁ・・・」

「ちょ、ちょっと!なんでため息ついてるのさ!やっぱりこんな女、い、嫌よね、ふ、ふえぇ~ん・・・」

「お、お姉ちゃん!?ちょっとセイさん!お姉ちゃんを泣かせないで下さい!」

「「(じとー・・・)」」


おい酔っぱらいどうしてくれる。泣き上戸か!

イリーナちゃんはキレてるし、ヒカルさんとアリサさんがジト目になっちゃったじゃねぇか。

ああ、私の株が急落してゆく・・・。



数十分ほどかかえて事態を収拾し、アルコールの抜けたレイラさんを再度話に(・・)誘った。

今度はちゃんと伝わったようで、レイラさんも一緒に部屋に来てくれることになった。

そして長話に備えて水差しをもらって部屋に引き上げた。

アルコールを持ち込もうとしたレイラさんには禁止令を出して回収した。

これ以上カオスにされてたまるかっ!


お酒は二十歳から。お酒を飲むなら呑まれるな。


ep.4 end.




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